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外伝時雨side三話『ねぇ? お兄さん達。誰と契約して、こんな事をしているのかな?』

「あらら。囲まれてる」

 陸に辿り着いて森の中へ。まだ振り向けば湖が見えるような位置で早々、時雨達はならず者達に囲まれていた。

 それは、あっという間の出来事だった。

 統率が取れたならず者達の動きに呆然とする時雨が、気が抜けたようにぽつりと独り言を漏らす。

 男三人の先頭に立つテアは、木々の幹に身を隠すようにして警戒するならず者達へ声を張って言った。

「手荒な真似はしたくありません!大人しく投降するのであれば、罪は軽くなるでしょう!」

 テアの軽い声は、森の中を広がるように澄み渡る。

 そこへ一人のならず者が声を大にして返した。

「ふざけるな! ここは俺達の縄張りだ! お前達こそ金目の物を置いていくなら、痛い目にあわせるのは勘弁してやる!」

 時雨は二人のやり取りを退屈そうに眺めていた。

 いつの時代でも良く見る光景だなぁ。と合わせて溜め息までもつく。

 ハイドラもその領地を拡げる為、原住民と接する事は少なくなかった。場合によって武力によって強行な行動に出ることもあった。

 しかしその度に争いをしていれば、その分の消耗も間逃れない。

 そこでハイドラ一族は話し合いによって領地を拡大する事にも力を費やしていた。

 時雨もその筆頭として何度見知らぬ土地に訪れた事か。

 過去、まだ幼いながらにその才能が認められ当時から現地に(おもむ)いていた時雨からすれば、今の状況は実に見慣れた光景だった。

 時雨はならず者達を刺激しないよう、目玉だけを動かして横目で上官を確認する。

 この状況で上官がどんな対応をするのか、それが見物だった。

「では! 皆殺しだっ!」

 時雨の期待に(こた)えるように、テアはそう言って高らかに腕を上げる。

 ならず者達の怒りを一斉に買っているのが、肌から感じ取れた。

 これは正しく殺気と呼ばれるものだろう。

 きっとこのならず者達は躊躇いも無く攻撃を仕掛けてくる。

 上官であるテアはそれを分かっているのか。悠長に腰を手を当ててふんぞり返っているが、これだけの戦力で正面から戦えるほどの策はあるのか。

 怪訝に思う時雨が思わず表情を曇らせていると、不意に背後から強い殺気が感じ取れた。

「危ない!!」

 咄嗟に時雨は伏せるように身を屈める。

 すると突如として発砲音が鳴り響き、隣に並んでいた一人の男が腕を撃ち抜かれた。

「うわああああっ!!」

 思わず尻餅を付いて叫び声を上げる男。

 テアも拳銃の所持は予想外だったのか、顔を青ざめさせている。

 そして次の瞬間には、無数の銃口が向けられていた。

「お嬢ちゃん。殺しをしていいのは殺される覚悟がある奴だけだ。分かるな?」

「き、聞いてる話と違う……!」

「あ? なんだって??」

「だだだって……。ここに居るのは魔法も使えない雑魚だって……!」

「あぁ。確かに俺達は満足に魔法も扱えない堕落した者。だがな? 拳銃を扱うのは得意なんだぜ?」

 テアに改めて銃口を合わせるならず者が歯を食いしばる。

 そこへ時雨はテアを庇うように前に出て言った。

「ねぇ? お兄さん達。誰と契約して、こんな事をしているのかな?」

 ならず者が怪訝そうな表情を浮かべる。

「何の事だ……?」

「だってそうだよね? 準備が良すぎるんだもん。僕達がここに下船して、間も無く包囲された。僕達がここに来るのは分かっていて、予めに配置させて置いたんだよね?」

「さぁな?」

「さぁな? ……じゃなくて嘘を()くなら、何の話だ? でしょ?」

「さぁな……」

「あはは、正直な人だね」

 時雨はそこで苦笑いを浮かべるが、すぐに真剣な表情になって背後のテアを横目で睨みながら続けた。

「ところで先輩。……先輩の聞いてた話ってどんな話だったんですか?もしかして、すぐに包囲されるのは折り込み済みで、拳銃に打たれたのが予想外だったのですか?」

 テアは激しく動揺しているのか、腰を引いて震えながら答える。

「そ、そうよ。それで後は雑魚を倒すだけって……」

「あー……そう言う事ですか」

 そこまでを聞いて時雨の辿り着いた憶測は、保安機関の内部にならず者と繋がっている人物が居る事だった。そしてその人物が、直接テアに任務を与えた可能性は低くない。しかしそうする事による目的は分からなかった。

 時雨は続けてテアに脅すような口調で尋ねる。

「それで先輩にその依頼をしたのは、誰なんですか?」

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