第141話
さくらが『その映像』に気付いたのは偶然だった。
クイズ番組が終わってもつけっぱなしにしていたテレビから、夜のニュース番組の予告が流れたのだ。
『過去最大規模の爆発事故』
『未曾有の大災害』
そんな言葉と共に映された数秒間の映像。
何も無い『荒れ地』が広がっていたが、離れた場所に見慣れた建造物がいくつも映っていた。
それは『見覚えのある地域』だ。
この世界に来るまで住んでいた所だった。
・・・爆発事故?
・・・未曾有の大災害?
・・・・・・どういうこと?
膝だっこをしていたさくらがテレビをみた瞬間、驚きの表情をして身体を硬くする。
思わずさくらを抱き寄せたのと周囲が無音の闇に包まれたのが同時だった。
「さくら!」
「さくら!大丈夫か!」
ヨルクとヒナリがさくらの身を案じて声をあげるが、腕の中にいるさくらはカタカタと小刻みに身体を震わせている。
時々当たる手はドリトスだろう。
ドリトスもさくらの様子に気付いていたようで、静かにさくらの名を繰り返し呼びながら頭を撫でて気持ちを落ち着かせようとしている。
「大丈夫だ。さくらなら俺の腕の中にいる」
俺の言葉に「よかった」と安堵するヨルクとヒナリの声が聞こえた。
何も見えない闇の中だ。
手の届く位置ですら下手に動くとケガをしかねない。
「いつまでセルヴァンの腕の中にいるんだよ。『オレのさくら』を独り占めしやがって・・・」という普段なら聞こえないヨルクの小さな声も、この無音状態の中ではハッキリ聞こえた。
ヨルクには『さくらバカ』の一件も含めて、後で制裁確定だ。




