第114話
どれくらい経ったか。
身体を襲っていた痛みが弱まってきた。
「大丈夫か?」
声と共に汗で濡れた額に手が乗せられた。
コクンと頷くと、「よく頑張ったな」と頭を撫でられた。
「声はまだ出さないで下さいね」とアリスティアラには注意を受けた。
・・・治ってないの?
「そうではなくて。少しずつ練習しないと、ノドを痛めて二度と喋る事が出来なくなりますよ」
それは困る!
この後に『冒険旅行』が待ってるんだから。
「じゃあ大人しくするんだな。彼らは『クチパク』でも話が通じてるだろ」
ハンドくんという『通訳』もいますから。
創造神が清浄魔法をかけてくれた。
『ありがとー』とお礼を言った所までは覚えているけど、疲れからか急激に眠気が襲ってきてそのまま目を閉じた。
痛みからの『解放』で、精神的な疲れが限界だったんだろう。
清浄魔法をかけたらお礼を言っていたが、そのまま眠ってしまったようだ。
「創造神様・・・」
床に座ってさくらの手を握っている水の女神が、心配そうに見上げてくる。
「大丈夫よ。さくらは疲れて眠っただけですから」
アリスティアラが代わりに答えると、安心したように笑顔になった。
「あとは『彼ら』に任せよう」
「ですが・・・」
風の女神が辛そうにさくらを見る。
これから『さくらに起きる』ことを知っている彼女は、『部屋』に連れて帰りたいのだろう。
しかし、『さくらとともに生きる』ことを選んだ『彼ら』も、さくらに『何が起きているか』を知らなくてはならない。
創造神の言葉に女神たちは頷くが動こうとしない。
神という『中立』な立場でありながら、『聖なる乙女』たちよりさくらを優先してしまう。
以前のように、リビングで『一緒に過ごしたい』と願ってしまう。
・・・残念ながら、『今』はそれが出来ない。
『火の男神』たちがしでかしたことの『後始末』と『聖なる乙女たち』のこと。
他にもまだまだ『課題』が残っているからだ。
「そばにいたければ、すべて『片付けてから』にしなさい」
創造神に促されて、女神たちはさくらの手を離す。
「大丈夫よ。さくら。私たちはいつもそばで見守っているわ」
アリスティアラがさくらの頬にキスをする。
ふにゃりと笑顔になるさくらの額にもう一度キスを落としたアリスティアラを促して、結界を解いて寝室から離れた。




