外伝『女神の断末魔『Re:Union(リユニオン)』』
「おい!」
背中を見せて逃げて行く琥珀にグリムソウルは腕を伸ばして言った。
しかしそれを遮るように前に出る者が一人。
「あらあら。私を前にしてどこに行こうと言うのかしら」
腕を組んでグリムソウルを見つめるノベレットは、首を鳴らして言った。グリムソウルはここで露骨に面倒臭そうに苛立ちを見せる。
「興味無いんだよねぇ。お前にさぁ」
「だったら逃げれば良いじゃない? 私の目的はあの子達を逃す事。せめてそれまでの間、私と遊んでくれないかしら?」
「へぇ。逃げても良いんだ?」
「えぇ。ただ、逃げられるのであればね」
ノベレットのその手に光満ちていく。そしてそれは間を置かずして、ある姿へ形を成していく。
「女神の断末魔『Re:Union』」
そうして今度は衰えていく光を払うように腕を振るうと、そこには悪趣味な装飾品に彩られた大きな鎌が握られていた。
それをノベレットは軽々と構えるとグリムソウルを強く睨む。
「先にいくつか宣言させて貰おうかしら。……一つ、魔人を滅ぼす種は既に蒔いたわ。あなたがどう足掻こうが蒔かれた種は芽吹き、魔人を滅ぼす事でしょう。そしてもう一つ、あなたがあの子に施しているマーキングの魔法、剥がしてしまったから急いで追い掛けないと完全に見失うわよ?」
そのノベレットの発言に、グリムソウルは眉を小さく痙攣させる。また、ノベレットがそれを見逃すはずも無く、静かに口角を吊り上げて続けた。
「あらあら、言われるまで気付かなかった? 存外、狼狽えているのね、あなた。私と対峙するのがそれほどに怖い?」
煽りに煽りを重ねたような台詞にグリムソウルは当然、
「怖い? 怖いに決まっているだろう。たが、お前は無鉄砲なだけだろうよ。蛙ちゃん」
その手に赤い剣を出現させ、退く様子も見せなかった。