第146話
食事のためエルハイゼンのリビングへ戻ろうと話したが、それをさくらが一番イヤがった。
この部屋にいれば『早く回復できる』から離れたくないらしい。
確かに足以外はだいぶ回復している。
足も指を『ぴょこぴょこ』と動かせるまでになった。
まだ足を上げたりヒザを曲げたりとか、もちろん立ったり歩いたりも出来ないが・・・
此処で過ごした数時間でも目に見えて『回復』しているのだ。
さくらの気持ちが分かるから、誰も何も言い出せない。
「ここでゴハン食べるのー」
座卓に突っ伏してワガママを言うさくらに、膝だっこをしているドリトスは苦笑する。
まだちゃんと足が動かせないさくらだ。
サッサと抱き上げて連れて行くのは簡単だ。
でもさくらには『納得』してもらってから連れて行きたいのだ。
『さくら。『食後のデザート』は『おあずけ』ですか?』
ハンドくんがケーキの乗った皿を見せる。
「チーズスフレ!」と目を輝かせるさくらに『リビングでゴハンを食べる『良い子』にしかあげません』とハンドくんが言い切る。
それにつられて「ハーイ!『良い子』だからリビングでゴハン食べまーす」と右手をあげるさくら。
『『食後』のデザートですからね』と念押しされたのは、リビングに移動してすぐに「食べる〜」と言いださないように『牽制』したのだろう。
ドリトスがさくらを抱き上げて『さくらの部屋』からリビングへ移動する。
ガラリと空気が変わって『さくらの部屋』が『異世界と繋がっている』ことを改めて実感した。
さくらは別の『何か』を感じたのかキョロキョロと周りを気にしている。
「どうした?」
その様子を心配したセルヴァンに聞かれたが、さくらは不思議そうに小首を傾げてから左右に首を振った。




