第105話
「ヤッ・・・アッ!ヤァァァァー!」
突然、さくらが何かに怯えるように悲鳴を上げたあと、上体を逸らして『けいれん』を起こし出した。
「何があったんじゃ!」
周囲を見回すが、部屋の中にいたハンドくんたちがいない。
するとドンッと物凄い音が『部屋の外』から何度も聞こえてきた。
さくらを守るように抱きしめるセルヴァンと、2人を庇うように覆い被さるドリトス。
「早くさくらを連れて寝室へ!」
突然現れた女神に驚きを隠せない2人。
しかし再度女神に促されて、さくらを連れて寝室へ入った。
扉を閉じると、室外の音と振動が遮断されて『結界が張られた』ことに気付く。
ハンドくんたちが張る時は結界が白く光るが、今は何も変わったことが起きなかった。
これは『神々の結界』なのだろうか。
実は中からは分からないが、寝室の外では金色に光っていたのだ。
『部屋の中』から分からないようにしているのは、さくらに『外で何か起きている』と気付かせないための配慮だ。
そのため、ハンドくんたちの結界も、中にいると分からないのだった。
あれほど苦しそうにしていたさくらだったが、寝室に入ると呼吸はまだ荒れつつも怯える様子だけはなくなっていた。
ベッドに座ったセルヴァンの腕の中で、さくらは再び眠っている。
「これは一体何が起きているのですか?」
セルヴァンが心配そうにさくらの額に手をあてている女神に聞くが、女神は黙って首を横に振る。
なぜ『言えない』のだろうか。
「此処にいればさくらは守られますか?」
「ええ。それは大丈夫です」
女神の言葉に、セルヴァンとドリトスは安堵の息を吐き出し、張っていた緊張が少し緩む。
「ひとつお尋ねしても宜しいでしょうか?」
ドリトスの言葉に「答えられる事でしたら」と女神が頷く。
つまり『いま起きていること』は『答えられない』らしい。
ハンドくんがいないということは、『さくらに関係している』ということだ。
それだったら、後でハンドくんが教えてくれるだろう。
「何故、我らに神々の姿が見えるようになったのでしょうか」
ドリトスのこの質問は、今この場にいないヒナリたちも含めた4人が、一番『知りたかった』ことだ。
でも女神が笑顔で教えてくれた理由は、あまりにも驚くものだが納得出来る事だった。
「貴方方は『さくらと共に生きる』ことを選ばれましたから」
そのため『さくらと同じ』ように神々の姿が見えるようになったらしい。
・・・『世話係』のハンドくんたちも神々の姿が見えるようだから、『世話役』の自分たちもハンドくんたちと『同じ立場』なのかも知れない。




