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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

いや、彼女は居ないですけど。

 

 高校に入学して早半年が過ぎた。夏休みも終わり、そろそろ秋の気配を感じさせる季節の移り変わりは体調を崩しやすい。

「よし、よし、よしおかあ……っ!」

 案の定、風邪をひき昨日は一日学校を休んだ。症状はそこまで酷くなかったため一日休んだだけで体調が戻ったのは幸いだった。

「どどどどうしようどうしたらいい吉岡(よしおか)……っ!」

 休んだ分のノートは友人ではなく隣の席の生徒から借りたものである。ちなみに女子だ。異性から借りるのを見ていた前の席のクラスメイトの男子がにやにやからかってきたが、一言『見やすいからだ』と伝えると一拍ののち確かにと納得された。

 以前自分が貸したノートを思い出したのだろう。なかなかに乱れた文字の羅列は解読するのに結構手間取ったものだ。いい笑顔で返したのも記憶に新しい。

「って聞いてないし! 聞いてくれよっ」

 なんだか騒がしい音が近くでするのを気づかないふりしていたが、そろそろ無視も難しくなってきたようだ。今気づきましたとばかりに顔を上げると思いのほか傍に他人の気配があり思わず上半身を引く。またそれが相手にダメージを与えたらしい。

「ちょ、なんでそんなに引いてんの!? 酷い!」

「うるさい」

「……っ泣ける!」

「涙出てないけど」

「辛辣すぎる!」

「いや、事実だし」

 漫才のような言い合いに周りのクラスメイトが小さく噴き出しているのが分かった。なんだろう、同類と思われるのは癪だ。

「なんかけなされてる気がする……」

「よく分かったな」

「がーん……!」

「声に出すとか……」

「うう……」

 本当に泣きべそを掻いているような色合いを滲ませた声に、やり過ぎたかと僅かに反省する。まあしたとしても小指の先ほどだが。

「ごめんって。少し言いすぎた」

「うう、じゃあちゃんと話聞いてくれっ」

「はいはい。で、なにがあってそんなにてんぱってるわけ」

「じ、実はさっき呼び出されたんだ……二年の先輩に」

「そういえば三時間目居なかったな」

「呼び出されてたからだよっ。三時間目さぼる羽目になったのはそのせい!」

「へえ、誰に?」

「……柊克人(ひいらぎかつと)」

「は?」

「っだから、あの柊克人だよお!」

 いや、涙声で絶叫したところ悪いが。

「……誰?」

「はあっ!? お、おま……っ、本気で言ってる!?」

「本気だけど。ごめん、誰? だっけ、そのなんとかって人」

「柊克人だよ! 学校全体の不良の中でもリーダー格で有名な不良!」

「……不良とか居るんだ」

「そこ!?」

 いやだって今時不良って。ヤンキーってことだろうか。

 ああでも確か暴走族とまではいかないがなにやらチームと呼ばれる集まりがこの界隈にいくつかあって、地域によってはほどほどに治安がよくないところがあるというのはクラスメイトから耳にしたことがある。夜、出かける際は注意した方がいいとアドバイスまでもらったのを今の今まで忘れていた。いやだって不良に遭遇したことないし。


 さて、この世の終わりとばかりに青い顔をしているこの友人の名は染井(そめい)という。

 染井はどこにでも居るような平凡な容姿をした男子高校生だ。可もなく不可もなし、といったら失礼だろうか。けれど紛れもない事実なので染井は許してくれそうだ。

 喧嘩や不良といった存在とは縁遠いと思っていたが、どこで接点があったのだろう。

「で、呼び出されてどうしたって」

「そ、それが……」

「なに」

「……ちょ、ちょっとこっち来てくれ」

「え。やだ面倒」

「頼むよ……!」

 なにやら必死な様子に仕方なく席を立つ。そして促されるまま案内されたのは同じ階にある移動教室のひとつの前だった。ここは位置的に突き当たりで、今の様子から次の時間使用される形跡はないので他人に聞かれたくない話をするにはもってこいだろう。

 染井は教室の扉の前に座り込む。吉岡は真向かいの壁に背中を預けた。

 顔を伏せたまま染井が口を開く。

「……さっき、呼び出されたって言ったろ」

「まあな。いちゃもんでもつけられた?」

 なんとなくそれはないだろうなこの染井に限って、と内心決めつけていると当たりだったようだ。

「……れた」

「は? なに聞こえない」

「……だ、からっ、こ、こ、こくは、く、されたんだよおっ」

「……告白?」

 有名な不良とやらは女子か? いや確か名前は男子ぽかったがと首を傾げたが。

「なんでオレ!? つーかオレ男! 男だし! なのになんで同じ男から告白されなきゃなんないわけっ!? しかも柊克人とかありえないだろなんの罰ゲームだよマジでえ……っ!」

