第13話 そして伝説へ
活動報告も合わせて見ていただけると泣いて喜びます!
目を開けると、すぐ横にレイスがいた。
あたりは真っ暗で、空には厚く雲がかかり、もう随分遅い時間だろうが月も星も見えなくて、時間はわかりようがなかった。
「まぁ、レイス。記憶は見ることができまして?」
レイスが、ルビの顔を見つめたまま、何も言わないのでルビがそう話しかけた。レイスは頷いて言った。
「ルビ、もしも魔力が暴発しなかったら、もしも魔力が貯まり続けなかったら、ルビはそれでもナイアグロギアの火口に身を投げたいかい?」
ルビは、口に手を当て少し考える。
「いいえ。ですが仕方ありません。私の魔力を使い果たす、その方法はありません」
「方法があったら?」
「ございません」
くく、と、レイスは笑う。
「もしもあったら、だよ。ルビは俺と離れたい?死ぬとか爆発とか関係なく、ルビは俺といるのが嫌なのかなって思って」
「そんなことっ!」
ルビは立ち上がった。
「ひどいわ、そんなこと!私がどれだけ貴方を好きか。どれだけ貴方のそばにいたいか!でもそれ以上に」
ポロポロポロ、と、ルビの目から涙が落ちた。
「貴方に生きてて欲しいの。死なせたくないわ。笑っていて···」
レイスは立ち上がり、ルビの頬を包み笑った。
「良かった。それを確認したくて。じゃなきゃこの方法だとダメだから。ルビ、俺、お前を愛しているよ」
そういうと、レイスはそっとルビの唇に自分の唇を重ねた。
「!」
ルビが跳ねる。でもレイスは離さない。
2人の繋がった唇から、ものすごい量の魔力が流れ、レイスはそれを使って複雑怪奇な呪文を展開していく。
ごごごごご···と、天空から低い音がして、頭上にあった雲がすべて流れて消えていく。
「ふ、ぁ···んっ!」
ルビはあまりのことに抗うが、レイスはしっかりとルビを掴んでいて離してくれない。
魔力はどんどん流れていく。
すっかり見えた、満点の夜空に、四方八方からプラズマが集まってきて粒子がきらめきオーロラが現れた。
この世に存在する八龍のうち、3匹が召喚され夜空を漂っている。
足元には花が、地平線には太陽が、右手には月が、山の下には海が
天体までも動かして、レイスはルビの魔力を使っていく。
「ん、ん、レ、レイスっ」
やっとの思いでレイスを引き離す。
魔力は半分以下まで減っている。ルビは、未だかつてここまで魔力を減らしたことがない。頭がクラクラし、足が覚束ないのはそのせいか。
うまく立てないルビを、レイスがそっと支えてくれた。
「な、な、な、何をするのですか」
ははは、とレイスは笑って
「何って、キスだよ」
と言うが、ルビはふるふるっと首を振る。
「そ、それではなくて、それもですけど···。こんな、こんな魔法!あぁ···あんな龍まで召喚して、どうするのですかっ」
レイスは、ん?と、空を見て
「あぁ〜、ほんとだ。戻そうね。必要ないから」
と言うと、にっこり笑って顔を近づけてきた。
「ちょちょちょ、な、な、な、なんですか」
ルビは焦って、両手でレイスの口を抑える。
「何って···ルビの魔力がないとあんな大きな召喚龍戻せないでしょ?」
ん〜と、口を近づけてくるレイス。ルビは大混乱だ。
「ま、ま、ま、待ってください。ちょっと待って!」
くす、と笑うとレイスは、ふわっとルビを座らせて、やっと手を離した。
「どう?」
と聞くレイス。
「え?な、何がですか?」
と、自分の頬を抑えて聞き返すルビ。
「暴発しそう?っていうかできそう?」
え···と、ルビは自身の魔力量に注目する。
「とてもできそうにありません···だって、もう4分の一くらいしか魔力がありません」
レイスは、ルビの横に座ってにこにこしている。
「じゃ、火口に身投げしなくてもいいね」
ルビは、眉を寄せる。
「でもまたすぐに貯まります」
レイスはルビの顔にかかった髪を払う。そしてそのまま頭を抑えて、優しいキスをした。
「貯まりきるまで、俺がキスしないと思う?ずっとキスして、ずっと魔力使うから、ずっと貯まらないよ」
レイスはルビを見る。
「ルビの魔力で俺が魔法を使うんだ。ルビも言ってたろ?すごく素敵なことだって」
その昔、魔族に国を乗っ取られたルドキアという大国があった。
紅い髪、黒い瞳の、恐ろしい女魔族に。
王を殺し、王女を追い出し、残虐の限りを尽くしたけれど、ある日追い出したはずの王女が戻ってくる。
その横には勇者がいた。人智を超えた魔術を使い、ありとあらゆる召喚獣を従え、天体さえも動かしたという。
が、それはただの噂で、真偽の程は不明であった。
なぜならその勇者。闘いのさなかはずっと、王女に口づけていたというのだから。
ーおしまいー
レイスさん、普段はルビリアンにキスできなくて可哀想ですね。
「俺の魔力は今や常にフル充電だから、ルビとのキスは年中し放題だ(真顔」
※9話あとがきの表参照(見にくいけど




