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八十一話『あなたは……どうして……。何者なの……』

「服買って貰っちゃったっ」

 船乗り場の列にて、ロゼは楽しげに言った。

 黒と白のゆったりとしたワンピースを着た自身の体を上から眺めては、満悦な表情を浮かべている。

 他人からは実に浮かれて見えるだろう。が、ロゼは他人からの視線などまったく気にしていなかった。

「ふんふーんっ。ん?」

 そうして鼻歌を交えて待つ事、数分。不意に肩を掴まれたロゼが不審に思いながらも振り向くと、そこには図体の大きい男性が笑みを浮かべていた。

 そしてその背後を良く見れば、男性と同じく白い服装で統一された複数の人物が立っている。

「なん……でしょうか?」

 怪訝そうな表情をして尋ねるロゼ。男性の胸の辺りを見ると、なにやらエンブレムのような物が付いている。

 何かしらの組織である事は容易に想像出来るが、主であるハイドラの行いを考えると、自分にとって有益な組織とは考えづらい。

 男性は、ロゼに手を差し出して答えた。

「ハイドラの配下の者ですね。我々も手荒な真似はしたくない。大人しく捕縛されて頂きたい」

 あぁ……やっぱりね。とロゼは溜め息を付く。

 しかしここで、おいそれと捕まる訳にはいかなかった。

「お断りさせて頂きます」

「そうですか。残念です。女性に手を上げるのは、好きじゃ無いのですが……」

 男性は懐から杖を取り出すと、それをロゼの首筋に宛がう。

 ロゼは男性を睨んで呟いた。

「……私だって……」

 そしてこの男性はアクア領の保安機関に間違いない。スコラミーレス程の力は無いだろうが、アクア領の保安機関と言うだけで一線置かれている彼らを相手に、この状況を切り抜ける事なんてどう考えても不可能だった。

 ……しかしここで大人しく捕まっては主に顔向け出来ない。ロゼは素早く杖を持ち出し男性に向けるが、それよりも先に、

「波動魔法『サドマ』」

 男性の魔法が詠唱された。

 ロゼの体が宙に浮き吹き飛ばされ、その勢いのまま地面に叩き付けられる。なんとか受け身を取って立ち上がり男性を睨むが、男性の背後に立っていた集団も、揃えてロゼに杖を向けていた。

 周囲で不安そうにしていた人々が逃げ惑い、散っていく。

 その中で男性は、とても保安機関の人物とは思えないほどの、悪い笑みを浮かべて言った。

「正当防衛だ。なぁお前ら、そうだろう? 奴をこの場で……処刑する」

 しかしロゼはそこで臆する事無く駆け出す。

 そうして立ち向かってくるロゼを男性は腹を抱えて笑うと、続けて魔法を詠唱した。

「波動魔法『サドマ』」

 またしても見えない衝撃によってロゼの体が宙に浮き、地面を転がっていく。

 そこで男性は合図を出すように片手を掲げた。

「お前ら! 俺の魔法に続け!」

 そしてそれに答えるかのように背後の人物が各々に魔法を詠唱し、無慈悲な攻撃がロゼに迫り来る。

「あなた様……申し訳ございません」

 諦めてしまったのか、膝を付いた姿勢のまま呆然とするロゼ。

 しかし突如、間に割って入る者が現れる。

 その人物はまるで盾になるようにロゼの前に立ち、連続して襲い来る波動魔法をその身で受けた。

 馬鹿な事を……。と、守って貰っている立場だが、そう思ってしまう。

 そうして目に見えぬ何か飛ぶ音。まるで風を切るような連続する高い音が鳴り止んだ時、

「大丈夫?」

 盾になった人物は、平然と尋ねた。

 ロゼも思わず目を丸くする。

「あなたは……どうして……。何者なの……」

 その人物は無傷だった。黒いドレスの裾を余波で揺らして、ただそこに立っている。

 今思えば、波動魔法で吹き飛びもしなかった。そもそも、それが異常だった。

 黒いドレスを着た少女は、笑顔で答える。

「エル。ボクの名前は雨芽エルだよ」

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