二十六話『私の名前はシャルルループ。侵入者を滅ぼします』
「またこんな所で会うなんて奇遇ですね」
そう言って木陰から半身だけ出して、覗き込むように姿を現したのは、以前魔宝石の商談に応じた老人の、養子だった。
今も召し使いの格好をしている。
「あなたが何故ここに居るのですか?」
ハイドラを降ろし、前に立つようにして琥珀が言った。
周囲には人の気配は無い。そうなれば、ハイドラの乗り物を破裂させたのはこの少女になるからだ。
琥珀は警戒を怠らなかった。
「たぶん、あなた達と同じ目的ですよ」
自分の頬を人差し指で突きながら少女は答えた。
琥珀が首を傾げる。
「同じ目的……? 私達の身に何があったのか……知っているのですか?」
「屋敷が襲われた。……だとすれば私達と同じ。そして、ここには敵討ちで来たのであれば、それはもう……いや、やっぱり半分だけ同じです」
少女の言葉の意味、意図が今一掴めない琥珀。
その背後でハイドラが言った。
「あのジジイ……。そうか、契約書か……。やはりそれで身を滅ぼしたか」
「ええ。そう言う事です。だからあの人が死んだのは、あなたのせいでもあるんですよ」
少女はそう言って木陰から飛び出すように姿を完全に現す。
そしてその隠れていた手に握られていたのは、小さな拳銃だった。
「ハイドラ様!」
琥珀は咄嗟にハイドラを押し倒して身を屈める。
そしてその頭上を、一発の銃弾が音を鳴らして通りすぎていく。
鳥肌がたった。容易く行われたその行動に。殺意は感じなかった。
人を殺す事に何の躊躇いも無い。
自分が言える立場では無いが、それは狂っていると琥珀は思う。
そうして琥珀が慌てて少女へ再び視線を移すと、冷たい視線と共に、銃口をこちらへ向けていた。
「私の名前はシャルルループ。侵入者を滅ぼします」
乾いた銃声が再度響く。
琥珀の後ろでハイドラが何か叫んでいるが、琥珀には聞こえなかった。純粋に耳を傾ける余裕が無い。
そうして風を切って迫り来る銃弾は、琥珀の額を貫……ぬけなかった。
「それを……どこで……!」
その事実に少女が目を丸くして言葉を詰まらせる。
地に頼りなく落ちていくその銃弾を目で追いかけて、そのまま銃弾の進行を妨げた物を睨む。
それは、その少女が名乗ったシャルルループ印の魔法防壁だった。
ハイドラも腰を抜かして言葉を失っている。
琥珀は、オレンジ色に淡く輝く半透明の壁越しに、少女を睨んで言った。
「シャルルループさん……。これを私にサービスしたのが失敗でしたね」