 やはり男だったらしい。

 ああああと絶望に打ちひしがれているせいか染井の口は止まる気配がない。

「しかも断ったらどうなるか分かってるかってなにその脅し! 眼光鋭すぎんだよこえーよ! もしかして罰ゲームですかなにかですかって訊いたときのあの顔! 凶器かと思ったわ!」

「罰ゲームじゃないと思った理由は?」

「不良の照れ顔とか誰得だよっ!」

「……おお」

「いやだから引かないでお願いします!」

 無理だろ。

 無言の否定に染井自身も分かってるから言ってみただけ! とやけくそぎみだ。

 どうやらだいぶ参っているらしい。まあいきなり不良の、しかも同じ男に告白された衝撃は計り知れないだろうが。

「で、結局受けた、と」

「断れる雰囲気どこにいったって感じだったんだよお……」

 思い出したのか身体が震えている。恐怖というよりありえない現実にだろう。

「その相手って同性愛者なのか」

「……いっつも見かけるたび女子連れてる。顔触れは毎回違うけど」

「女取っ替え引っ替えタイプ?」

「……って噂」

「不良ってもてるんだな」

「不条理だよな。平凡にも分けろ」

「言ってやれば」

「言えるか! 殺されるわ!」

 想像したのかさらに顔色が悪くなっている。

「しかも早速昼休み迎えに行くとかああオレ帰っていいかな早退してもいいよなこれ迎えに来られるとかなにそれ死ぬ!」

「どんまい」

「心がこもってない!」

 遂にはうわあっと膝に顔を埋めてしまった。

 体育座りをしている平凡男子が泣いてる様子はなかなかシュールだ。

 もう教室戻っていいかなと逡巡したとき、急に伏せていた顔を上げて染井が叫んだ。

「昼休み付き合って!」

「無理」

「一瞬の迷いもないっ!」

「つーかもうすぐチャイム鳴るから教室戻る」

「うわああ人でなし〜!」

「そんなに褒められても」

「いや褒めてないからーっ」

 未だしゃがんだままの染井を置いてさっさと教室へ戻る。

 ちなみに戻ったと同時にチャイムが響き、そのすぐあとに教室へ飛び込んでくる染井の姿があったがとりあえず見ないふりをしておいた。次の授業の方が大事である。


「よよ吉岡ああー!」

 四時間目のチャイムが鳴り終わったと同時に吉岡の席まで染井は走り寄ってきた。

「どうしよう昼休みだよ昼休みになっちゃったよ待ってくれないよ昼休み!」

「意味分からんしうるさい」

「だから酷いっ」

 相変わらず顔色はよくない。どうやら授業中も昼休みのことが頭から離れなかったようだ。

 吉岡の席に両手をついてうな垂れている。しかし邪魔だ。これでは昼食が食べられない。

「弁当食べるからどいて」

「薄情すぎるだろ〜!」

 いや本当のことだし。

 そんなやり取りをしていると不意に教室の空気がざわつく気配がした。後ろの扉の方から拡がる動揺と、女子の抑えようとしても沸き上がる歓声、男子の畏怖にも尊敬にも似た感嘆の声。

