十一話『怖がるなら……虐めなければ良かったじゃないですか……』
「侵入者ですか??」
昼の仕事に戻った少女だったが、早々メイド長に呼び出しを食らっていた。
謝られるか蔑まれる。そのどちらかだろうが、少女はどう考えても後者としか思えなかった。
それがどうしたものか、実際に厨房で顔を会わせてみるとそのどちらでも無く、純粋に仕事のお願いだった。
いつもなら仕事が出来ないと放置されて、適当な掃き掃除しかさせて貰えなかった。
そして、どんな仕事だろうと少し楽しみに思い、話を聞くとそれはそれはメイド業からは程遠い内容だった。
「そう。屋敷に侵入者が忍び込んでいるみたいで」
「それで私にどうしろと言うんですか?」
メイド長の都合の良い指示に、少女は気分を悪くする。
朝の件から前向きに歩み寄ってくれるのかと期待すればこれだった。
大方、戦闘能力を買われて厄介事を押し付けようとしているのだろう。
それが見え見えなのが、余計に少女を苛立たせた。
「侵入者を取り抑えて欲しいの」
メイド長がすこぶる困った表情をする。
朝の件もあり、これ以上の失態は許されないのだろう。
必死になって少女の手首を掴んで縋っている。
「あなたなら簡単でしょ?」
頼み方と言うものがあるだろうと、少女は立腹する。
虐めておいて謝罪も無く、あげくこの言い方。
侵入者がどんな人物かも分からない今、その人物との戦闘は最悪、死すらも覚悟しなければならないと言うのに、その態度でおいそれと引き受けようとは思えなかった。
「私を何だと思っているのですか? 傭兵じゃ無いんですよ」
「でもメイドの中では一番強いじゃない! だったら適切でしょ!? それに普段何もしてないんだから、少しは役に立ちなさいよ!!」
こいつ……! と少女はメイド長の手を振り払い掴みかかりそうになる。寸前。そこでなんとか理性で抑えられたが、メイド長は怯えた目で少女を見つめていた。
「怖がるなら……虐めなければ良かったじゃないですか……」
途端に悲しくなる。
別に虐められていた事を気にしてた訳では無いが、そう思った。
「それは……」
メイド長がそこで口ごもる。
少女はメイド長が思っている事などすぐに分かった。
主がいつものように連れてきた一孤児が、ここまでの戦闘能力を持っていると思いもしなかった。ただそれだけだろう。
「もう……良いですよ。侵入者の捜索は私が当たります。……せいぜい巻き込まれないように気を付けてください」
不本意だったが、それが一番適切な判断だと言う事は少女も理解していた。
ただ一つ聞きたかったのは謝罪の言葉。
それだけ聞けていれば、この仕事に対するモチベーションも違っただろうなと少女は思う。
結局のところ、聞きたかった言葉は聞けなかったが、少年の主に迷惑を掛ける理由にはなり得ないと言う言葉を糧に少女は動き出した。
青い鳥やってます!
なろうは、濁した表現しなくても大丈夫なのかな……?