第154話
さくらが苦しみ続けた日々を思い出し、喪われかけた『愛しい存在』を思いやった。
・・・『呪い』がまだ1〜2回なら、本人たちがバツを受けるだけで済んだだろう。
否。宰相が止め忘れて『実行されたこと』を知った時に『中止』していれば、本人たちだけで済んだ話だ。
話を聞いて『もう止められない』と諦めなければ・・・
しかし、さくらはその後も何十回も『呪い』を受けた。
その大半は『女神の加護』で弾かれたが、それでもさくらを苦しめ続けた。
それは『本人だけ』で罪を贖うにはあまりにも大きすぎた。
この世界の理『信賞必罰』は魂に刻みつけられる。
そのため大抵の『罰』は即時発動される。
それは『罰』が消えるまで罪を贖い続けることになる。
宰相たちが犯した罪は一族全員が贖い続けることで『軽減』される。
今回の罪は、当事者だけが休むことなく転生を繰り返すことで、魂が疲弊して消滅しても贖いきれない。
以前、さくらはジタンに『他の方々に天罰を与えるつもりも肩代わりさせる気もない』と言った。
それに創造神は同意せずに話をすり替えた。
『天罰を肩代わりさせない』のは事実だ。
しかし『罪の重さでは、家族や親族にも天罰を与える』ことはある。
この世界では『呪い』とはそれほど『重い罪』なのだ。
それは『呪いを受けた相手』は死後も『呪いが続く』からだ。
さくらは自分で作った『さくらの魔石』で非常識なほどレベルアップをしてHPが多くなっていたため死なずに済んだが、一般人は『呪い』を受けたら瀕死か最悪死んでいる。
そして従来なら死後は次に転生するまで眠って魂を癒やす。
しかし呪いを受けて亡くなった魂は『かけられた呪い』で死後も苦しみ、転生したときにようやく神殿で解呪される。
解呪後は神殿に身を寄せるが、それは癒されずに転生した魂は弱く身体も病弱だからだ。
そのため『天罰を受けて保護された者』と違い、家族とは縁が切れない。
望めば家族も神殿で暮らすことができる。
下層大陸の領主や高級貴族たちが屋敷内に神殿や礼拝堂を置くのは『もしも』のためだ。
『呪いを受けた子供』が生まれても、『屋敷の神殿に身を寄せる』ことでその子と何ら変わらない生活を送ることができる。
残念ながら『死んだら終わり』ではないのだ。
神々は解呪されて顔色の戻りつつあるさくらの寝顔を見て誰もが癒やされていた。
『さくらの笑顔を守るため』
『さくらと一緒にいるため』
ただそれだけのために神々は頑張ってきたのだった。