 もしかしてと思ったのは吉岡だけではない。

「ま、さか」

 染井の唇からこぼれ落ちたのと同時だった。

「染井クーンお迎えだよ〜」

「健也(けんや)」


『きゃああああ!』


 男にしては高い能天気な明るい声と、低く抑えた声音が呼んだのはどちらも染井の名前だった。

 振り返れば後ろの扉から遠慮なしに教室へと入ってくる二人組が見える。つられてそこかしこから女子の歓喜に満ちた悲鳴があがった。

 珍しい光景が新鮮だ。

 それを呑気に吉岡は観察していた。

「さ、行こうか染井クン」

「行くぞ健也」

「……ひいっ」

 金色にも見える茶髪の男と濃紺に近い黒髪の男から声をかられた染井は喉の奥で吐息のような悲鳴をこぼす。幸いその音はすぐ傍の吉岡にしか聞こえなかったみたいだが。

「い、いやあのあの、えと、その」

「健也?」

「……っ」

 黒髪の男に覗き込まれ染井の顔はいっそ病気を疑うほど悪い。

 吉岡は視線を黒髪の男へ向けた。鋭い目つきをした相貌は整っているものの迫力がある。

 もうひとりの方はといえば、下がった目尻に愛嬌があった。

 つまり黒髪の男が染井に告白したという柊克人なのだろうと当たりをつける。

 そうこうしているうちに、ぶるぶる小刻みに震えていた染井は目の前の人物へ意を決したような眼差しを向けた。


「ゆゆ、友人も一緒でいいですかっ!」

「あ?」

「おや〜」

「……おい」


 上から染井、推定柊克人、金茶髪、吉岡だ。

「おおおお願いしますうーっ」

 勢いのままばっと頭を下げなけなしの勇気で出した染井の提案に難色を示したのは黒髪である。


「どいつだ」


 肉食獣のような獰猛さを滲ませつつ問う黒髪の視線が当然ながら染井の一挙手一投足をうかがっており、自然と染井が手をつく机の主、吉岡を捉えた。

「吉岡です!」

「あ?」

「こいつです!」

 おいちょっと待て誰が了承した。

 喉元まで出かかった反論は、しかし第三者に阻まれる。

「まあまあ克人、いいんじゃない友達のひとりくらい」

「……ちっ。わーかったよ」

「っ、ありがとうございます……っ」

「いいよいいよーってことで友達クンも行こうか」


 いやだから誰がいいと。


 などという抗議の声はいっさい吐き出せぬまま、校内の溜まり場として使用しているらしい教室で今現在、吉岡は持参した弁当を半分ほど食べ終えたところだ。

 盗み見るつもりはさらさらないのに勝手に聞こえてしまう染井と黒髪不良柊の攻防は普通の神経の人間ならげんなりするだろうが、吉岡は我関せずで箸を進める。

 その中で分かったのは、どうやら柊克人は本気で同性である染井に気があるらしい。からかいでも罰ゲームでもなくある意味情熱的に……まあ向けられた染井からしたら青天の霹靂だろうが、熱心に、というよりほぼ脅迫に近い口説き文句はマイノリティーな恋愛であるにも関わらずなかなか出ないものだ。

 それは素直に感心するが、まったく関係のない人間まで巻き込むのはいかがなものか。迷惑以外のなにものでもない。

 と、ここまで不満を並べてみたが結局空気扱いを互いにしていたら被害は最小限に抑えられる。

 こちらは空気を読んで存在感を失くし、あちらは存在そのものを無視すれば容易い。

 ……ただし邪魔さえ入らなければ、の話なのだが。


「ねえそれ友達クンの弁当手作り?」

 関係ないとばかりにひとり黙々と食べ進めている吉岡の前を陣取り、気安く話しかけてくる相手。そう、金茶髪の不良だ。

 この教室に連れられてすぐ何故か存在していたソファーに座った黒髪不良は逃げ出したくともできない染井を有無を言わせず隣に置き、金茶髪は自分の定位置なのだろうソファーの近くにある椅子へ腰かけた。

 暫くしたのち吉岡も空いている椅子に腰を落とした。机はそこら辺に放置されていたものを移動させ、そこで下げていた弁当を開き食べ始めたのだが、いつの間にか金茶髪が傍へ近寄っていた。というより椅子を引きずって吉岡の対面に居座ってきたのだ。正直言おう、目障りだ。

 訊いてもいないのに勝手に都丸(とまる)と名乗った金茶髪不良は染井と黒髪不良柊のやり取りを横目ににやにやしながら吉岡に話しかけてくる。

「いや〜マジ面白いわ克人のあんな必死な姿。今まで見たことないもん」

「はあ」

「ぷふっ、見てよあれ、ここらで最強とか噂されてる不良があーんな普通少年に振り向いてもらいたくて頑張ってる姿、あいつを慕ってる奴らが見たら驚愕だろうな〜!」

「はあ」

 一瞬この男は柊克人のことを実は嫌いなのかと思ったが、唇からこぼれる言葉とは裏腹に表情は酷く嬉しそうだ。どことなく手のかかる子どもの成長を見守る親のようにも映る。

 金茶髪不良都丸が聞いたら全力で否定されそうだから黙っておこう。

「にしてもあいつが男にね〜もう本当びっくり! あの少年、同性に好かれるフェロモンでも出てたりする?」

「さあ」

「ふうん、まあいいや。あっは、ねえねえいいこと思いついた。あっちがいちゃついてるならどう? こっちもいちゃついてみるー?」

「間に合ってます」

「だ、よ、ね〜オレも言ってから後悔した! オレ女の子好きだしさあいくら相手が魅力的だろうと男とはないわ〜」

 克人には悪いけど〜なんて笑う金茶髪不良になら言うな、と胸中毒づくのも仕方ない。本人はまるきり悪気がないのがなお腹立たしい。

「でさ、それ手作り?」

 そしてどうやら話は続いていたみたいだ。

 吉岡が口にしている弁当は確かに一目で手作りだと推測される代物だろう。どこかちらほらと失敗したような痕跡がある。例えば玉子焼きが上手く丸まらず形が歪になっていたり、トースターで焼く鶏肉の唐揚げに少し焦げ目がついていたり。食べる分には問題ないものの、確かに見た目はいまいちかもしれない。

「オカーサンの手作り、じゃないよね? んーん、分かった! それキミが作ったんでしょ〜? ねえねえ違う? 違わないよね〜そうでしょ? そうだよね?」

 このまま無視しても構わなかったがなんとなく答えるまで何度も問いかけられそうだったので、仕方なく箸を止めた。

「……そうです」

「あは、やっぱり? なんか慣れてない感じがしたんだよね〜」

 なんだこれ喧嘩売られてる?

