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外伝白雨side一話『ほう。ここが学園とやらか』

「ほう。ここが学園とやらか」

リニアモータートレーンと呼ばれる乗り物から人混みの駅へ。

見慣れぬ土地に足を踏み入れた白雨は、絵に書いた田舎者のように辺りを見渡して呟く。

空を見上げれば雨を凌ぐ為のガラスの屋根が高い位置にあり、周囲はレンガによって組み立てられた壁や柱が様々な装飾によって彩られていた。床も要所要所で光っては、道案内をするように人々を導いている。

機能も()る事ながら、デザインも重視させたその風景からは、ここがかなり進んだ都会である事を十二分に感じさせた。

駅の出口へと向かう白雨はふと、ハイドラ領の街並みと脳内で比べて見せる。

「ふむ……我が国までとはいかないな。が、学園も中々にやるではないか」

白雨にとって決定打となったのは、車の存在だった。

リニアモータートレーンの車窓から見る景色は確かに進んだ都会ではあったが、そこに車なる乗り物は走っていなかった。

高級で貴重な物故に、ハイドラ領でも一般的な物かと問われれば答えはノーだが、それでも学園よりは遥かに普及していたのは間違いない。

そもそも貴族が集まるハイドラ領に、学園が経済的な項目で勝てるはずも無かった。

「魔法の研究に秀でてると聞いていたが、それも大した事無さそうだな」

所詮は出来損ないの集まり。貴族の遺伝魔法に敵うはずもないな。と白雨がほくそ笑むようにニヤつていると、不意に背中に何かをぶつけられ、よろめいてしまう。

「なんだ??」

不機嫌そうに白雨は振り向く。そして、そこに居たのは白雨の腰の高さ程しか無い小さな少女だった。

「ごめんなさい! 追われてるんです!」

そう言って少女はすぐに走り去っていく。

物騒な話だな。と面倒事に巻き込まれるのだけは避けたい所存の白雨は、無言で少女の背中を見送った。

しかしその少女を先回りするように、黒い衣服を身に纏う集団が対面から現れる。

白雨はその集団を睨み、漏らすように呟く。

「スコラミーレス……!」

慌てて少女が振り返り走るが、当然、黒い衣服の集団が挟み込むように少女を包囲していた。

気付けば人混みも無く、どう言う訳かこの場に居るのは少女と白雨だけだった。

スコラミーレスの集団から一人の男が前に出て、白雨に頭を下げる。

「ご無礼を承知で伺わせて頂きます。あなた様は、貴族様でしょうか」

「そうだが? 一体、何の騒ぎだと言うんだ」

「これは失礼致しました。学園へお越し頂いて最初の歓迎がこのような形になってしまった事を、一同お詫び申し上げます。我々は只今、重罪人の確保の任に就いてまして、被害を最小に留めるべく魔法にて人払いを致しました」

ドキッと心臓が高なり、冷や汗を流し始める白雨。

すると男性は懐から杖を持ち出しながら続けた。

「しかし強大な力を持つ貴族様はその人払いから弾かれてしまう事がありまして、就きましてはあなた様の安全を最優先とさせて頂くべく……少々手荒でありますが、早急に重罪人の確保に移らせて頂きます。近代上位雷魔法『ライトニングプリズン』」

男性の杖の先から電撃が走る。

それは白雨の隣を過ぎて(ほとばし)っていくと、そのまま少女へと向かっていった。

そしてその電撃は、その場で動けずに居る少女に直撃する寸前で軌道を反らすと、そのまま少女の回りを囲うように走り続ける。

少しでも動けば、少女は電撃に撃たれてしまうだろう。

しかし同じく動けなくなっていたのは、白雨も同じだった。

少女を囲う篭のような役割を果たす電撃に見惚れるように呟く。

「攻撃だけでなく、相手を捕らえる効果も兼ねて居るのか……。綺麗な魔法だ。無駄がない。これが魔法の最先端を行く学園の実力か」

きっと今の魔法はこの男のみならず、ここに集まっている全てのスコラミーレスが扱えるのだろう。

各々に強大な力を持つ遺伝魔法とは違い、統一の取れた魔法は美しくもあった。

そうして呆然とする白雨に、男性が話し掛けた。

「お怪我はございませんか?」

「あぁ……大丈夫だ」

学園は実力の順にナンバーを与え、管理していると言う。そのおかげで、無駄なく適材適所な仕事が出来ているようだ。

白雨は参考までに尋ねた。

「ところで、君の実力はどれほどなんだ?」

「ナンバー……6桁級でございます」

「6桁……?」

随分と濁した表現だな。と白雨は思わず眉を潜めさせる。

6桁と言うと、十万位から九十九万九千九百九十九位の間のどれかになると言う事になるのか。

少なくともこの男より強い人間は十万と居ると言う事になる。

思えば非禁禁忌教の教祖はスコラミーレスだった。この男はあの教祖よりは遥かに弱い。それは確かだが、それでもこの男以上の実力者十万人と戦う事を考 えると、学園を敵に回すのはやはり避けるべきだったと言える。

なんにせよ、学園から恨まれる理由を持ってしまっている白雨は早々にこの場から去ってしまいたかった。

「そうか。ご苦労様」

そう言って白雨は、スタスタと歩いていく。

すると囚われの少女がとんでもない事を叫び出した。

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