第121話
フワフワとした気分の状態で目を開ける。
左側を見ると寝る前と変わらずドリトスがいてくれた。
ずっと頭を撫でてくれたのかな?
今も頭を撫でてくれているから気持ちいい。
『ドリぃ』
「具合はどうじゃ?」
『・・・良くない』
なんだろう。
頭がクラクラする。
そう訴えたら、ドリトスが額と頬に手を伸ばしてきた。
「フム。熱は下がっておるが。多分『そのせい』じゃのう」
そっかー。熱のせいか。
「起きるかね?」
『・・・・・・セルぅ?』
「ああ。セルヴァンなら隣の部屋におるぞ」
『・・・そこにいるよ〜。壁のウラ』
鑑定魔法で、壁の向こうにセルヴァンがいるって表示されている。
「おやおや。ちょっと待ってなさい」
ドリトスが頭を撫でてから部屋の外へ向かった。
セルヴァンを呼びに行ってくれたんだろう。
・・・盗み聞きしようか覗こうか。
そう思ったら、ハンドくんたちが現れて両耳を塞がれた。
同時に全身を『風』が覆って、外の音が遮断されて何も聞こえなくなった。
外の気配も感じない。
これは『風の結界』?
部屋の中が見えないよ?
『風の女神』が私の身体を抱き起こして、守るようにぎゅっと抱きしめてくれた。
ねぇ。どうしたの?
何か起きたの?
・・・何が起きているの?
『頭がクラクラする』
そう訴えたさくら。
『記憶の整理』が原因だろうか。
・・・しかし『それ』をさくらは知らない。
ハンドくんの話だと、さくらには一切話していないらしい。
そのため、『熱のせい』と話したらさくらは納得したようだ。
『・・・・・・セルぅ?』
セルヴァンを『愛称』で呼ぶ。
どうやら『記憶の整理』は無事に終わっているようだ。
「ああ。セルヴァンなら隣の部屋におるぞ」
そう告げるとさくらは壁を見つめて『・・・そこにいるよ〜。壁のウラ』と訴えた。
さくらを心配しているのに寝室へ入る勇気がないのだろう。
セルヴァンはさくらに対してのみ酷く『臆病』になってしまうようだ。
「おやおや。ちょっと待っていなさい」
頭を撫でて部屋を出る。
さくらの言った通り、壁に凭れてセルヴァンが立っていた。
「ドリトス。・・・さくらは?」
「目を覚ましてお主の名を呼んでおるぞ」
そう教えるとセルヴァンが嬉しそうに凭れていた壁から身体を離した。
その瞬間、『部屋の外』から爆発音が轟いて部屋が小刻みに揺れる。
慌てて寝室を覗くが、さくらはハンドくんたちと『女神』に守られてキョトンとしていた。