 そんな疑惑が浮かんでも許されるはずだ。

「あ、ごめんごめん怒った?」

 よし無視しよう。

「え。ちょ無視とか酷い友達クン」

 無視。

「あれ、本当に無視? 無視なの? うわこれ無視されるとめちゃくちゃへこむわ〜」

 声質だけは傷ついた風を装い椅子の背もたれに大げさにもたれかかる。芝居がかったその仕草がいやに鼻についた。

 なるほどこの男はこうやって異性の同情を誘うのだなとどうでもいいことが脳裏をよぎった。

 まあ吉岡は関係ないとばかりに止めていた手を動かす。そんな吉岡を見て都丸は驚いたようだ。と同時ににんまりと目元に孤を刻む。

「なになに〜友達クン料理男子?」

 そういうわけじゃない。ただ今までしたこともなかった料理を始めたのは夏休みに入ってからで、まだまだ初心者の域を出ないまでだ。

 不意に制服のポケットに入っていたスマホが震える。箸を置き取り出せばメールの着信があった。

 素早く目を通せばいつもと変わらない、けれど待ち望んでいたもので。今日はいつもより少し遅かったなあと感想を抱きながら返信を打つ。

 学校が始まってから毎日昼休みに欠かさず行われるやり取りは、吉岡にとっての日常で、幸福のひとひらでもある。

 あまり表情の動かない吉岡の口元が淡くほころんでいるその物珍しさに、きっといつも近くにいる染井ならば気づいたかもしれない。珍しい! と声をあげる姿が想像つく。

 自分との会話に興味を示さずスマホに目線を落とす吉岡の姿に、都丸の口調も皮肉混じりとなる。

「あ、もしかしてカノジョのために手作り練習してる、とか?」

 なんてね〜などと冗談のように付け足した都丸の台詞には、吉岡のような周囲に埋没するタイプの人間に彼女なんか居ないだろうと確信しているような響きがあった。

 どこか見下している自覚はあるのだろうか。きっとないと思う。無自覚な辺り、たちが悪い。

 恐らくこういうところが自分に自信があり尚且つもてる人間が無意識に抱く優越感のあらわれかもしれない。

 ……などと語ってみたものの、とりあえず訊かれた質問には答えてみようか。


「そうですね」

「え」

「まあ恋人のために料理を始めたのは間違いじゃないです」


 軽く目を瞠った都丸の表情がなかなかに愉快だ。きっと肯定されるとは露ほども想像していなかったのだろう。ふむ、失礼な男である。

 自然と緩みそうになる口端を引きしめたと同時だった。


「っちょちょ、吉岡彼女居るってなにっ!?」


 今の今まで存在を忘れていた染井が驚愕の眼差しで叫んだ。思わずなのか立ち上がってまでいる。

 大げさと形容されるほどの反応だ。

 隣の黒髪不良柊は突然の染井の行動に驚いたのだろう、珍しくその鋭い双眸を丸くしているのだが、それはここに居る誰も気にしていない。

 そういえば染井もこの教室に居たのにすっかり頭から抜けていた。吉岡のあずかり知るところではない染井と柊克人の今後を左右するであろう問題などどうでもいいし、そんなやり取りにすら興味がなくただ巻き込まれただけなので心の中でひっそりと『どんまい』と憐憫の情を覚えていたくらいで、自ずと意識の外へ追いやっていたようだ。

 それに染井本人も恐怖やらなにやらで手いっぱいだったはずである。吉岡含め周囲に気を配る余裕はなさそうに見えた。

 迫る不良から必死に逃げようとする友達を忘れるなんて、と染井本人が知ったら絶望しそうなことを考えながら、吉岡は染井に視線を移した。

 そこにははくはくと口を動かす間抜け面を晒した友人が居る。その面輪に吉岡が呆れるのも無理からぬ話だ。

 なんて顔をしているんだ。そんな表情を目にしたら恋しい気持ちも冷めそうだが、あいにく柊克人からすればそんな面持ちすら愛しく思えるらしい。開いた両目はいつもの鋭利さを取り戻しつつ、染井の表情をつぶさに観察している。恋する男にとっては惚れた相手の阿呆面すら好ましいようで理解に苦しむところだ。

