第126話
「おっ。さくら〜。ただいま〜」
テラスからヨルクが入ってきた。
さくらの顔を見て両腕を広げて抱きつこうとしたが、ヒナリにジャマをされる。
弱っているさくらのために『清浄魔法を掛けてからじゃないと近付くな』という事らしい。
「ちゃんと清浄魔法かけて入ってきたって!」
ヨルクはヒナリに向かって叫ぶ。
しかし、『部屋の外』で清浄魔法を掛けても意味はない。
ハンドくんがハリセンを持って現れると、ヨルクはすぐに自分に魔法をかける。
「改めて・・・さ〜くら〜」
ヨルクがドリトスの膝に座るさくらを抱きしめて頭を撫でる。
『ヨルク。セルヴァンは?』
抱きしめているため、さくらの『声』が分からないヨルク。
「ヨルク。さくらが聞いておるぞ」
ドリトスに言われてさくらに「ゴメン!何だった?」と聞き直したが、頬を膨らませてプイッと顔を逸らされて慌てる。
「ヨルク。セルヴァン様の事で『報告』があるでしょ」
ヒナリがヨルクに助け舟を出す。
「ああ。セルヴァンからさくらに言伝。『怒気が落ち着いたら帰るから』って」
「さくらを抱きしめる前に、それを先に言いなさいよ」
ヒナリに頭を叩かれたヨルクはヒナリを恨めしそうに睨む。
『セルヴァン。帰ってくる?』
「ええ。心配しなくても大丈夫よ」
『でも・・・『新人さん』といたら、また『怒る』んじゃないの?』
『それじゃあ、セルヴァンがずっと帰って来られないよー』と、涙を浮かべて心配するさくらの言葉に3人は顔を見合わせる。
確かに『ありえる』ことだ。
さくらは詳しく知らないが、セルヴァンは『鬼族長』の異名を持っていた。
『族長』の地位を退いたからといって、すぐに『角が取れて丸くなる』はずもなく・・・
怒気だけで部下を気絶させた『鬼』は今でも健在だ。
特にヨルクは、激怒して手が付けられないセルヴァンと会ってきたばかりなのだ。
『さくらの言う通り。再度『局所落雷中』』
『『避雷針』いる?』
『コレがあるから大丈夫』
ハンドくんはスチャッとハリセンを手にした。
それを見て笑い出すさくら。
ハンドくんとさくらのやり取りを笑って見ているドリトス。
顔面蒼白のヨルクとヒナリはお互いに目線で会話中。
「ドリトス様。セルヴァン様の所へ行ってきます」
「ああ。『気をつけて』な」
「・・・はい」
『まぁま〜。大丈夫?』
さくらが心配してヒナリに声をかける。
そんなさくらに笑顔を向けて「大丈夫よ。ありがとう」と頭を撫でる。
『セルヴァンに『早く帰ってきてね』って伝えてね』
「ええ。真っ先に伝えるわ」
さくらの頬にキスをしてからヒナリは部屋を出て行った。




