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九十三話『俺とお前……どちらの遺伝子が残るかなァ?』

 白雨は戦慄する。

「お前が……! どうしてここに……!」

 エレベーターから姿を現したのは、グリムソウルと雨芽エルだった。

 グリムソウルは嫌がるエルの手を引いて歩きながら答える。

「琥珀ちゃんを守る為……。あれ? ハイドラの旦那。服装変わった? 色合い……俺と合わせてくれたんだァ……」

「偶然だ!」

「だろうね。でないと気持ち悪くてありゃしない」

 そこへ時雨も驚いた様子で尋ねる。

「何故……。お父さんはどうした!!?」

「君のお父さんも、何か知らない非禁禁忌教の人達も……俺が殺したよ?」

「嘘だ!!」

「嘘じゃねぇって。後で外見てきなよ。死屍累々としてるから。その中から父親を探すのはさぞ苦労するだろうねェ」

 グリムソウルはそこで琥珀の目前で立ち止まると、急に顔を俯かせる。そしてわなわなと体を震えさせた。

 その面妖な様子に、琥珀は後退りしながら尋ねる。

「なに……? どうしたと言うの?」

 体を震えさせるグリムソウルから微かに声が漏れだす。

 琥珀が集中してその声に耳を澄ますと……それは笑い声だった。

 溢れんばかりの笑い声を必死になって堪えている。そんな様子だった。

「何を……。笑っているの?」

 琥珀の問いに、グリムソウルはゆっくりと顔を上げ、答える。

「さっきのぜーんぶ……う、そ」

「……だったらハイドラ王も生きているの?」

「どうだろうねぇ。生きてるんじゃ無いかなァ?そして俺がこう言ったらどうする?実は俺、ハイドラ王と仲良しこよしでさァ。例えば……ハイドラ王の弟でしたー。とか」

 そこへ反応したのは、白雨だった。

「つまらない冗談を」

「じゃあ俺の目的、分かる?」

「知るか」

「じゃあ教えてあげる。俺の目的は契約の魔法の完成。その為にはどうしたら良いか。そう、遺伝魔法が近しい者同士で交配させれば良い。つまりは近親相姦」

「気持ち悪い発想だな」

 グリムソウルはそこで腕を広げ、楽しげに言う。

「ではここで重大発表があります。実は琥珀ちゃん……ハイドラ王の隠し子でーす!良かったねぇ、琥珀ちゃん。君の言ってた親との面会、果たされたね」

 それには白雨も琥珀も言葉を詰まらせる。

「何を馬鹿な!」

「馬鹿? 考えたら分かる事でしょ? お前が力を解放した時、琥珀ちゃんが生き残った理由は、君の弟が生き残った理由と同じ。ほら立派な裏付けだ。……こうして君達は俺の思惑通り、しっかりと近親相姦してくれた訳だ。途中、俺が琥珀ちゃんを犯したのは、別に俺が子孫を残しても良いんじゃ無いかなぁ、って思って。あと暇潰し。でも未来は若い者同士が作った方が良いでしょ?」

「虚言だ!! だったら何故、琥珀は契約魔法が使えない!!」

「それは俺が遺伝魔法を奪っておいたんだよ。……お前達は、俺の手の上で転がされていたって訳だ」

「では……お前が言う魂の契約の魔法とは……!」

「そう、琥珀ちゃんの物。俺が本来持っているのは、遺伝魔法を奪う遺伝魔法って訳さ。残念ながら俺は母方の血が強くてな。契約の魔法が引き継げなかった。この青でも赤でも無い髪色が証拠だ。だが劣性遺伝子としてはあるだろうから、子供には契約の魔法が引き継げるかもな」

 グリムソウルはそこで琥珀の腰に手を回して続ける。

「俺とお前……どちらの遺伝子が残るかなァ? どちらにせよ、母体は守らなければな」

 嫌がる琥珀をグリムソウルは無理矢理引き寄せる。

 そしてそこにもう一人、乱入者が現れた。

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