 さて、とりあえず話を戻そう。

「そんなのオレ聞いてないよっ!? え、ちょいつから!? え、え、だってよく話すようになってから訊いたよねオレ! 彼女居る? って! そしたら吉岡居ないって言ったよねっ! え、ってことはあのあとできたってこと!? いつ!」

 酷い! 裏切られたああ! と叫んでいる。

 うるさい。

「いや、彼女は居ない」

「……っえ!? あれ、オレおかしいっ? なんか聞き間違いしてる!? 吉岡彼女が居ないって聞こえるんだけど! なんでだっ!」

「彼女は居ないって」

「ええっ!?」

「彼女は、ね」

「んんっ!?」

「恋人は居るって言ってる」

「んんんっ!?」

 どういうことっ!? と染井は首を捻っている。


「……男、か?」


 そのときやけに響いたのは低い男の声だった。はっと発言者以外の目が向いた先に居たのは予想外の人物で。むしろ視線が集まったことに一瞬だけ動揺を見せたがすぐに隠したのはさすがだと言えよう。

「……え、克人、今なんて言った〜? オレの聞き間違いかなあって」

「……だから男だろ、そいつの恋人ってのは」

「……はっ?」

「……女じゃないってことはつまり男と付き合ってるってことだろ」

「……はああー!?」

「え、……ええーっ!?」

 金茶髪不良都丸と染井の喫驚した声が木霊する。

「え、ちょ、ま、え、あ、ええっ?」

「……驚きすぎだろ健也」

 なおも驚きが止まらない染井に柊克人のやや呆れた呟きが重なる。しかしどことなくしょうがない奴だなあと甘ったるさが滲み出ていた。

「……マジかあ」

 都丸も同様に驚愕から抜け出せないようだ。愛嬌のある垂れ目がぱちぱちと何度も瞬いている。

「よ、吉岡、い、今の、マジなのっ! 本当なのっ!?」

「まあ」

「うええええーっ!?」

 それにしてもそんなに驚くことだろうか。吉岡は胸のうちで小首を傾げる。

 そもそも今回吉岡が染井の我儘でここまで付き合わされているのは同性に告白した柊克人が発端だ。だから染井は抜きにしても友人である都丸は同性愛に寛容かと踏んでいたが、どうやら思い違いだったらしい。

 けれど嫌悪というよりも純粋な驚きの方が勝(まさ)っているようだから、単純に周りに同性愛者や同性同士のカップルが居なかったのかもしれない。

「……おい、おまえ、吉岡っつったよな」

 いきなり柊克人に話しかけられ吉岡は仕方なく視線だけを寄越した。

 未だ混乱の最中にある染井をちらっと視界に捉えつつ、柊克人はまっすぐ吉岡を見た。

 いや、見たというより睥睨したと例えた方が適切だろうか。恐らくびびりな染井なら震え上がっただろう睨みだが、向けられた吉岡はなんの気負いもなく平然としている。

 吉岡にとって柊克人は自分の境界の外側の人間だ。だからたとえどんなに強面だろうと威嚇されようと感情が揺れ動かされることなどないのである。

 そんな態度がどこか気に障ったようだが特になにを発するでもなくひとつ息を吐いた。


「こいつに……健也に気があるってことはねーよな」

「……あ?」


 ぽかんである。

 なにを言われたのか一瞬理解できず、間抜けにも呆けてしまった。不覚だ。

 だが柊克人は真剣だ。真面目に尋ねているようだ。吉岡が染井に気があるのかどうかを、至極真面目な顔で。

 あまりの的外れな心配に呆れて物も言えない。

 本当になにを言い出すんだこの男は。

「おい、なんですぐ答えねー……」

 ぎろり、と音がしそうなほど睨まれた。

 どうやらすぐに否定しなかったことが要らぬ疑惑を生んだようだ。とんだとばっちりである。

 あまりに馬鹿らしい質問に返すのも面倒になっただけだが、それがまた誤解を招いたようで、正直言おう、うっとうしい男だ。

「……ええええっ! ちょ、な、な、なに、言って……!」

「あっは、克人、急になに言い出すのさ〜」

 話題に上げられた染井も傍観者たる都丸も驚きと共にありえないだろうという雰囲気だ。

 これが正しい反応だろう。

 どこをどう見れば吉岡が染井に気があるというのか。まったくもって不愉快な話だ。

 いくら同性と付き合っているからといって、男なら誰でも構わないというわけではない。それは異性愛者でも同じだろう。好みのタイプや惹かれる要素はひとそれぞれで、性別も選別のひとつでしかないのだ。

