第113話
さくらが深く息を吐いて目を覚ました。
直後に息を詰めてしまい咳を繰り返す。
セルヴァンが背中を擦るが止まる気配はない。
ハンドくんが、ピンク色の飲み物を入れたガラスの小さなコップを持って現れ、咳が止まった隙に飲ませて口を塞ぎ上を向かせて飲み込ませる。
4人は苦しそうに涙を浮かべて咳を繰り返すさくらを、ただ心配し見守る事しか出来なかった。
『さくらをベッドで寝かせてください』
「さくらは?さくらは大丈夫なの?」
「ヒナリ。今は『神』に任せよう」
『ただの病気』なら神が治してくれる。
心配するヒナリをヨルクが落ち着かせている間に、セルヴァンは寝室へ向かいさくらを横向きに寝かせる。
まだ咳は出ているが、先ほどまでと違うのは薬が効いてきたからだろうか。
清浄魔法をかけると、少し目を開けて『セルヴァン。ありがとー』と口を動かす。
「少し離れるが大丈夫か?」
頭を撫でると少し笑顔になって頷く。
繰り返す咳が落ち着くまで背中を擦ってから、セルヴァンは寝室を出た。
扉を閉めると、寝室が金色に輝いて『神の結界』が張られた。
コンコンと繰り返される咳に、アリスティアラが背中を擦る。
「『喘息』だな」
呼吸器系がけっこう弱ってるよね。
ちょっとしたことで、すぐに息が詰まるもん。
咳が落ち着いて、アリスティアラが仰向きにしてくれた。
私の胸の上に翳された創造神の手から、暖かい光が流れ込む。
左手を握ってくれているアリスティアラからも、優しい『流れ』が身体の中に入ってくる。
呼吸が少しずつ楽になって、咳も落ち着いてきた。
それと同時に『胸の痛み』も弱まってきた。
冷たい空気が身体の中を巡る。
創造神たちがいるのと反対側に目をやると、風の女神と水の女神が立っていた。
『気持ちいー』
そう口を動かすと、心配そうだった表情が笑顔に変わる。
『ア・・・ア・・・』
呼吸が苦しくなり身体がガクガクと震え出す。
口を大きく開けて、少しでも多く空気を吸い込もうとする。
アリスティアラが強く手を握ってくれる。
反対の手を水の女神が握りしめて、風の女神が手を添えてくれる。
創造神が『喘息』を治すだけでなく、弱りすぎた呼吸器系の細胞を『強化』してくれている。
それが分かっているから、ノドが痛いのも胸が苦しいのもガマン出来る。
今ガマンすれば、この後は呼吸がラクになるのだから。




