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第118話




「なあ。さくらの好きな『歌』とかは?」


【 『趣味』として残っている 】

【 さくらの場合、『(たましい)』に染み付いている 】



ヒナリはそれを聞いて安心した。

さくらは歌が好きで、『童謡』や『唱歌』などという、さくらの世界の歌を聞かせてくれる約束をしていたから。

そういう『楽しい約束』まで、消えてなくなってしまうのが怖かった。


安心したのか涙を浮かべて喜ぶヒナリ。

その隣でヨルクがさくらとドリトスを見つめている。


「さくらがドリトス様にだけ『反応』したのはなんでだ?」


【 この世界で最初にさくらに『優しくしてくれた』相手だから 】

【 それを『記憶』ではなく『感情(ココロ)』で覚えている 】


「ああ。・・・そうじゃったな」



ドリトスは腕の中で眠るさくらを見ながら、『初めて会った日』を思い出す。


全員で集まって話し合いをしていた応接室の外で大きな物音がしたため、ドリトスが様子を見に出た。

ドアの近くにいたセルヴァンが出なかったのは、『揉め事』なら心強いが、それ以外の問題が起きていた場合の折衝(せっしょう)役には向かないからだ。


部屋に通じる廊下に立っている少女を一目見て、『女神に愛されし娘』だとすぐに分かった。

キョトンとした表情で小首を傾げて自分を見てきた少女(さくら)に声を掛けながら近寄ろうとして、『白い手袋(ハンドくんたち)』が空中に現れて足を止められた。

そのまま左側を指差されて目をやると、床に倒れた兵士と落ちている抜き身の剣。

そして、怯えて腰を抜かしている兵士がいた。



「ハンドくんたちが居たとはいえ、剣を向けられて怖くなかったはずはないよな」


「だから『記憶がない』今でも、ドリトス様の腕の中が一番安心出来るのね」


ヒナリの言う通り、さくらはドリトスの腕の中で安心した表情を浮かべて眠っていた。




「一つ確認したい。・・・さくらが『幼く感じる』時がある。それは『このことに関係している』のか?」


「高熱を出して寝込んでいた頃からじゃな」


ドリトスの言葉にセルヴァンが首肯する。

ヨルクとヒナリは『今のさくら』しか知らず、2人の言葉に驚いていた。


【 関係している 】

【 記憶を消されたさくらは『この世界に生まれ直している』ようなもの 】

【 つまり『赤ん坊』と同様 】

【 さくらの身体が動かないのも、声が出せないのも、『同じ理由』 】

【 筋力が失われて身体が動かせないのも、また事実 】


「それなら、これからは『成長』していくのじゃな」


ドリトスがイスを揺らしながら、眠るさくらの身体を軽く叩く。

さくらの身体からは火照(ほて)りを感じる。

まだ熱が上がる可能性もあるため、部屋に戻ることにした。





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