第130話
ねぇハンドくん。此処でもタブレットが使えるんだよね〜?
『使えますよ』
「さくら。ダメって言ってるでしょ。『部屋』に戻らないと・・・」
「さくら?何処へ『戻る』と言うの?」
女神の言葉にヒナリが慌ててさくらの前に出る。
ヒナリに気付いたさくらはふくれっ面から笑顔になる。
『あ!ヒナリ。おかえり〜』
「『おかえり』じゃなくて・・・」
『・・・じゃあ『行ってらっしゃい』?』
小首を傾げたさくらは、脱力しているヒナリを不思議そうに見ている。
そんなさくらの頭にドリトスがポンッと手を乗せた。
「話がよく分からないから説明してくれるかね?」
「私がお話しします」
女神の一人がさくらに代わって説明をしてくれた。
身体をほとんど動かせないさくらが『ヒマだから遊びたい』と神々に訴えているが、それには『さくらの世界の道具』が必要。
そして、それを使うには『マンション』以外ではダメらしい。
「それは此処では使えないってことですか?」
さくらの手を握りしめているヒナリの言葉に、創造神が首を横に振る。
「そうではない。『この世界の物ではない』からだ。さくらの世界では『当たり前』の物でも、この世界では『存在しない』。悪用・転用されても困る」
・・・そんな『技術』もノウハウもないクセに〜。
さくらの言葉に苦笑する創造神たち。
「ねぇ、さくら。『テレビ』や『ゲーム機』の存在を『乙女たち』に知られたら、此処に居座られる事になるのよ」
女神に「それでもいいの?」と言われたさくらは、涙を浮かべて『イヤイヤ』と首を横に振る。
さくらにとって、今いる乙女たちの存在は『忌むべき相手』でしかない。
「だったら『この部屋の中だけ』で使えばイイだろ。持ち出さなければ良いんだし」
「ハンドくんたちが結界を張っておるから、乙女たちはこの部屋へは入られぬ」
ヨルクやドリトスの言葉に、さくらの目が輝いて何度も頷く。
『もし誰かが持ち出そうとしても、ハンドくんが気付いて止めてくれるよ〜。ね?ハンドくん♪』
さくらの言葉に応えるように、ハンドくんたちはハリセンを出して左右に揺らしたり素振りをし出す。
「・・・・・・分かった。『部屋のひとつ』とこの部屋を繋ごう」
ため息を吐いた創造神が折れると同時に、ハンドくんから『繋ぐ部屋の準備は出来ています』と連絡がきた。
「いつの間に・・・」と呆れる神々を他所に『やった〜!さっすがハンドくん!』と喜んでいるさくら。
さくらに誉められたハンドくんたちは、一斉に『グッドサイン』を見せていた。




