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わたしの家族

電気は、ついてなかった。

でも、今のわたしに不法侵入なんてことはできなかった。

急ぎつつもチャイムを鳴らし、待ちきれずに玄関の扉を思いっきり叩く。

すぐに男性が出てきて、驚いたような顔をしていた。


「あ、あの! ごめんなさい!」


「......話は後だ、すぐに手当てをしよう。」


優しそうな瞳だった。

すぐに真剣な目になり、暁くんをわたしの背中から、家の中へと連れ込んでいく。



手当ては順調に進み、すぐに終わった。

そのままベッドで寝かせることにして、わたしはそばにいることにした。


時刻はもう、夜明けに近かった。


いつの間にかわたしは寝てしまい、12時頃に目が覚めた。

ベッドを見ると、誰もいない。

もう起きてるのだろうか?

あんな体じゃ危ないのに...



二人暮らしには広い、二階建ての家の階段を、そっと降りていった。

リビングに行くと、ソファで寝ている暁くんと、キッチンで料理を作っている“お父さん”を見つけた。

すぐに、入口にいるわたしに気づいて、にこりと微笑む。


「おはよう、愛ちゃん。」


当たり前のように、わたしの名前を呼ぶ。

でも、急に馴れ馴れしくもできない。

何より昨日、暁くんを傷つけたのはわたしなんだから。


「......おはようございます。」


「ははは! 実の父なんだから、敬語はないだろう?(笑)」



......やっぱり、そうだ。

暁くんは...暁おにいちゃんはわたしの兄で、この人はわたしのお父さんだ。



「昨日は、ううん、今までごめんなさい。」


「いや、いいんだよ。

ちゃんと暁を止められなかった俺も悪いんだ。

君が薬を持っているのを見てね、すぐにわかったよ。

小さい頃のことを、思い出したんだ、ってね。」


「あの! それより、おにいちゃんは......」


ソファをちらりと見ると、今朝よりもやわらいだ表情で、すやすやと寝ているおにいちゃんがいた。

左腕の包帯を見ると、何ともいいようのない気分になる。


「ああ、大丈夫だよ。

狼男だからね、回復力は早いんだ。

それに、怪我よりも薬の多量摂取が問題だからね。

体への負担が大きすぎて、倒れただけだ。

怪我はもう治ってるよ。」


それを聞いたわたしは、すぐにソファへかけより、腕の包帯を外した。

綺麗な肌が、すぐに見えてくる。



ほっとしていると、お腹が空いてきて、美味しそうな香りにひかれる。


お父さんの手元を除くと、ちょうどご飯を塩コショウで味付けしていた。

すぐ隣には卵が置いてある。


そういえば、わたしはオムライスが好きだったけど、1番好きな味を覚えていなかった。

ただなんとなく、お母さんが作るものとは違うと思っていた。

もしかしたら、お父さんが作ってくれていたのかな......



「.........ん...いい匂いしてるなぁ。」


振り返ると、少し寝癖をつけているおにいちゃんが、鼻をすんすんと動かしていた。


「.......おにいちゃ...」


「はい、ご飯ができたぞ!

ほら、ふたりとも席について!」


声をかけようとしたら、見事に遮られ、謝るタイミングを失ってしまった。

仕方なく、久しぶりの『家族』がいる食卓についた。




「さて、愛、君に話がある。」


昼食を食べ終えてすぐ、ふたりとも真剣な顔つきになった。


「わたしは医者の資格を持っていてね、愛が精神的に参っていたのは、すぐにわかったんだ。」


「そこで、僕とのバトルと称して、被害者を減らし、僕との交流も増やした。

まあ、見つけるのには、苦労したんだけどね。」


医者の資格......精神科、とかかな。

でもそりゃ、見つけるのも苦労するだろう。

普段は黒いずきんで過ごしているのだし、移動も早いし...。


「見つけた時に、すぐわかったんだ。

もうやりたくない、ってこと。

だから、挑発するような感じになってしまったんだよ。

ごめんね。」


「そんな、別に、おにいちゃんが謝ることじゃないし...」


「でも驚いてたこともあるんだよ。

愛は無意識だったかもしれないけど、途中からは火遊びをしている不良だとか、違法取引をしてるやつらしか殺してないからね。

善良な人達は殺してない。」


......そういえば、そうだった。

最初は、人を見かければすぐに殺していたから。


「前に、SNSにあげられていただろう?

暁に舞う赤ずきんと狼、という文章と写真が。」


そんなこともあった。

多分、一生消えることはないんだろうな。

わたしの罪は、そんな簡単に消せるものじゃない。




「だからさ、愛、見返してやりたくないか?」

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