 それなのにこんな言いがかりは甚だ不快である。

「……阿呆らしい」

「あ?」

 ぼそっとこぼれたのは紛れもない本音だ。

「てめー今なんて……」

「染井」

「っえ!? あ、なに吉岡っ」

「教室戻るから」

 すでに食べ終わった空の弁当箱を片づけて戻る支度を終えていた吉岡はさっさと教室を出ていく。ひらひらと手を振る仕草に呆気にとられたのは瞬きするほどの僅かな時間で。

「あ、うんまたあとで……」

 周りに興味のないいつもの吉岡らしいと染井は引き留めるのを忘れてしまった。

 そして我に返る。

「……ってなにオレあっさり見送ってんの!? まま待って吉岡、まだ訊きたいことあるんだってっ」

「……っおい、待て!」

 さらに驚いたのは無視されたかたちとなった柊克人だが、すでに吉岡の姿はこの教室から消えたあとだ。虚しい声のみがその場に残った。







「……まったく、染井にはあとで文句をつけてやる」

 歩きながら手の中のスマホを操作する。足の向かう先は先程染井へ告げた教室とは違う、校舎裏へと続く渡り廊下がある。校内でスマホをいじっている場面を教師に見咎められると没収される恐れがあるからだ。その点、校舎裏なら見つかりにくい。

 すぐに相手へと通話が繋がる。この時間なら相手も同じく昼休みだというのはもう何度も確認した決定事項だ。

 待ち望んでいた声はすぐに吹き込まれた。


『シン?』

「もしもし、コウ」


 鼓膜を震わせるやわらかい声はいつまで経ってもくすぐったい。ふふ、と首をすくめる。

『遅かったね、シン』

「ちょっと面倒なことに巻き込まれてて」

『うん? なにかあった?』

「大丈夫。もう抜け出せたから関係ない」

『それならいいけど』

「心配した?」

『した。こういうとき同じ学校でないことが悔やまれるね』

「あと半年の辛抱だ。そうしたら週末だけじゃなくいつでも一緒に居られる」

『うん、そうだね。でも卒業がこれほど待ち遠しいとはなあ』

「んふふ、俺も」

 普段の吉岡を知っている人間が目撃すればいったいおまえは誰だ!? と二度見されるほど醸し出される雰囲気がほんわかしている。甘いというよりほのぼのといえばいいのか。

 平時の吉岡は周りに興味を持たず積極的に関わろうとしない、ある意味浮いた存在だった。それを凡庸ながら明るい性質の染井が声をかけ友人となったことでクラスに馴染む存在となったのだが、いつもはクールというか、大人びているというか、どこか傍観者のような雰囲気を醸し出す生徒でもあった。

 ところがどうだ、今の吉岡は。

 電話の相手に甘え、発する声も甘露が滲み出ている。一度耳にすれば思わず赤くなってしまうほど、滴り落ちる蜜のようで空気が甘ったるい。

 そして本人もガードが緩くなっている自覚はあるものの、相手が吉岡にとって誰よりも大切で、替えの効かない恋人だから仕方がない。

 そう、恋人なのだ。皇輝(こうき)という名で、コウ、と普段から吉岡は呼んでいる。

 二歳年上の他校生で、しかも通っている高校は裕福な家庭の子息が多く通う私立の男子高だ。ただ金があるだけの成金が入学できる学校とは違い、文武両道を掲げた由緒正しいお坊っちゃま学校で、近隣の女子高生からの人気も高い。

 そしてなにより学校の代表である生徒会に所属する生徒は家柄、人柄、能力、容姿も含め群を抜いて突出しており、もはや狭い檻の中でのアイドルに近しいそうだ。この辺りが普通の高校と異なる点だが、だからこそ希少価値がつくのか他校の女子生徒に狙われるゆえんでもあった。

 そしてここまでくれば予想はつくだろう、この吉岡の恋人も生徒会に所属する生徒であると同時に、学校の顔である生徒会長を務める才英なのだ。


 二歳の歳の差に住む世界も違う、どこにも接点のなさそうな二人の出会いなど些細なものだった。恋人の父親が経営する会社の子会社に吉岡の父親が勤めており、その父親に連れられ出席した年始のパーティーで偶然にも親会社の経営者一族の末っ子である恋人も出席しており、そこで見初められたのである。

 要は一目惚れだ。それも目立たない人間だと自負する吉岡に、だ。

 男同士で、しかも相手は親会社の経営者一族。いくら末子だとしてもいずれ会社に有益となる婚姻を結ぶのを望まれる立場であったが、そこは恋人の手腕が遺憾なく発揮された。周囲を説き伏せ納得させ、結果吉岡との交際を認めさせたのだ。

