第115話
ハンドくんから『神々が退室した』事を聞いたセルヴァンが、さくらを迎えに寝室へ行く。
しかし、さくらを置いたまま部屋を出てきた。
「セルヴァン様?」
心配するヒナリの頭を撫でたセルヴァンが、「さくらが熱を出している」と教えてくれた。
疲れた表情だったこともあり、『今は寝かせておく』事にしたそうだ。
目を覚ましたら、ハンドくんが教えてくれることになった。
「今のうちに『日本語の勉強』を続けてろ」
「うへぇ・・・」
ヨルクが嫌そうな声を出して、セルヴァンのゲンコツをもらった。
さくらの世界では『色々な言語』があるらしい。
さくらの『国』でも、『日本語』以外のとんでもない量の言葉があるそうだ。
『日本語』だけでも、『ひらがな』『カタカナ』『漢字』『和製英語』があり、それに『外来語』が日常会話で入っているとのこと。
ヒナリとヨルクは、『ひらがな』と『カタカナ』に関しては何とかマスターした。
今はハンドくんが持ってきた本を開いている。
ヒナリとヨルクが開いているのは、ハンドくんがさくらから借りている『料理の本』らしい。
手順ごとに『写真』が載っていて、わかりやすい本だった。
特にヒナリは料理に興味を持ったようで、漢字を覚えるスピードが上がった。
しかし『専門用語』が含まれているため、『計量カップ』などの実物を見せてもらいながら説明を受けている。
ドリトスが読んでいるのは『マンガ』だ。
今読んでいるのは『創作』とのことだが、『実話』をマンガにしたのもあるらしい。
風景や乗り物など、あまりにもこの世界と違うそうで、色々と驚かされるようだ。
所々でハンドくんに質問をしては、説明を受けて読んでいる。
そして俺は『小説』を借りている。
これもマンガ同様、『創作』と『実話』があるそうだ。
文字が多く背景が分かりにくいが、ドリトスが読むマンガで似たイメージを見つけて、想像をしながら読んでいる。
しかし『乗り物』や『建物』などは、ハンドくんたちに説明されないと分からなかった。
「オイ!これみろよ!」
ヨルクの言葉で本から顔を上げる。
ヨルクが見せているのは、写真を載せた『写真集』というものらしい。
「この本に載ってるのって、全部『さくら』って言うらしいぞ」
どうやら、ヨルクは『さくら』って言葉に反応しているようだ。
『さくらの名前は、この桜からとったそうです』
「え?・・・さくらは『さくら』って名前じゃないの?」
『名前で『操られない』ために、『この世界用』としてつけた名前だと聞いています』
『『真名』は聞いていません』
『さくらは『さくら』なのですから』
「そうじゃな。さくらは会ったときから『さくら』じゃ。名前は『付属』でしかない」
「そうですね。俺たちは『さくら』という存在が気に入ったのであって、『名前』が気に入った訳ではないのですから」
セルヴァンの言葉に全員が頷いた。




