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episode to the next『……全ては復讐の為に』

「ねぇ。どうしてそんなに魔法陣の事に関して詳しいの?」

 風が吹く。その風は茶色の髪と白い髪をそこそこ強くはためかせると、突然に止んだ。

 そうして髪で擦れた頬を琥珀が指先で掻いていると、グリムソウルが楽しげに答える。

「知りたい? そうかぁ。知りたいかぁ……。だったら逆に聞くけど、俺って何者だと思う?」

「……おっさん。変態」

「……まぁ、それも間違っては無いんだけどね」

 と、いつもの軽い調子で答えるグリムソウルだったが、すぐに咳払いをすると急に真剣な顔付きになって続けた。

「本当は伏せて置くべきなんだろうけど、同じ名字の仲になったんだ。特別に教えてやるよ」

 そう言ってグリムソウルは琥珀に近付き、そのまま腰に腕を回す。

 そうして露骨に嫌そうな表情を浮かべる琥珀の腹部を撫でながら耳元で囁くように続けた。

「俺の正体は魔人。本名は雫瑠紅だるくグリムソウル。以前は魔法陣の開発の研究を行っていたんだ。専門分野は人間の魂と魔法陣の関係性……これ、内緒な?」

そうして笑いながら先へ進んでいくグリムソウルの背に、琥珀は強い口調で尋ねる。

「魔人? 嘘つきのあなたでも、いくらなんでも度が過ぎるんじゃない? もし本当だったとしたら、学園が動くでしょ?」

「今でも魔人だったらね。けど今の俺は人間の体だ。故にそれを証明する為の魔法陣も存在するし、優秀な学園も俺がただの人間である以上何も出来ない。……だってそうだろ? 逆に俺を魔人だと証明する事は出来ないし、何よりも疑われる事すらもありえない。こうして元魔人と過ごせるんだ。ハイドラに嫁ぐより、ずっと光栄じゃないか? だからさ、今夜も俺と楽しもうなぁ?」

「……」

 琥珀は何も答えなかった。グリムソウルが魔人かどうかなんて、本当はどうでもいい。

 そんな事より、何の話をしても、もう一人の自分を引き合いに出して比べられる。それが苦痛だった。

 そして夜な夜なこの男の相手をしなければならない事を考えると、うんざりして思考回路も働かなくなってしまう。こうして一人で居られる昼の時間が唯一の救いだと言うのに、目前の男は平然と接触してくる。それも苦痛だった。

 いつまでこんな生活を強いられるのか。自由になりたいが、それを望める立場でも無かった。

 聞けば、一度死んでしまった自分の魂は激しく欠落しているらしく、本来の寿命の十分の一ほどしか生きられないらしい。単純に十年、生きれれば良い方だ。

 それも延命処置として、昔のように他人から魂を奪わなければならない。グリムソウルの補助がなければそれも、それなりに困難だった。

 そうして深い溜め息を付いて黙り込む琥珀を、置き去りにしてグリムソウルはどんどん先へと進んでいく。

 そこで琥珀は決心した。

「残りの短い余生……全ては復讐の為に……」




次の物語は幕を開ける。

契約の被害者となった少女は新たな舞台の上で、契約の魔法使いへの復讐劇を繰り広げる。

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