 もともと四人キョウダイの末っ子で甘やかされていた面はあったものの、今まで大きな反抗もなく育ってきた子どもが初めて我を通したこと、また男同士という世間からの批判も理解を得られず苦労するであろう未来もじゅうぶん承知しながら、それでも吉岡を選ぼうとする気概に周りが折れたといってもいい。

 すでに上の兄たちが子をもうけていたこともあり、これ以上余計な後継者争いが起きる必要もない点も考慮され、晴れて吉岡との交際が認められたのは一学期が終わる間近のことだ。

 出会ったのは中学生の頃で、好意を伝えられた当初、吉岡は困惑し簡単には受け入れなかった経緯がある。たとえ父親の親会社の経営者一族だろうとも。

 それもそうだろう、吉岡は同性愛者ではなかったからだ。いくら容姿の整った、周囲より羨望を集める男から告白されようとも、同性というだけで恋愛対象から外されても文句は言えないはずだ。

 それまで誰かを好きになったことも想いを伝えられたこともなかったが、まさか初めての恋愛イベントが同性からの告白とは、吉岡が拒絶したくなる気持ちも無理ないだろう。

 しかしここで諦めなかったのが恋人である。周囲への説得と同時進行で吉岡へ歩み寄ったのだ。

 同性との恋愛に抵抗を抱く吉岡をありとあらゆる手で懐柔し、決して無理強いはせずけれども手を緩めることなくとうとうと訴えた上で手元に引き寄せ、徐々に理解を示すようになったところでこれ以上ないほどの愛情を示したのだ。

 その姿はこれまで恋人が見せていたスマートさはなく、思いがけないほど不器用に映ったろう。計算ではないありのままの、胸中にくすぶる恋情を切々と吐露する青年の姿に吉岡は心動かされた。

 男同士という葛藤も、周りからの奇異の目も、理解されない環境も、将来的な不安も全て飲み込んで吉岡は皇輝を選んだのである。

 その判断を下すまでの期間、少しずつ壁が崩れていった感覚を覚えている。それはまるで魔法のようなものだった。

 自分の価値観が壊され躊躇していた自分へ、必死に手を伸ばし引き寄せてくれた恋人を選んだ過去を、後悔していない。だって今、とても幸せなのだ。

 皇輝の手を取った瞬間から、吉岡はすでに嫁のような扱いを受けることになったからでもある。

 これは恋人と恋人の家族の意見が一致した結果でもあった。

 恋人という過程をすっ飛ばして身内扱いすることで、余計な悪意から守るためでもあると同時に吉岡の家族へ真摯な姿勢を示すことは必須だった。そして単純にもっと一緒に居たいという皇輝の望みを踏まえたからでもある。

 何故なら恋人が共に住むことを希望したのだ。

 とはいえ高校は別で、尚且つ恋人の学校は全寮制だ。週末は申請すれば外出許可も取れるが、さすがに毎週となると難しい。

 そこで恋人は生徒会の特権である、外出許可申請が一般生徒よりかなり緩いという項目を狙い生徒会長の役目を受けたという裏話がある。これは他人には晒せない秘密だ。

 ともあれ、気軽に週末外出許可が下りる立場を得た恋人に合わせて同じ部屋で過ごすことになったのは交際が認められた時期とほぼ同じ、夏休みに入ってからである。いわゆる週末婚状態だ。

 それまで家事などほとんど母親任せだった吉岡と、実家に家政婦が常駐する恋人との同棲生活は最初こそ大変なことばかりだったが、ゆっくりと家事を覚えていくうちに大きな問題もなく過ごせている。

 なにもかもハイスペックな恋人はやったことがない家事も吉岡と共に行うことで楽しみながら成長しているからだ。

 その反面、吉岡は不器用なのかなかなか上達しないものの、最近は少しずつ料理に手を出すようになった。美味しい手料理を恋人に食べさせてあげたいからだ。だから毎日の弁当は吉岡自身の手作りで、まだまだ練習不足が否めないがいつか恋人に手作り弁当を作ってあげたい。密かな夢である。

 ただこの関係は大っぴらにしていなかった。吉岡が恋人と結婚同然の暮らしをしていることも、その恋人が同じ男だということも互いの家族以外知らないため、今回染井たちにばれたのは予定外だったが、恥ずべきことでもないので問題はない。言い触らす真似はしないだろうが、たとえされてもそれに対処できない吉岡ではない。恋人の力を借りずとも片づけられる。

