赤ずきんと狼
「......これが、今回の取り引きの品です。」
「よし、中身を確認させてもらうぞ。」
「どうぞ、お構いなく。」
人通りのない、真夜中の路地裏。
麻薬か何かの取り引きが行われている。
もちろん、早々捕まることはない。
「...よし、大丈夫だ。
金はこれで足りるだろう?」
そういって、お金を差し出そうとした時だった。
『赤いずきん』を翻し、満月が浮かぶ空から少女が舞い降りた。
綺麗に着地して、男たちを睨む。
「な、なんだ! こいつ!」
「ちっ! 女の子がヒーローぶってんじゃねーよ!」
少女は何を言われても、男達を睨んでいて、ついに口を開いた。
「お兄さんたち、いけないことはしたらだめなんだよ?
狼さんに食べられても、知らないよ?」
「はぁ? 狼なんざいるわけないだろ、こんな街中に。」
「赤いずきんまで被っちゃって、赤ずきんですってかぁ?(笑)」
少女はにっこりと微笑み、男たちの言葉を無視した。
「そう、赤ずきんだよ、わたしは。
お使いを、頼まれててね、それを奪いにきたの...!」
そういうと『赤ずきん』は、地面を蹴って走り出した。
気付けば麻薬はもう彼女の手元にあった。
「....なっ! い、いつの間に......!」
「すぐに奪い返すんだ!」
そうして彼女に襲いかかろうとする男たちの背後に、また誰かが現れる。
「『僕の赤ずきん』をいじめないでくれるかな?」
男たちは背後から蹴りをくらい、すぐに倒れ込んだ。
男たちが見上げると、そこには耳としっぽが生えた、まるで狼男のような少年がいた。
「....ちっ...〝赤ずきんと狼〟の噂ってのは、ほんとだったのかよ......」
立ち上がるので精一杯になりながらも、男は小声でつぶやき、少年と少女は去っていく。
そう、『赤ずきん』と『狼』は、今ではもうすっかり有名になっていた。
この辺りの治安は、彼女らのおかげでよくなってきているとも言える。
笑顔で街中を飛び回り、かけていく。
ふたりは、愛をもって暁に舞っていく。