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第124話




ヨルクとヒナリがドリトスと共に、清浄(クリーン)魔法を掛けてからさくらの寝室へ戻ると、さくらは女神に抱かれて飲み物を飲んでいた。


チュー。


プクプク〜。


ジュッジュー。


「最後まで上手に飲めたわね。スゴいわ。さくら」


女神はさくらを誉めて抱きしめる。


「おお。一人で飲めたのかね」


ドリトスもさくらを誉めながら頭を撫でる。

2人に誉められて、さくらは嬉しそうに笑う。

その様子をヒナリは黙って見つめていた。


自分は考えが至らずに怒ってしまったが、2人はさくらが『一人で出来た』ことを誉めている。

きっと『あの時』私が思い込みでさくらを叱らなければ、セルヴァン様もヨルクも『さくらを誉めた』のだろう。


・・・私はさくらを通じて、様々な事をもっと知らなくてはいけない。

今まで、どれだけヨルクに頼り、ヨルクが(かげ)ながらフォローをしてくれていたのかを、ヒナリは改めて思い知った。





『セルヴァンは?どこか行っちゃったの?』


キョロキョロと周りを見回してから、ドリトスに小首を傾げて尋ねる。


「あらあら。獣人は『お仕事』に呼ばれたみたいよ。『新人教育』ですって。『お説教』とか大変よねー」


女神がドリトスの代わりに答える。

魔物の(大事な)ことを言っていないが・・・間違ったことも言っていない。

『言い方』を変えるだけでこんなにも『印象』が変わるのか。

ヨルクとヒナリは改めて自身の『勉強不足』を思い知った。


「いやいや。ちゃんと『叱って』やらないと。後で困るのは『本人たち』じゃ」


「でも。お説教したら『怒気』が落ち着くまでは『さくらの前』に出てこられないわ。だって、この子ったら『怒気』に弱いんだもの」


女神がさくらの頭を撫でながら『セルヴァンは『怒気』が落ち着くまで戻れない』と遠回しに教えている。


『セルヴァン・・・お説教したから帰ってこないの?』


「そうよ。だってさくらったら『怒気』に弱いでしょ?前だって『意識』が『かくれんぼ』して帰って来なかったじゃない」


女神に笑われて頬を膨らませるさくら。

その頬を女神にツンツンと突かれて笑顔を見せたが、すぐに涙を浮かべて『セルぅ・・・』と口を動かす。



「さくらはそばにいて欲しいのか?」


『・・・だあれ?』


さくらがキョトンとする。

さくらの言葉にヨルクが驚きで身体を硬直させる。


「バカねえ。・・・さくら。さくらは『セルヴァン様』にそばにいて欲しいの?」


さくらは戸惑いの表情でコクンと頷く。


「じゃあヨルク。セルヴァン様に伝えて来て。『さくらが待ってます』って」


「なんでオレ!」


今だってオレに『だあれ?』って・・・

さくらはオレが分からないままなのか?


「あら?さくらは『そばにいて欲しいって誰のことをさしてるの?』って聞いただけよ」


女神に指摘されて目を見開いたヨルク。

ヒナリとドリトスは女神の言葉に頷いている。


ヨルクはどうやら『ジタンの存在』を忘れていたようだ。

そして『招かれざる客(聖なる乙女たち)』の存在も。


『・・・パァパぁ』


涙目のさくらに『おねだり』されて突き放せるような者はここにはいない。

ヨルクも筋金入りの『さくらバカ』なのだ。



「ん。分かった。ちょっと行ってくる」


さくらの頭を撫でて額にキスをしてからヨルクは寝室を出た。

そして『激怒真っ最中』のセルヴァンを『言葉ひとつ』でアッサリ鎮めたのだった。

近付くな!キケン!(WARNING!)』の表示が遠くからでも確認出来るくらい激怒していたセルヴァンだったが、ヨルクは安全な場所から『囁き』魔法で『セルヴァンを探してさくらが泣いている』と伝えたのだった。



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