第164話
『さあ。さくら。編み物は終了ですよ』
「むー・・・」
さくらはハンドくんに促されると不服そうに口を尖らせる。
ハンドくんたちに製作途中の編み物を取り上げられると、今度は頬を膨らませた。
『足のリハビリをしますよ』
「やー。やりたくなーい」
さくらは嫌がってプイッと横を向くが、ハンドくんたちは気にせずソファーへ運んでさくらの身体を支える。
『足を片方ずつ上げてみてください』
さくらは言われたとおり左右の足を交互に上げるが「重いよー。ハンドくんたち透明になって足首掴んでなーいー?」と泣き言を口にする。
『もう頑張れませんか?『頑張る子』には後でご褒美が待ってますよ』
「頑張るー!」
さくらが『ご褒美』につられると突然賑やかな音が聞こえてきた。
「あー!『フリーダム』!」
ソファーに座ったまま、その曲にあわせて手足を動かして踊り出すさくら。
『さくらの世界のダンス曲です。足も動かしますからリハビリに丁度いいようです』
ハンドくんの言うとおり、さくらは曲にあわせて足を動かしている。
歌いながら手も動かしているため、ハンドくんたちはソファーから落ちないように身体を支えている。
そして、さくらと一緒に踊っているハンドくんたちもいる。
音楽が数曲終わると、ハンドくんたちがさくらの腕や身体を支える。
さくらは表情を固くしたまま立ち上がる。
しかし立てていたのは5秒ほど。
すぐにフラついてしまったが、素早く立ち上がったドリトスに支えられて倒れることは免れた。
「うー・・・もうちょっと長く立ってられると思ったのにぃー」
ドリトスの首にに抱きついて悔しがるさくらは気付いていないようだ。
「おや。さくらは『立てない』のかね?」
「・・・あれぇ?」
ドリトスに促されて目を開けたさくらは下を見る。
前からドリトスに支えられているとはいえ、今のさくらは『自身の両足』で立っていたのだ。
「あー!立ててるー!」
「良かったのう」
『まだ歩くことは出来ません』
『ずっと寝てましたから』
『少しずつリハビリしていきましょう』
『でもムリはダメですからね』
「歩けるようになる?」
『元のように走ることも出来ますよ』
「じゃあやるー!」
たとえ歩けなくなっても『風魔法』で身体を浮かせて『歩いたり走っているように見せる』ことも可能だ。
ハンドくんたちが編み出した魔法『無重力』もある。
でも『自分の足で立てる』のは嬉しかった。




