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第132話




『・・・・・・ヒナリ』


「なあに?」


『・・・・・・・・・セルヴァンは?』


帰ってくる?とさくらに聞かれて、セルヴァンの『言伝(ことづて)』を思い出した。


「さくら。セルヴァン様は『怒気が落ち着くまで自室にいる』って仰ってたわ」


『セルヴァン。大丈夫?』


「ええ。大丈夫よ。怒気も弱くなったわ」


『もう怒らない?』


「部屋にいるからもう怒らないわ」


『良かった〜』


さくらは安心したように笑顔を見せる。

そんなさくらの頭をドリトスが撫でる。


「セルヴァンなら心配せんでも大丈夫じゃ」


『うん・・・でも『アッチの部屋』にいるの分かるかなぁ?』


「ハンドくんたちがいるから大丈夫よ」


ヒナリの言葉にハンドくんたちが『OKサイン』で『任せろ』と意思表示をし、さくらは楽しそうに笑う。

しかし、すぐに表情が暗くなった。


『ヒナリー。ヨルクが『また』いないよー』


「まったく・・・何処行ったのよ!」


『ジタンの部屋(へや)にいる』


「待ってて。すぐに連れてくるから」


必要(ひつよう)ない』


ハンドくんがハリセンを取り出した。

叩きに行くのかもう行ったのか。

誰も怖くて聞けなかった・・・のだが、怖くない人物が1人。


『もう叩いた?』


2人(ふたり)とも。何度(なんど)でも』


『そんなに『何度でも』叩いてるの?』


『『いつも何度でも』。まるで『お(わら)い』のように』


ハンドくんの言葉にさくらは笑い出す。

ハンドくんが言った『何度でも』『いつも何度でも』が『曲のタイトル』だと気付いたからだ。


『元気になったら歌ってい〜い?』


『もちろん『元気になったら』ですよ』


『ウン!』


笑顔でハンドくんと会話するさくらの頭を撫でながらヒナリは思う。

ハンドくんはさくらを笑顔にするのが上手い、と。



『さくら。ヨルクに(はなし)()いたジタンが、『お(かね)用意(ようい)したいが、いくつ換金(かんきん)してもらえるか』と聞いています』


『無理のない範囲で』


『それではまず10()()りましょう。様子(ようす)()(くに)(つぶ)れなかったら、また追加(ついか)()りつけていきましょう』


『はーい』


ハンドくんが多少物騒なことを言っていたが、さくらは気付いていないのか。ハンドくんに丸投げしているのか。ハンドくんを全面的に信用しているのか・・・


ヒナリは普段とは違うハンドくんに少し怖くなった。

しかしさくらの性格を知っているドリトスには、『元気な頃のさくらが2人』いるようで、見ていて面白かった。




さくらは思念でメニュー画面を起動して、『さくらの魔石』を『貴重品』から座卓に10個取り出した。

それをハンドくんが、ジタンから預かって来たという麻袋にポンポンと無造作に入れていく。


貴重品で高価なはずの『さくらの魔石』を、さくらとハンドくんはまるで『河原の石』のように扱う。

2人の雑な扱い方に、魔石の価値を知るドリトスは苦笑するしかなかった。

たぶんジタンは理由を聞かされずに麻袋を渡したのだろう。

まさかその中に『さくらの魔石』を入れてくるとも知らずに。


『ハンドくん。お願いね〜』


さくらに見送られてハンドくんはポンッと姿を消した。

それと入れ違うようにアリスティアラが姿を現した。

ドリトスとヒナリの表情から『何かあった』ことに気付いたようだ。


「・・・また(なん)の『(ワル)さ』をしていたんですか?」


『ハンドくんと一緒に『魔石の押し売り』ごっこ♪』


さくらの言葉にアリスティアラは顔を引きつらせる。


『大丈夫だよ。ハンドくんが『まずは10個』って言ったから10個だけ渡したよ』


「『まずは』ですか?」


『うん。『国が潰れなかったらまた追加で売りつけましょう』って・・・どうかしたの?』


「いえ。何でもありません」と言うアリスティアラの表情は強ばっていた。





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