二十五話『暗殺するのだ!』
「さーてさてー。ここがシャルルループ家の本宅かぁ。思ったより広いじゃないか」
街外れの小さな森。
それは人工的に作られた森だった。
シャルルループの敷地にて、シャルルループの好みで作られたこの森は、その地方では有名だった。綺麗に植えられた針葉樹の中を、琥珀とハイドラは駆け抜ける。
ただ地に足をついて走っているのは琥珀だけで、ハイドラは琥珀の少し後ろで奇怪な乗り物に直立不動で乗っていた。
「……変な人だなぁ」
琥珀はハイドラを横目で見る。
二つの車輪の間に立ち、足元から伸びるハンドルを握って棒立ちで運転していた。
それは森の道だと言うのに段差なども物ともせず、上手くバランスを取って、それもかなりの速度で走っている。
「さぁ! 行くぞ! 琥珀! シャルルループに鉄槌を下すんだ!」
片手を上げて意気込むハイドラ。
琥珀は横に並んで尋ねる。
「本当に二人で行くのですか?」
二人で乗り込む。それがハイドラの出した作戦だった。
はっきりと言って自殺行為に等しいと思う。
何故それが分からないのか。琥珀は不思議で仕方がなかった。
「何度も言わせるな、琥珀よ! 群がって行っても相手は大企業のシャルルループだ。勝てるはず無かろう! だから少ない人数で暗殺するのだ!」
「……はぁ」
琥珀は気の抜けた返事をする。
そして、この人馬鹿だなぁ。と心の中で毒を吐く。
大人数で行って敵うはずもないのに、どうやって二人で勝つと言うのか。呆れて言葉を失ってしまう。
そもそも、それほど名の知れた人物が屋敷の警備を怠る事なんて考えにくく、どうやって忍び込むつもりなのか。琥珀は疑問だった。
「どうした? ふ抜けた顔をして」
「ハイドラ様。やっぱり帰りましょう」
復讐だなんて言うものだから、それなりの考えがあっての事だろう。と思っていた。
それが蓋を開けてみれば、何の策も無いただの猪突猛進。その上、それを立派な作戦だと言い張っているのが、もはや笑える。
そんな謎の理論に巻き込まれて死ぬ事ほど、馬鹿馬鹿しいもの無かった。いくら自暴自棄になったとは言ってもだ。
「なんだ、琥珀。怖じ気づいたのか?」
ハイドラがそう返した時だった。
唐突にハイドラの乗り物が音を立てて破裂し、ハイドラを振り落とした。
琥珀は咄嗟にハイドラを受け止める。
そして気付いた事があった。
「ハイドラ様。さっそく見張りに見つかりましたよ」
それを聞いて、お姫様抱っこをされるハイドラの顔が青ざめていく。
その様子を見て琥珀は、やっぱり何も考えて無かったのか。とため息を漏らした。
そしてそんな二人に話し掛ける人物が居た。
「またこんな所で会うなんて奇遇ですね」




