第140話
ハンドくんがたくさんの紙を座卓の上に乗せる。
様々な紙を見てドリトスたちは驚く。
色も材質も違う紙がたくさん置かれたのだ。
『これでもごく一部です』と言われて更に驚いた。
さくらとハンドくんが言っていたのは『ハガキやカードを作るオモチャ』だった。
「これで作れるの?」
『はい。これが以前さくらが作ったカードです』
ハンドくんに少し厚めの紙を渡された。
さくらは机の上にある紙の中からチラシを1枚取って器用に折りだした。
あっという間に箱を作ったさくらは、その中にハンドくんから個装されたチョコやキャンディ、ビスケットなど色んなお菓子をたくさん入れてもらってニコニコ顔だ。
でもふと何かを思い出したように暗い表情をしてセルヴァンを見上げる。
「セルぅ・・・さくらは『おバカ』なの?」
さくらの言葉に固まるヨルクとヒナリ。
ドリトスは2人を見て苦笑する。
セルヴァンはそんな3人の様子からヨルクたちが『さくらに何か誤解させる言葉を聞かれた』ことに気付く。
・・・多分『さくらバカ』だろう。
「どうした?誰かに『さくらはおバカだ』とでも言われたのか?」
さくらの身体を横抱きの『膝だっこ』状態にして、ヒナリたちが見えないように抱きしめながら尋ねる。
同時にヨルクとヒナリはハンドくんたちに口を塞がれた。
それに気付かないさくらは俯いて「『さくら。バカ』って・・・」と小さく震えた声で答える。
先程もお菓子を貰って無邪気に喜んでいた。
そんな自分は、みんなから『おバカな子』と見られていたと勘違いしたのだろうか。
泣きそうな表情のさくらの頭をドリトスが撫でる。
「さくら。あの時に教えたじゃろう?」
ドリトスは『さくら【 のことになると 】バカ【 になる 】』を短く言っているだけと説明したらしい。
ドリトスの言う通り、『さくら【 は 】バカ』ではなく『さくら【 の事になると 】バカ【 みたいに目の色を変える 】』という意味だ。
「さくら」
俺が名前を呼ぶと不安げな表情で見上げてくる。
「ドリトスの言った通りだ。『さくらをバカにした』のではなく『さくらを最優先』にする俺たちをヨルクが揶揄って付けただけだ」
『本当に『さくらをバカにした』のなら、2人はこの場から消えています』
『私たちが徹底的にハリセン攻撃をして、顔の面積と体積を2倍に増やして、骨格も変えてから部屋を叩き出していますよ』
『もちろん、二度と『さくらの前』に現れることはありません』
『近付いたら、さくらの好きな『全力でポイッ』です』
『ハリセンを使って『城外ホームラン』も可能ですよ』
ハンドくんの出したホワイトボードを読んで笑うさくら。
思わず納得してしまったドリトスとセルヴァン。
そして『『この場』から消えている』ではなく『『この世』から消えている』という『真の意味』に気付いて青くなるヨルクとヒナリだった。




