第165話
ドリトスに支えられながら足を交互にゆっくり動かして『足踏み』をする。
足の裏でタタミの感触を確かめたりしていると、ハンドくんから『そろそろ座ってください』と注意される。
「さあ。さくら。少し休もうかね」
「はじめから無理をしたら、また熱を出して寝込んでしまうぞ」
ドリトスに止められて、近付いて来ていたセルヴァンには抱き抱えられて、ソファーで横抱きの『膝だっこ』をされてしまう。
さくらは「うー。まだやりたーいー」とワガママを言うが、セルヴァンに抱き締められてドリトスに頭を撫でられて大人しくなる。
2人はワガママを言うさくらにひと言も言っていない。
ただ黙ってそばにいるだけだ。
「・・・今日はもう『おしまい』?」
「そうだな」
「・・・また明日?」
「そうじゃな」
さくらは自分を納得させるためか、2人に確認していく。
「お昼を食べたらハンドくんたちと『夕飯作り』をするんじゃなかったかね?」
「疲れて眠ってしまったらそれも出来んぞ」
『それ以前の問題ですね』
『さくらには頑張ったご褒美として『10時のおやつ』を用意したのですが、「10時のお昼寝をするからいらない」のでしょうか?』
「ダメー!いるー!寝ないもん!」
『それでは何方で食べたいですか?』
ハンドくんたちが大きな箱を2つ見せる。
途端にさくらの目が輝く。
「アイス!」
『ソフトですよ』
「トッピングあり?」
『用意してありますよ』
「じゃあコッチ!」
さくらは『ワッフルコーン』を指差す。
ハンドくんとの会話中に座卓の上が片付けられていく。
そしてドリトスとセルヴァンの間に座椅子が用意されて、セルヴァンはさくらをそこに座らせる。
するとハンドくんがソフトクリームを持って現れる。
『バニラです。トッピングは何がいいですか?』
「カラースプレー!」
ハンドくんがソフトクリームに、色とりどりの小さなチョコレートを振りかける。
「わーい!ありがとうハンドくん!」
両手で受け取ったさくらはそのままパクリと口にする。
「おいしー!」
満面の笑みを浮かべるさくら。
鼻の頭が白くなっているのは、コーンについていたソフトクリームがついたのだろう。
ハンドくんに鼻頭を拭かれて、スプーンを渡される。
他の4人にも同じバニラソフトが出される。
『今日はバニラしか用意できませんでしたが、後日には様々な味のソフトをお出しします』
「なんでも?」
『はい。チョコやストロベリー、ゴマや抹茶など準備しています』
「コアラやゾウさんのソフトは?」
『ご希望とあらば』
「ハーイ。食べたいでーす!」
スプーンを握った手を上に伸ばす。
そんなさくらの頭を、ハンドくんは優しく撫でて約束をする。
『分かりました。後日お作りします』
動物園でよく食べていたアレンジのソフトが食べられると知り「ヤッター!」と大喜びのさくら。
ハンドくんと笑顔で『ゆびきり』もしている。
そんなさくらの頭を優しい表情で撫でるドリトス。
セルヴァンは「また『頑張る楽しみ』が増えたな」と笑う。
その様子を向かい側に座るヨルクとヒナリは黙って見ていた。




