第156話
「なあ。一つ聞いても良いか?」
「ちょっとヨルク!」とヒナリは慌ててヨルクを止めるが、「構わぬよ」と創造神に言われて「申し訳御座いません」とヨルクの代わりに頭を下げて謝る。
「寝る前に話してただろ?『さくらの身体は『この世界』の空気に慣らしていないと苦しむ』って」
ヨルクの言葉にヒナリはさくらが胸を押さえた姿を思い出して辛そうに頷く。
「ハンドくんがこの『最上階』の空気は浄化されていると言っていた。だったら『外』はどうなんだ?オレたちと会ったときに、さくらは『外』に出てるんだぜ?」
ヨルクの言葉にヒナリは驚きの声を上げる。
あの時、短時間だったが確かに『外』へ行った。
そして『飛空船事件』に巻き込んでしまったのだ。
「さくらには『自分の周りだけ浄化する方法』を教えてある。濃い瘴気でなければ、それほど心配する必要はない」
自身の膝を枕に眠るさくらを愛しそうに見つめながら頭を撫でる創造神。
その姿からは慈しみが溢れている。
さくらも安心したように笑顔で眠っている。
『『さくらの部屋』に慣れてしまうと、『瘴気を含んだ空気』に身体が馴染まなくなる』
『あの部屋は瘴気のない『さくらの世界』の空気を、更に清浄化していますから』
「やはり。そうじゃったか」
ハンドくんの言葉にドリトスが納得する。
ドリトスはリビングに戻ってきたときに『少し息苦しい』と感じたのだ。
ハンドくんは『『この世界の空気』に身体を慣らしていないと『また』苦しくなりますよ』と言ったが、『さくらが苦しむ』とはひとことも言っていない。
実際リビングに戻った時のさくらは何ともなかった。
「あれはワシに対しての言葉じゃないのかね?」
『あたり』
『あの時『空気の変化』に気付いたから』
ドリトスとハンドくんの会話に驚く3人。
ドリトスは『瘴気に強い』。
それは『濃い瘴気』に慣れているからだ。
そんな彼は『瘴気のない清浄な部屋』から『少しでも瘴気の含んだ空気の部屋』に戻って、普段と違う『瘴気の濃さ』に違和感をもったのだ。
ちなみにセルヴァンも瘴気に強いが、『さくらの部屋』にいた時間が短かったため異常を感じることはなかった。
「じゃあアレはオレたちが『苦しくなる』って話だったのか・・・」
ヨルクはあまりの驚きで言葉を失う。
『1日3時間。此方で過ごせば大丈夫です』
「『もしも』のときはどうなる?」
『息苦しくなります』
「『それだけ』か?」
『『それだけ』です』
「その状態で『外』に出たら?」
『瘴気にあてられます』
「『それだけ』か?」
『『それだけ』で終わります』
セルヴァンの質問に淡々と答えるハンドくんの言葉には、『瘴気にあてられて『生命が』終わります』という意味が含まれているようだ。
『息苦しくなります』にも別の意味が含まれているのだろう。




