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四話『俺は主だ! 主だぞ! 偉いんだ!!』

「山……しんどい」

「早く行かないと日が暮れますよ」

「もう……無理……!」

 少年が辛うじて道を覚えてて迷う事は無かったものの、その少年曰くまだ中腹だと言う。

 取引相手がどのような理由で山に訪れたのか少女は知る由も無かったが、わざわざ頂点に行く事は無いだろうと今も座り込んでしまっている少年を疑った。

「それにしてもなぜ頂点に居ると分かるんですか?」

「前にも同じ事があったと言っただろう……。その時に言われたんだよ、山に行った時は頂点に居るってな。ったく! そもそもあのクソジジイ、物忘れが酷いんだよ」

「……それは分かりましたがここって山賊が出るんですよね」

「出るわけ無いだろう」

 少年がそう言って忍び寄る影が二人。

 ボロボロの衣服を着た男達が少年と少女を挟み込んだ。

「嘘だろ……」

 その人相の悪い顔を見て思わず落ち葉を握り締める少年は、顔を青ざめさせる。

「良いところのぼっちゃんか? ガキが二人でハイキングするには、登る山が悪かったな。とりあえず金目の物全部置いてけや」

 少年の品のある服装を見て、山賊はありきたりな要求をする。

 少年は素早く立ち上がると少女の影に隠れ、そこから顔だけを覗かせて言った。

「さ、山賊に渡す物などあるか!」

 風が吹く。突然訪れた沈黙の中で草木を揺らす風は皆の衣服をはためかせた。

 あまりにも格好の付かない少年に山賊は愚か、少女までも現在進行形で言葉を失い続けている。

 その中で、唐突に場の雰囲気を崩すように笑ったのは山賊だった。

「言ってる事とやってる事が矛盾しとるぞ、ぼっちゃんよ」

「黙れ!」

 少年の威勢は止まらない。

 笑っていた山賊も顔をしかめると、引きずるように握っていた大きな斧を構えて言った。

「そうだな。これから死にゆくガキとの会話ほと無駄なものはねぇ。俺らは俺らの仕事をするか」

 それに釣られるようにもう一人の山賊も斧を構える。

 小さく情けない悲鳴をあげて恐れ戦く少年は、少女の両肩を叩きながら言った。

「おい! 後は任せるぞ!」

「……一緒に戦ってくださらないんですか?」

「万が一に俺が怪我をしたらどうする!?」

「うっわー……」

「俺は主だ! 主だぞ! 偉いんだ!! そしてお前は従者! 俺の命を守るのは当然の事だろう!!」

「……分かりましたよ。けど最悪の場合は、自分の身は自分で守ってください。幽霊になってまであなたの面倒は見れませんから」

「あなた……様だ!」

 そんな状況にも関わらず、炸裂する少年の細かい指摘に、少女は思わず舌打ちしそうになるのを明後日の方角を睨んで堪えると、改めて山賊へ視線を映して言った。

「律儀に待って頂いてありがとうございます。金目の物はありませんが代わりに……そうですね私の命でも賭けましょうか」

 少女は飛び掛かるように駆け出した。

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