第106話
さくらを囲んで静かな時間を過ごしていると、ハンドくんたちが寝室に現れて寝室側から扉を開けた。
「もう出ても大丈夫」という事だろう。
さくらの頬を撫でていた女神が「さくら。もう大丈夫よ」と囁くと、声に反応するようにさくらは微笑んだ。
「なぁ。オレたちがいない間に何があったんだよ」
昼過ぎに部屋へ戻ってきたヨルクが、真っ先に驚きの言葉を口にした。
ヒナリはセルヴァンから眠るさくらを奪うと、抱きしめて泣いている。
「それよりヒナリの様子はどうした?」
ヒナリの必死な様子にセルヴァンとドリトスは驚き、少し離れた場所にヨルクを引き摺ってから聞く。
『次期族長』の座を退けなかったのか?
しかし、弟が継がなければ『親族が引き継ぐ』ハズだ。
「・・・なんだよ。『部屋の外』のこと知らないのか?」
ヨルクの話だと、王城の内外が『何者かに攻撃された』ように荒れているらしい。
この王宮も、下の階では窓ガラスが割れたり、壁が崩れたりしているそうだ。
ヒナリはその様子をみてパニック状態になったそうだ。
確かに部屋へ戻ってきたヒナリは、さくらの無事を確認するまで半狂乱になっていた。
今はさくらの無事が確認出来たからか、大分落ち着きを取り戻している。
「ハンドくんたちは何か知らんかね?」
ドリトスがそばにいたハンドくんに尋ねる。
あの騒動で居なくなっていたということは、『何があったか』を知っているのではないのか?
『原因は2つ』
『1つめ。『エルフたち』がさくらを狙って襲ってきた』
「はあ?なんで『さくら』が狙われたんだよ」
『エルフは『飛空船事件』の罪で、一族の寿命が30年にまで縮められた』
『天罰を受けていない30歳以上のエルフたちが、次々に生命を落としている』
『エルフはすでに、5分の1の仲間を喪っている』
「そんなの『自業自得』じゃないか!」
「ヨルク。『怒気』を放つな」
ヨルクの怒りにセルヴァンが注意する。
ヨルクは慌てて深呼吸を繰り返し、呪文のようにさくらの名を繰り返して心を落ち着かせる。
「襲ってきた連中はどうなったんじゃ?」
『全員倒した』
ドリトスの問いに、ハンドくんたちが一斉にハリセンを手にした。
・・・それは凄まじい光景だっただろう。
『そして襲ってきた連中には、神が望み通り『天罰』を与えた』
『連中は天罰を受けてでも600歳まで生きたかったんだから『本望』だろう』
よくハンドくんたちが『さくらの敵』を生かしたもんだと思ったが・・・
なるほど。
『残りの生涯』を天罰と共に生きていくことになるのだから、『アッサリ斃す』よりは良いのだろう。