 だから恋人に先程の件は明かさなかった。一応、男としてのプライドもある。


『それより体調はどう? 風邪は治った?』

「大丈夫。微熱程度だったから」

『よかった。俺のせいでもあるからね』

「そんなこと……いや、あるか」

『でしょう?』

「反省してないな、コウ」

『ええとばれたかな』

「ばればれだ」

『うん、ごめん。でもまだ週末まで三日もあるかと思うと憂鬱だよ。シンの感触を忘れそうだ』

「仕方ない。今度思いきり抱きしめていいから。ああでもこれもいつものことか」

『俺だけの特権だからね』

「コウを抱きしめるのも俺の特権だ」

『うん、そうだね! シンだけの特権だよ』


 砂を吐くほど甘い会話だ。けれど本人たちに自覚はない。ただただ自然体なだけだ。

 なんといっても今の状況は新婚夫婦そのもの。籍はもちろん入ってないが、無意識にいちゃつくのは許して欲しい。


「でももうすぐ文化祭の時期だしこれから忙しくなるだろ?」

『うーん……やだなあ考えたくない』

「高校生活最後の文化祭なんだ、楽しむといい。それにコウが采配した文化祭を俺も見たいと思う」

『えっ、シン文化祭に来る予定!?』

「駄目か」

『駄目じゃないよ! ああでもうちの生徒にシンのこと見られるのは嫌だな』

 もちろんこれは自分の恋人が吉岡のような地味な男であるのが恥ずかしいという意味ではなく、文字どおり視界に入れたくないという意味だ。

 つまり誰にも晒したくないという狂おしいほどの独占欲である。こんな狭量な恋人が愛おしい。

「じゃあやめる」

『シン!』

 通話口の向こうで感動している様が目に浮かぶ。

 ああなんてかわいらしい恋人なのだろう。目的のために率先して動く様は誰よりも男らしいのに、時折酷くかわいく映る。そこがまた魅力的で吉岡は堪らなくなるのだ。

 思わず口角が緩んでしまう。こんな顔は皇輝に見せられない。幻滅されるのではなく、飛び上がって悦ぶだろうから。そのままの勢いでベッドまで連れ込まれてしまうだろう。

 なにせ再び寮へ戻らないといけない日曜日の夜は離れがたいほど情熱的に求められるため、昨日も学校を休んでしまったくらいだ。体力が戻ってないところに風邪をひいてしまったため、たいした抵抗もできず寝込んでしまった。それほど重くはなかったので一日休んだだけで今日は登校できたが、毎週こうでは困る。学生の本分たる勉強を疎かにしないことを条件に、実の両親から恋人との同棲を許されたからだ。

 ちなみに吉岡の両親は息子が同性に好意を持たれさらに付き合うことになった事実を、納得した上で了承した。同じ男である父親は最初こそ反対の意見を通していたが、味方だと考えていた妻が驚きつつも皇輝を支持したため最終的に折れるかたちとなったのだ。

 吉岡の母親は懐の深い性格の女性だった。たとえ自分の子どもたちが同性の恋人を連れてこようとも自分だけは味方でいたい、と普段から考えるような人物だったらしい。

 父親は知らなかったがそんな母親の心情を看破した皇輝はなによりも先に母親を味方につけたようだ。それに逆らえず、といったら言葉は悪いかもしれないが、父親も息子の交際を認めたのである。

 さらに吉岡にはひとり妹が居るが、歳が離れているせいかよく分からないまま皇輝をもうひとりのお兄ちゃんとして受け入れたようだ。これについては幸運だと捉えていいだろう。


『ああもう今すぐ学校飛び出して会いにいきたいよ』

「俺も会いたい。けど我慢だ。約束だから」

『う、そうだね……』


 学業に支障をきたすことなく生活を送ること。

 これは互いの両親から出された課題だ。

 だから優先しなければならない。


『はあー……、うん、よし。落ち着いた』

「本当に?」

『うん』

「それはよかった。コウ、偉いな」

『うっ、シ〜ン〜』

 おや、逆効果だったらしい。

「週末にちゃんと褒めてやるから、あと三日、乗りきれ」

『っうん! いちゃいちゃしようね!』

「ああ」


 愛しい旦那の手綱を握るのも嫁の役割だ。

 昼休みが終わるまであと少し。残り僅かな時間を恋人とのスマホ越しの艶言で費やそう。

 このあと吉岡は唇に乗せた笑みが消えるまで暫く時間を要することになるのだが、たいした苦労ではなかった。




=終わり=




ちなみにコウ×シンです。

受けは女々しくない嫁。護られるだけじゃなく護ります。旦那を甘やかしたい派。

攻めは嫁が好きすぎて堪らない旦那。こちらももともと同性愛者じゃなかったけど一目惚れ以降嫁一筋。

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― 新着の感想 ―
[一言] 面白い。甘いけどほのぼのしているのが、また良い。連載読みたいです!
2017/01/26 12:46 退会済み
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