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七十八話『やっぱ慰め……なのかな』

 二度目の行為が終わって、琥珀は思う事があった。

「これは愛の行為では無く単なる慰め……分かっているのです

 浴室で再びシャワーを浴び、そこで今日初めて少し冷静になれた気がする。

 またしても体内に注がせてしまった体液を掻き出すように洗い流し、自分が何をしたいのか自問する。

「私は……ハイドラ様が好きなの……? 結ばれたいの……?

 言葉に出して見たが、答えは返ってこなかった。ハイドラはいずれ自分と結ばれる事を望んでいるだろう。

 しかしそれは現状の話で、ハイドラの思いがいつ変わってもおかしくない。そんな男だった。

 確かにハイドラの事を、好きは好きではあるし、その気持ちに嘘はない。が……。

 琥珀は指と指の間で糸を引く粘液を眺めながら、大きな溜め息を付いた。

 自問に対する自答は、とっくに返って来ていたはず。自問する前に理解した事。

「やっぱ慰め……なのかな

 シャワーを止める。

 それはこれからハッキリしていくだろう。と、やはりどこか楽観的な琥珀は、考えるのをやめて浴室を後にした。






「琥珀。俺は最低な人間だ。謝っておきながら、まったく同じ事をしてしまった」

 琥珀が浴室から帰ってくるなり早々、ハイドラは膝を付いて頭を下げた。

 どうやら快楽に勝てないのはハイドラも同じだったらしい。琥珀はそれを責める気も無かったし、遅れてでも反省している分、自分よりはマシだな。と思う。

 そもそも二度に渡って拒む事せず、むしろそうさせるように誘惑の言葉を投げ掛けたのは自分だったし、一人の男であるハイドラがそれを拒めるとは端から思ってもいなかった。

「いえ、ハイドラ様。そう促したは私ですので、頭を上げてください」

 琥珀がそう言ってハイドラへ歩み寄り、近くで屈んだ。その時だった。

 ハイドラの頭髪が、瞬く間に青く染まる。

 そしてハイドラ自身も、その事に気が付いたのか、恐る恐ると自分の髪へ触れて言った。

「まさか……。いや……やはりと言うべきか……」

「ハイドラ様……髪色が……再び……」

「……まぁ、予想はしていたが……あのグリムソウルと言う男は、近くに居る限り、俺の契約の魔法が効かないと言った。だから離れてから時間が経ったおかげで、お前を再び認識し、契約が継続されたのだろう……」

「なるほど……」

 ハイドラはそこで琥珀の両手を掴んで立ち上がると、真剣な眼差しを琥珀へ向けて言った。

「なぁ……琥珀。教えてくれ。お前とあの男の関係を。お前は一体……どんな契約を先に結んでいると言うのだ」

 琥珀は視線を逸らす。

 そして、

「ぽーいっ」

 と、唐突にハイドラの腰を掴んではそのままベッドの上に投げた。

「アフターがなってないのです。ハイドラ様。女性は、その後の余韻に浸りたいものなのですよ。……手を繋いで並んで上げるだけでも違うのですから」

 琥珀はハイドラの隣に座って手を繋ぐと、呆然と前を眺めがら続けた。

「……私はグリムソウルと魂の契約を結んだのです。……私の死後、この魂を差し出す代わりに、生前の間は力を授けて貰える。また、その対価として別の人間の魂を時折貢献しなければならない。だから私は、生きている内はハイドラ様のものですが、死後はグリムソウルのものになってしまうのです」

「お前……俺が言えた立場じゃないが、自分が惜しくないのか……? 自分が可愛く無いのか……?」

「……親に捨てられた私は、そのまま命を絶とうと思ってました。そこで私を救ってくれたのは、一応あの男なのです。一度、投げ出したこの命、拾われたのであればその人の為になれば良いと思って……」

 ハイドラが琥珀の手を強く握る。

「今でもそう思っているのか……?」

「……私はおこがましく、図々しい人間でした。……幸せになりたい……だなんて、今は思ってしまいます」

 琥珀の声が僅かに震える。しかし止まらない。

「でも駄目……なのです。契約は絶対……そうなのですよね?」

 琥珀の無の表情が、壊れていく。

 そうしてハイドラは琥珀の無表情の泣き顔を見てしまう前に琥珀を抱き締めると、耳元で囁いた。

「あぁ……契約は絶対だ。だが……だからこそ抜け道は必ずある。……俺が……なんとかしてやる」

 ハイドラは言い切った。

 琥珀は抱き返しながら返す。

「嘘であっても嬉しいですよ」

 ハイドラは黙って頷く。

 契約の魔法。はっきり言って他に類がない。ハイドラ自身も、家系の人間以外で見た事も聞いた事も無かった。

 仮に家系以外の人間で契約の魔法を扱う者がいれば、それこそ、その名を馳せて居てもおかしくない。ハイドラのように。

 そこで、ハイドラに一つの予測が立てられる。

「あいつは……もしかしたらハイドラに関係がある者かも知れん……」

 根拠は無いが、それを完全に否定する事も出来ない。

 あの男に付いて詳しく調べたいが、そうするにはハイドラ領の実家に帰るしか無かった。

「ご家族なら知っているかもしれませんね……」

 琥珀の問いにハイドラは淡々と答える。

「だが、ちょっと訳ありでな……。今は帰る事が出来ないんだ」

 そしてそこで琥珀には見えない位置で不敵な笑みを浮かべると、低い声で続けた。

「しかしそれも時期に……問題で無くなる」

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