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 白雨は笑う。

 誰も居ないハイドラの城、契約の礎の前で。

 大理石の間にあった玉座をわざわざここへ移動させ、そこに深く腰掛けて。そして肘置きで頬杖を突いて、笑いが抑えきれないと言った様子で呟いた。

「父よ。親愛なるお父さん。我をこの世に生み出してくれて感謝する。そして……王位、確かに継がせて貰った。暴君ハイドラの名は我が継いでやろう。……本当に弔いをしてやれんのが残念だ」

 白雨は灰となった父親を恍惚とした表情で眺める。

 そして漏れだすように出たのは、ただひたすらに笑い声だった。









 水の中で気泡が蠢くような音が、とある地下室で響き渡る。その地下室は薄暗く、辛うじて届くのは廊下からの月明かりだった。

 その部屋には四つの大きな金庫があり、既に内三つは解放されていた。

 それ以外の物は何もない地下室。ただ部屋の中央には、金色の綺麗な長髪を地面に広げて、紫色の瞳で茫然と天井を眺めている亡骸が横たわっていた。

 そしてそんな金髪を靴底で踏み荒らして、金庫の前に立つ者が一人。

「おはよう、お目覚めの時間だよ」

 静かな声でそう言った白い髪の男性が、残された金庫の扉へ腕を伸ばす。

 そうして開かれた金庫の中から現れたのは、地面に広がっていく無色透明の液体と、その液体に流されて出てくる全裸の少女だった。

 その液体は滑らかに広がり、金色の髪を湿らせると同時に亡骸の隣へ少女を運ぶ。

 そこで少女の瞼が静かに開いた。

「ぁ……」

 吐息を漏らして上半身を起こす少女は、笑みを浮かべる白い髪の男性を金色の瞳で見上げる。

 男性は屈むと、膜を張る少女の茶色の髪に手を触れて言った。

「お誕生日、おめでとう」


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