第101話
ヒナリは、さくらが少しでも食べ物を口にしたことにずっと興奮状態だ。
仕方がないだろう。
さくらは帰ってきてから『何も食べていない』のだ。
今まで何度か『リンク』はあったが、ひと口も食べさせることが出来なかった。
それが、アイスを『ひと皿』食べたのだ。
「ヒナリ。少しは落ち着け」
「だって・・・」
「さくらが寝てるだろ」
ヨルクに苦笑しながら言われたヒナリは、慌てて口を押さえてさくらを見る。
さくらはセルヴァンの腕の中で、変わらず寝息をたてている。
そして、珍しくハンドくんが興奮するヒナリの口を塞ぎに来なかった。
ヒナリの『喜び』を止める気はないようだ。
「ヒナリ。気持ちは分かるが少し静かにな」
「・・・はい」
みんなも笑顔になっている。
そうだよね。
口には出さないけど、みんなだって嬉しかったんだよね。
「ねぇ、ハンドくん。このまま『リンク』が続いたら、さくらの『意識』は戻って来るの?」
『可能性はある』
『戻っても『寝ている時間』の方が長いだろう』
『神が説明されたとおり、自分では何も出来ない』
「それでもいいのよ。だって『さくらがいる』だけで私はシアワセなの」
ヒナリは眠るさくらを見て微笑む。
さくらが『帰ってきて』から、ずっと考えていることがある。
キッカケはずっと前。
でも『決断する勇気』まではなかった。
その勇気が、帰ってきたさくらを見ててついた。
「私ね。やっと『分かった』の。今まではヨルクにただ『守られていた』だけだって。自分で何でも『判断したつもり』になってたの。でもね。さくらに出会って『自分で初めて判断している』って実感出来たの。・・・そして、それには『責任』も付いてくるんだって初めて知った」
その上で・・・選んだ『道』がある。
私が『一番したいこと』。
『本当に大切にしたいこと』が見つかった。
それは『族長を継ぐこと』よりも、もっと『大事なこと』。
「私。『族長』を継がない。弟に譲るわ」




