第112話
「ヒナリ。さくらの『おあそび』にイチイチ目くじらをたてるな」
「ですが・・・」
「さくらはただ『楽しんでおる』だけじゃ。礼儀作法なら『乙女たち』より出来ておる」
「ジタンが初めてさくらに会ったときに『礼儀正しい挨拶』を受けている。あの『堅苦しいジタン』がさくらを大切にしているくらいだ。どれだけ『完璧』だったか、ヒナリなら分かるだろう?」
ジタンとは『次期国王』と『次期族長』という関係から、『堅苦しい公式の場』で何度も会った事がある。
ジタンの『礼儀作法』は子供の頃から完璧で、周囲からの『評価』と『期待』は高かった。
そんなジタンが初めて会ったさくらに『好感を持った』のだ。
さくらがどれだけ『礼儀正しく好印象な挨拶』をしたのかよく分かった。
「なあ。ヒナリ。本当にさくらが『ダメな事』をしようとしたら、ハンドくんたちが全力で止めるだろ?」
さくらが無理に声を出そうとしたのに真っ先に気付いて口を塞ぎ、烈火の如く怒ったのはハンドくんたちだ。
逆に『さくらのため』なら、イヤがるさくらを押さえつけてクチを抉じ開けて薬を飲ませることもある。
「だからさ。ハンドくんたちが止めない限りは、『さくらの自由』にさせても構わないんだよ」
『でもヨルクには怒っていい』
『さくらの負担にならない程度か離れた場所で』
『必要なら結界を張る』
「何でオレは『怒っていい』んだよ」
「悪ふざけし過ぎるからだろ」
「『親』なら『雛の手本になれ』ってことじゃ」
『ハリセンで叩きやすい』
ハンドくんの『正直』な回答に、落ち込み気味だったヒナリも笑顔を見せた。
「『呼吸』を思い出してごらん。さくらはストローで息を吐いて、息を吸うようにジュースを吸い込んでおったんじゃよ」
ドリトスに言われて、ヒナリはさくらの様子を思い出す。
チューとジュースを吸い、プクプク~と息を吐く。
そしてまたチューとジュースを吸う。
確かに『呼吸』と同じだ。
これなら無理せずに飲むことが出来る。
だから誰もさくらを注意しなかったのだ。
「ヨルクも知ってたなら教えてくれれば・・・」
ヒナリが恨めしそうにヨルクを睨む。
ヨルクもさくらのマネをしていて気付いたのだ。
直後に怒られてハリセンも食らった。
「え?さくら『が』マネをしたんじゃなくて、さくら『の』マネをしたの?じゃあ、なんで『ハリセン攻撃』されたの?」
『『バカにした言い方』をしたから』
『さくらがマネをする』
事実を知って驚くヒナリ。
ちなみにセルヴァンは、隣で『さくらのマネ』をしているヨルクが『呼吸に合わせている』事に気付いた様子だったので、ヨルクからヒナリに『説明』をさせるつもりだった。




