三十話『ふうおおおおおお!』
「ふうおおおおおお!」
シャルルループは叫びながら琥珀に接近すると、そのままラリアットをして琥珀を吹き飛ばした。
琥珀もやられるがまま再び大木に叩き付けられ、肺の空気を一気に吐き出してしまう。が、そんな状況でも、そのまま追い討ちを掛けてくるシャルルループのパンチを、屈んで辛うじて回避する事には成功した。
そして標的を失ったその拳は勢いを止める事も無く、琥珀の背後の大木を貫き、木屑を飛び散らせて大きな穴を開ける。
その破壊力に琥珀は驚きつつも、シャルルループの腹部に反撃の拳を突き上げるようにお見舞いした。
しかし、
「その程度か!? 可愛い召し使いさん!」
それはシャルルループの体を少し浮かせた程度で、大したダメージにはならなかった。
そのままシャルルループは琥珀の腰を両手で掴み上げると、そのまま力任せに投げる。
風を切って吹き飛ばされていく琥珀。
運良くも、今回は木に叩き付けられる事は無かったが、地面を何メートルも転がされてしまう。
そうして砂まみれになる琥珀を止めたのは、地面へ広がる木の根本だった。
引っ掛けるようにして止めてくれた根本に、傷だらけの琥珀は上半身を預けて今の状況を作ったハイドラを呪う。
「ほんと……やってられないです。命が何個あっても足りませんよ。……そろそろ逃げますか」
琥珀は重たい腕を上げて、手の平を歩み寄ってくるシャルルループに合わせる。
そして、
「火魔法『ファイアー』」
そこから小さな火の玉を一つ放出させた。
それは直線的に飛んでいき、シャルルループを狙い打つ。
対するシャルルループは、それを手の甲であっさりと弾き飛ばした。火の粉を散らして、あらぬ方向へ転換する火の玉は、そのまま一本の大木に触れるや否や、小さな爆発を起こして周囲の木々を薙ぎ倒す。
シャルルループはそれを楽しそうに眺めながら言った。
「ただの火魔法でこれほどの威力かっ。念の為に、魔力を纏わせて弾いて正解だったよ。でないと私が爆発に巻き込まれていた。本当に素晴らしいの一言に尽きる。ただ一つ残念なのは、この手の内に忍ばせた魔法防壁発生装置を使用するに値しなかった事だねっ!」
とウインクしながら琥珀の方へ振り向いたが、既にそこに琥珀は居なかった。
静かになった森に風が吹く。




