第157話
「心配しなくても良いぞ」
「そうそう」
「さくらの持つ『無人島』は瘴気が薄い」
「彼処はお主らにも行ける」
「この部屋の空気が苦しいと感じたら『其方』で身体を慣らせばいいのよ」
「『別荘』もあるから寝泊まりできるわよ」
『『ごほうび』の図鑑もあります。さくらは喜ぶでしょう』
「アラ。じゃあ『恐竜島』の準備しなきゃ」
「まだだったの?」
「『島の移動』がね。『別荘島』のそばが良いでしょ?」
「そのためには海流を変えたり色々やることがあるからな」
「じゃあ。みんな揃っているから今からやりましょ」
「さくらのために」
「さくらの笑顔のために」
神々がワイワイと楽しそうに騒いで次々と姿を消す。
姿を消す前にさくらの頭を撫でていくのを忘れない。
その中には、先ほどハンドくんと言い合って負けていた男神もいる。
彼は最後にさくらの前に現れ、タオルケットに隠れたさくらの足を擦り、「少しでも早く治るように」と言いながら自身の魔力を注ぎ、頭を撫でていった。
どの神々の表情も優しく、さくらを愛しているのがよく分かった。
「神々が此処にいらっしゃられる時は、私たちもご一緒しても宜しいのでしょうか」
「もちろん。さくらの願いは『みんな一緒に』だ。誰が欠けてもさくらを悲しませるだけだ」
ヒナリの言葉に創造神は『当たり前』という表情でさくらの頬を撫でる。
仰向けで寝ているさくらは、創造神の手を掴んで微笑むと『はむはむ』と母指球を甘噛みする。
ヒナリたちは慌てるが、創造神を含めた神々は笑っている。
「分かった。分かった」
創造神は笑いながら空いている手でさくらの頭を撫でる。
「おやつの時にでも貰いなさい」
「あら。今日は何でした?」
「『ソフトクリーム』だったよ」
『『味』は?』
「ストロベリー」
「あらまぁ。この子が好きなのは別の味じゃなかったかしら?」
「のど飴の味が記憶に残ってたのかしら」
『複数の味が食べられるようにした方が良いですね。すぐに機械を揃えます』
「ああ。頼むよ」
さくらの『甘噛み』は水の女神が「そんなのクチにしても美味しくないしおなかを壊すわよ」と言って創造神の手を外させて終わらせた。
固まるヨルクたちに「寝ぼけて『食べている』のよ」「創造神様に『食べたいもののリクエスト』をしているの」と女神たちはクスクス笑う。
創造神は自身の長い指を握るさくらに「『その時』は一緒にやりたいな」と笑う。
「また何か『催促』ですか?」
「ああ。『粉ものパーティー』をしたいらしい」
「あら。それは私たちも一緒に楽しみたいですわね」
『それでは『ちゃっちゃ』と残ってる『厄介ごと』や『後始末』を片付けてきてください』
『さくらの『リクエスト』は3日以内に叶えますから』
「制限3日か?」
『日付が変わったから残り2日』
「おいおい」
『正確には『2日と10時間58分』』
ハンドくんは『明後日の昼に粉ものパーティーをする』つもりのようだ。
創造神とハンドくんのやりとりに女神たちは「あら。それじゃあ間に合うように急がなきゃ」と苦笑する。
どうやら『この世界の主導権』は神々ではなくハンドくんにあるようだ。




