第31話 聖女のお願い①
大変遅くなりました。
最近は忙しいのでこの位の更新ペースになります。
宿の人にエリスが何処にいるかを聞くと個室で待っていると言うので迎えに行くことにした。
コンコン
「失礼します。」
中に入るとソファに座りお茶を飲んでいるエリスとその後ろに2人の騎士らしき人達が立っている。この間見た騎士とは鎧が違うし別の所の騎士かな?
「お久しぶりです、シルヴァ様。今日はシズノ様やミル様は居ないのですか?」
うーん、やっぱりエリスが丁寧に話してると違和感が
…
「お久しぶりです、聖女様。今、シズノ達は部屋にいます。」
「そうでしたか。なら、シルヴァ様達のお部屋に移動しませんか?シズノ様やミル様ともお話がしたいですし。」
「分かりました、それでは行きましょうか。」
個室から出て部屋に戻る。私が先に部屋に入りそれにエリスも続く。護衛らしき騎士達も中に入ろうとするがエリスがそれを止める。
「貴方達は部屋の前で待機していて下さい。少し大事な話がありますので。」
「しかし…」
騎士達はチラリとコチラを見る。
まぁ仮にもエリスは聖女なんだし護衛の人は心配にはなるよね。
「彼女達は信頼出来る方々ですから心配しなくても大丈夫ですよ。」
「…分かりました。」
このまま言っても意見を変えないと思ったのか1度頭を下げて部屋の前に立ち始めた。
「それでは私達は中に行きましょうか。」
中に入るとおそらくシズノがやってくれたのだろう、部屋を出る前よりも片付いていた。
エリスに席を勧めてから私も席につく、その間にシズノが全員分のお茶を入れてくれた。
「シルヴァ様、そちらの方はどちら様でしょうか?」
エリスがそう言いながら何かが書いてある紙を渡してきた。なんだろう?
"外に声が聞こえない様にするのは可能ですか?"
なるほど、あの丁寧な口調に疲れたからかな?
うん、特に魔法での盗聴とかはされてないし、前に使った防音の結界でいいかな。
「もう大丈夫だよ。」
「ありがとうなぁ〜、ホンマにあの口調は疲れんねん。ところでさっきも聞いたけどその赤髪の兄ちゃんは誰なん?」
「ああ、彼はラセツって言って最近仲間になったんだよ。」
「そうなん?ウチはエリスって名前や、よろしゅうな!」
「おう!俺はラセツだ。ところでよ、さっきと全然話し方違くねぇか?」
「あんなん外向けの口調に決まっとるやないか!こっちが素や!」
この2人は結構相性いいのかな?すぐに打ち解けたみたいだ。いつの間にか温泉に入りに行こうとしてるし…
エリスはここに来た目的忘れてない?それにそんな簡単に聖女が混浴入ろうとしていいの?
あ、ラセツがシズノに拳骨くらって正座させられた。エリスは怒られてるし、ミルはミルでウトウトしてるし…なかなかカオスな空間になってしまった。そろそろ止めなきゃ
「あのさ、そこら辺にして本題に入らない?」
「そ、そうや!ウチは大事な話があって来たんや!」
シズノに怒られて少し涙目になったエリスが助かったと言わんばかりにそう言う。
シズノも一応、話を聞く姿勢になった。
「ご、ごほん!えっとな、まずはシルヴァっちは体大丈夫だったん?2日くらい寝込んどったんやろ?」
「うん、特に傷とかはなかったしね。」
「それならええけど…あ、シルヴァっちって魔王と闘ったやん?」
え、なんでエリスがその事を知ってるの?
「な、なんで?」
「なんでって、領主様の所の騎士団が探してる人とシルヴァっちの特徴ぴったりあってるやん。黒のドレス結構似合っとったで!」
な、なんで…なんでエリスがあのドレスの事を…!
「シズノっちにシルヴァっちが倒れた言うて連れてこられた時に見たんよ。」
シズノの方を見ると目を逸らされた。
「しょ、しょうがないじゃないですか。あの時は本当に焦ってたんですから、シルの格好をどうするかなんて考え付かなかったんですよ…」
う、そう言われると何にも言えない…
「あ、この事はまだ伝えてないけどこのまま言わない方がええの?」
「うん、言わないでくれたら助かるかな。」
「分かった。話を戻すけど、シルヴァっちはどうやって魔王を撃退したん?」
「いや、撃退ではないかな?」
「撃退じゃない?まさか倒したん!?いや、でも魔王は1人じゃ倒せるものじゃあらへんし…」
そうブツブツと呟くエリス。
まぁ普通の人じゃ1人では倒せないよね。どうやって説明しようかな…
そう考えているとシズノが小さな声で話しかけてきた
「あの、どうするんですか?ラセツさんがその魔王だとは言えないですし…」
「うーん、何とかしてみるよ…」
未だにブツブツ言っているエリスに話しかけてみる。
「エリス」
「…ん、なんや?」
「魔王とは引き分けだったんだよ。それで帰っていったんだ。」
「いや、あれは完全にむぐっ…」
シズノが何か言おうしてるラセツの口を塞いだ。
ナイス、シズノ!
「ま、魔王と引き分け?…ホンマに!?」
「う、うん。」
「今まで勇者以外の人間で1人で魔王と戦って引き分けた人なんて居らんよ!?」
「ほ、ほらあれだよ、魔王も多分調子が悪かったんだよ。うん、そういえばお腹痛そうにしてた気がするなー。」
「シル…言い訳が下手すぎです…」ボソッ
そ、そうだよね…流石にエリスもこれじゃ信じてくれないか…
どうしよう。
「そ、そうなん?魔王ってお腹痛かったら引き分けにできるものなん?」
あれ?なんかこれでいけるっぽいぞ?
「そ、そうだよ!エリスだってお腹が凄い痛い時、そんなに激しく動けないでしょ?それと同じだよ!」
「そ、そうなんかぁ。魔王もお腹痛くなるものなんやな…」
「うんうん、魔王も生きてるんだしそんな事もあるよ!」
「ほー、じゃあシルヴァっちは運が良かったんやな!」
やった、やりきった!何とか誤魔化せた!
…こんな雑な言い訳で信じちゃうなんてこの先悪い人に騙されないか心配だよ…
「あ、お腹が痛かったとは言え魔王と引き分けになったのは凄いことなんよ?それでな、お願いがあるんやけど…」
エリスの将来を心配しているとそんな事を言ってきた。お願いかぁ、めんどくさい事じゃ無ければいいけど…
「お願い、ですか?それはさっき迄のお話とは何か関係があるのですか?」
「関係はあるっちゃある、シルヴァっちが魔王と闘って生き残ったから頼もうと思った訳やし。」
「そうですか、それでお願いとは?」
「えっとな、王都までの護衛を頼みたいんや。」
エリスは簡単に納得していましたが、それはただ単にエリスがアホだからです。
例え、腹痛だったとしても魔王ランクの強さを持つ者ならAランク冒険者くらいなら束になっても返り討ちにあいます。




