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第153話




『解呪』されてからは、アグラマニュイ国の関係者たちへの天罰の嵐で神々は大忙しだった。


生命を奪う(魂を消滅させる)事をさくらは嫌った。

そのため『呪い』にかかわった者の一族、老若男女全員から『記憶を削除』して、最下層の大陸へ『生涯犯罪奴隷』として落としたのだ。

唯一残ったのは『自身が『高貴な存在』に呪いをかけた』記憶だけだ。

それは『直接かかわっていない者』にも等しく同じ記憶が植え付けられた。

その記憶だけは『天罰を受け続ける間』、何度転生しても持ち続ける。

そして必ず『生涯犯罪奴隷』としてバツを受け続ける事になった。

賞罰欄に『天罰』がつかないため『神殿の保護』はない。


それを知った一族は嘆き悲しんだが、『一度だけでなく何十回も繰り返し呪いを掛け続けた』事を知り、『知る努力を(おこた)ったのも罪』とバツを受け入れた。

宰相は幼い孫たちもバツを受け入れた事を知り、泣いて幼子たちの赦しを乞うたが、「誰でもない。お爺ちゃんが『やってきたことの成果』だよ」と言われて自らの愚かさを悔やみ泣き崩れた。


・・・バツを受けた最年少は生後三ヶ月の赤ん坊だった。


さすがに神々も年端もいかない子供たちは、記憶を消して下層大陸で『孤児』として生かすつもりだった。

しかしその子供たちは物心ついた頃から上流貴族としての『教育』を受けてきたため、誰一人『減罰』を望まなかった。

乳幼児の親たちも我が子がバツを受けることを望んだ。


誰もが分かっていたのだ。

『バツを与える神々も心を痛めている』ことを。

そして神々は『誰の生命も奪わず』『魂の消滅』もしない。

それは『当事者』である宰相であっても変わらない。

親たちは『どのような形であれ子供が生きている』ことが、記憶を消されて存在を覚えていなくても『心の支え』になることを知っている。

・・・『子を喪った絶望』は、いくら記憶を消しても心に刻まれる。

『バツ』なのだから、それも『仕方がない』。

それなのに、神々は『そうしない』という。

親たちは『神々の深い慈悲』に深く感謝した。



宰相と行動を共にし、宰相と同じく一族で罪を負った者たちの中には互いを口汚く罵ったり罪を逃れようと言い訳をしていたが、王族が一切の罪を問われなかったことを知り、自らの罪を認めてバツを受け入れた。



宰相たちにも、神々は『誰の生命も奪わず』『魂の消滅もさせない』と伝えた。

それが『呪い』を受けたさくら自身の『たっての希望(のぞみ)』と知り、宰相たちは改めて自身の愚かな行為を恥じ、さくらの『優しいココロ』に感謝した。



・・・結局すべての者が納得して罰を受けた。



宰相は、『天罰騒動』で『エルハイゼン国にいるのは『聖なる乙女』ではない』と気付いたらしい。

しかし国内の処理をしていたため、『中止』を伝え忘れた。

そして、エルハイゼン国内に到着したら指示を待てと伝えていた『密偵たち』が、一向に指示が下りないため『隊長の一存』で『行動に移した』。

彼が気付いたのは、すでに『隊長が処刑』された事による『事後承諾』の時だった。


「エルハイゼン国に残った密偵たちはどうなりましたか?」


「彼らは今、王城内の一兵士として働いている。そして『親衛隊』となり警備に心身を捧げている」


神の言葉に宰相は(ひざまず)き、「彼らをお許し下さりありがとう御座います」と涙を流して礼を口にした。



神々は約束を(たが)えることが出来ない。

唯一の望みだった「子供たちと同じ大陸で」という希望を叶えることしか出来なかった。

せめて『比較的待遇の良い』大陸を選んだ。


・・・それでも(ツラ)くて仕方がなかった。




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