第9話 変わらぬ決意
活動報告も合わせて見ていただけると泣いて喜びます!
宿屋のベッドにルビを寝かせ、レイスは術式を唱えていた。
辺りには緑の風がそよぎ、その風によってルビの体はふんわりと浮かび、だいぶ伸びたルビの金色の髪を広げる。
「よ、しっと」
レイスが手を下ろすと、緑の風が止み、そっとルビの体がベッドに沈む。
「う、ん···」
と、ルビが目を覚ます。
「目が冷めたか?ルビ。でもそのまま横になっていた方がいい。ここの所無理させすぎたのかもしれないな。体調の悪さに気づかなくてごめんな」
ふるふる、と、ルビが首を振る。
「いいえ、そんなことはありません。でもとても気持ち良いです。ありがとう」
ルビはレイスの手を取って、ギュッと握る。
きっと、たった今使った浄化の魔力を補おうとしているのだろう。
ルビは、ベッドから起き上がりそこに座る。そして、意を決したように話し始めた。
「赤い髪で黒い瞳の女性は、シャロンで間違いありません。シャロンは私とお友達になり、私の行くべき道を指し示してくれました」
レイスは驚いた。
「いいとこのお嬢さんだとは思っていたけど、まさか王女さまと友達だったとはな」
ふるふると首を振るルビ。
「いいえ」
「シャロンってのと友達だって、言ったろ??」
ルビは困ったような顔をする。
「えぇ、言いました。ルドキアの王は私の父で、私はその娘。ルドキア王女です」
は···?な、なんだって?
「ある日、シャロンは、城の私の部屋に現れました。彼女は全身傷だらけで、私が驚いていると、何か呟いて手のひらに真っ白く光る球を作ったのですが、ふっと意識を失って倒れたのです」
ルビは遠い目で思い出しながら語る。
「私は彼女の傷に触れ、その傷を癒やしました。何日もかかりましたが、だんだん良くなってきて、彼女も意識を取り戻しました。シャロンが傷が治っていることに驚いていたので、私は『私が治しましたので大丈夫です』と説明しました。シャロンは、傷が治ってからも城にいてくれて、そして彼女は、私とお友達になってくれたのです。2人で過ごす日々はとても楽しいものでした。私がナイアグロギアに行けば、国が平和になり、父が幸せになると、シャロンが教えてくれました。ですが···」
と、ルビは俯いた。小さな手で、ふとんを握っている。レイスは、その手にそっと、自分の手を乗せた。
「王は亡くなってしまった。そしてシャロンが後に立った。そのシャロンってのが、傷だらけだった理由はなんだ?」
「存じません」
「じゃあ、シャロンはどこの誰なんだ?」
「わかりません」
「···」
レイスは、腕を組み、ん〜、と唸る、
「なんだかすごく怪しいんだけど。このままナイアグロギアに参拝なんて、呑気にやってていいのか?」
レイスが聞くと、ルビは首を傾げた。
「参拝?」
「国が平和になりますように、って、山の上まで祈りに行くんだろう?そういうの参拝って言うんだよ」
と、レイスが教えてやると、ルビは、いつものように意思固く答える。
「参ります。私が行かねばなりません。お父様の事はとてもショックでしたが、シャロンが代わってくれたのなら安心です」
え〜、と、レイス。
「その絶大な信用がどこからきてるのかが、俺には理解できないんだけど」
と、疑心暗鬼だ。ルビは、ふふ、と笑って言った。
「レイスもいい人です。今までお会いした人全員がいい人達でした。悪い人は物語の中にいます。ここにはいません」
レイスは苦笑した。
そんなことは、ない。俺でさえ、お前を利用し、毎夜魔力を補充させているというのに。
「これでやっと合点がいった。王族に、アカデミーに通う義務はない。だからルビはアカデミーに通っておらず、魔法の基礎も知らなかったんだな」
ルビは微笑んで頷く。
「はい」
2人は、その都市で行われたルドキア王の追悼式に出席し、崩御を悼んだ。3日間に渡って行われたそれを、ルビは誰にも王女だと見咎められることなく、一国民として静かにこっそりと悼んでいて、レイスは心が傷んだ。
すべての日程を終えると、ルビは、笑ってレイスに言う。
「ナイアグロギアに、参りましょう」
あぁ、そうだな。お前の願いを、俺が叶えよう。すぐ傍で。
覚醒時の手繋ぎ 小 (意識)
休眠時の手繋ぎ 中 (無意識)
休眠時·抱きかかえ 中+ (無意識)
覚醒時·肌接触+詠唱 必要分 (意識)
???魔力枯渇時 超大 (無意識·瞬時発動)
???魔力充溢時 必要分 (意識·送魔量超大)
レイスの状態と、送魔における魔力回復量の表
無意識は、その状態になったら自動で発動。意識は、その状態になってもどちらかがやろうと思うわないと発動しない。といった感じです。
???に関してはいずれ出てきます。
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