第111話
「さくら。なにか飲むか?」
『のむー』
目を覚ましたさくらにノドが渇いていないか聞くと何か飲みたいとのことだった。
ハンドくんからジュースが半分入ったグラスを受け取ったセルヴァンが、ストローをさくらの口にあてる。
さくらはストローでひと口吸っては、プクプク〜と吹き出す。
そしてまたチューとひと口吸っては、プクプクプク〜と息を吹き出す。
それを数回繰り返していた。
チュー。
プクプク〜。
チュー。
プクプクプク〜。
「遊ぶな」
セルヴァンが苦笑しながら注意すると、さくらはストローを銜えたままクスクス楽しそうに笑う。
笑う度にストロからプクプク〜とジュースに泡が生まれる。
「さくら。お行儀が悪いわよ」
向かい側に座るヒナリからも注意されたけど・・・
チュー。
プクプク〜。
チュー。
プクプクプク〜。
「さくら!」
ヒナリに強めに叱られて、ふくれっ面になるさくら。
セルヴァンの横に座るドリトスが、さくらの頭を撫でて宥める。
落ち着いてきた所で口から離れてしまったストローをさくらの口に戻すと、再び笑顔でプクプク〜とストローで息を吹いてジュースに泡を作る。
「ヒナリ」
さくらの様子を見守っていたセルヴァンが、目線でヒナリに横を向かせる。
チュー。
プクプク〜。
「ヨルク!『さくらがマネするから止めて』って何回言ったら分かるのよ!」
「何度言われても分から〜ん」
ヨルクがヒナリを揶揄うように言うと、ハンドくんからハリセンを一発受けた。
「イッテー!」
一瞬の後に、全員がさくらをみる。
チュー。
プクプク〜。
チュー。
プクプクプク〜。
両耳をハンドくんたちに塞がれていて、さくらはヒナリに怒られないのをいいことに『遊び飲み』を楽しんでいた。
さくらの周りに薄い『膜』が見える。
『さくらを守るための簡易結界』が張られたのだ。
両耳を塞ぐ事で『簡易結界』が張れるらしい。
ただし、『簡易』のため長時間はもたない。
「さくら!ヨルクの『悪いマネ』したらダメでしょ!」
ハンドくんたちが耳から離れたとたんにヒナリに注意されて、プイッと横を向くさくら。
そのままセルヴァンの胸に顔を押し付ける。
『涙の浮かんだ目』を隠すように。
セルヴァンが持っていたグラスをテーブルに置いて、さくらの背を擦る。
ドリトスもさくらの頭を撫でて慰める。
さくらの背中を擦っていたセルヴァンの手が、トントンと軽く叩き出す。
少しすると、すぅっとさくらの寝息が聞こえてきた。




