第122話
「こちらは大丈夫です」
「さくらを頼みます」
女神とハンドくんたちがいるなら、さくらは大丈夫だろう。
部屋の中も揺れた様子はない。
さくらの無事を確認してセルヴァンと共に部屋の外へと飛び出す。
部屋が白く輝いてハンドくんが結界を張ったことが分かった。
寝室を出た時は黄金に輝いて『神の結界』が張られていた。
『二重の結界』に守られているなら、外で『何が起きていても大丈夫』だろう。
端にある『さくらの部屋』から、反対の端にある『屋上庭園』まで駆けつける。
しかし、この最上階では『異変』は見つからなかった。
屋上庭園に入ると、其処にいるはずのヨルクとヒナリの姿はなく窓が開いていた。
今のさくらには外気は身体に悪いため、換気でも窓は開けていない。
今はさくらの部屋へ入る時は清浄魔法を使っているくらいだ。
それにもかかわらず開け放たれた状態の窓。
屋上庭園に住み着いている妖精たちがワシらに気付いて慌てたように近寄り、服や腕を引っ張ったり窓の外を指差す。
すぐに開いていた窓に駆け寄り外を確認する。
「ヨルク!ヒナリ!」
下の方で浮かんでいるヨルクとヒナリの姿を見つけて大声で呼びかける。
2人はワシらに気付くと慌てて屋上庭園まで戻ってきた。
「さくら!さくらは!」
「寝室じゃ。ハンドくんたちと女神が守っておる」
そう言うと安心したように大きく息を吐いた。
「一体何が起きておる?」
「父上!」
下からセルヴァンの長男シルバラートの声が聞こえた。
セルヴァンが下を覗くと「大丈夫です!魔物は退治しました!」と笑顔で手を振っていた。
「・・・どういう事じゃ?」
ヨルクたちに目を向ける。
2人は青ざめた表情で俯いている。
「アイツら『さくらの浄化』のこと知らないんだ」
「魔物がさくらか乙女を襲いに来たって思ってるみたいなの」
「オレたち・・・騒ぎに気付いて止めようとしたんだ。でも『轟炎魔法』を使われて・・・間に合わなかった」
2人は悔しそうな表情を見せる。
下を確認すると、確かに地面には『黒焦げた痕』が残っているが魔物の姿は何処にもない。
強力な火魔法のため、痕跡も残さず燃え尽きたのだろう。
「スマン・・・しばらくの間、さくらのこと頼む」
セルヴァンがそう言い残して、窓から飛び下りた。
・・・スゴい『怒気』を放って。




