第107話
連中はハンドくんたちの手で、神殿の地下牢に文字通りに『投げ込んだ』そうだ。
今回下った『天罰』は『見えない『ハリセン』の刑』。
それも『肉体』ではなく、『精神』に直接ハリセン攻撃を受けているとのこと。
ハンドくんたちが隠れて『頭部』にハリセン攻撃をしても、気付かれないかもしれない。
・・・さっきから何人かのハンドくんたちが交代で出入りしているのは、追求しない方がきっと良いのだろう。
『2つめ。乙女たちが最上階まで上がって来た。それを目撃された上、知った兵士たちが武器を手に追い回した』
『エルフが仕掛けた攻撃の『どさくさ』で攻撃魔法も使われた』
「またアイツらかよ!」
「止めてヨルク!」
先ほどよりはるかに強い怒りを露わにしようとしたヨルクを、ヒナリが慌てて止める。
さくらに再び『負担』をかけるところだった。
今も未然に防ぐことが出来たようで、さくらは変わらず眠っている。
その様子に『3人』は安堵した。
ヨルクは結界の中でハリセン攻撃を受けたようで、後頭部を押さえて蹲っていた。
確かに怒気を落ち着かせるのに『ハリセン攻撃』は有効なのかもしれない。
・・・特にヨルクには。
「ねぇ。兵士たちの『怒気』はさくらに負担はなかったの?」
「いや。・・・さくらは苦しんでいた」
ハンドくんに質問したが、セルヴァンが代わりに返事をした。
それに青褪めたヒナリが、膝だっこをしているさくらをキツく抱きしめる。
『いまはこの階全体に結界を張ってあるから負担はない』
「本当に?本当にさくらが苦しんだりしない?」
『しない』
ハンドくんの言葉に安心して深く息を吐き、腕のチカラを少し緩める。
『でも『この中』で怒気を放つと負担がかかる』
「ヨルクー!」
「分かった!分かったから!」
「ヒナリ。お主も『怒気』を放つんじゃない」
ドリトスに注意されて慌てるヒナリ。
自分では『怒気を放った自覚がない』からだ。
再び強くさくらを抱きしめていた事に気付いてチカラを緩めると、腕の中で眠っていたさくらの目が開いていた。
「ゴメンね。さくら。煩かったでしょ?」
ヒナリがさくらの頬を撫でると、さくらはヒナリの目を見てかすかに微笑んでふたたび目を閉じた。
「・・・え?さくら?」
ヒナリの発した驚きの声にヨルクたちが駆け寄る。
ヒナリに聞かなくても、微笑んださくらの表情を見て理解した。
「・・・おかえり。さくら」
ヒナリがさくらの頬にキスをする。
眠っていてもふにゃっと笑うさくらに、全員の目から涙が溢れ出した。




