第17話 戦力増強
少し長めです。
「あ、おかえりなさい。」
宿に移動転移するとシズノがステータスを見ていた。
ミルは長旅の疲れからかぐっすり眠っている。
「何してるの?」
「最近ステータスを確認していなかったので、今あるスキルの確認をしていたんです。」
確かに最近は見ていなかったな、私も見てみよう。
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【種族】
吸血鬼(始祖)
【名前】
シルヴァ
【ユニークスキル】
覇者の威圧
【種族スキル】
魅了
超再生
血液魔法
霧化
【スキル】
覚醒
無詠唱
痛覚無効
双剣術
体術
言語翻訳
【称号】
・最初の魔王
・魔導を極めし者
・転生者
・毒草に愛されし者
【所持奴隷】
・ミル
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なにこの毒草に愛されし者って!
・毒草に愛されし者・・・毒草を見つける確率が大幅に上がる。
何これいらないよ…
後は所持奴隷っていうのが増えてるだけだ。
「シズノは何か変化あった?」
「私のは特に変化はありませんでした。ただユニークスキルの料理人の効果を調べていたのですけれど…」
「確かにあんまり調べてなかったね。何か分かった?」
「とにかく見てみて下さい。」
・料理人・・・自分が食材だと思ったものを自由に料理出来る力。また、食材の保存、料理の時間を短縮、持った調理器具を最高の状態に戻す事が出来る。
「へぇー、まさに料理人って感じのスキルだね」
だから料理の時間が短かったのか、納得!
しかもこれからは食材ならシズノも持ち運び出来るんだ。
「あの、自分が食材だと思ったものを自由に料理出来る力ってあるじゃないですか。」
「うん、あるね。それがどうかしたの?」
「これはなんで〈物〉じゃなくて〈もの〉なのかなって思いまして…」
別に大した違いじゃ無いと思うんだけどなぁ…
シズノは真面目だから気になったのだろう。
「実験してみたんです。そしたら包丁でベットが切れました…」
ん?おかしいな、包丁でベットが切れたって聞こえたんだけど…耳の調子が悪いのかな?
「ごめん、耳の調子が悪いみたいなんだけど…もう一度言ってもらえる?」
「包丁でベットが切れました…」
「いやいやいや!嘘だよね?だってベットも何ともないし!」
「直れ!って思ったら直りました…」
何それ…チートじゃん…
待って、もしかして
「あのさ…もしかして自分が食材だと思った者も料理出来るとか言わないよね?」
「えっと分かりません…」
「分かった!私で実験してみて!」
「な、何を言っているんですか!?」
「もし仮に出来たとして、いつかうっかりその力が発動してしまったら大変な事になるでしょ!だから私で実験してみて!私は痛みも感じないし、すぐに再生するから!」
「で、でも…」
「いいから!別に首を切れって言ってるんじゃ無いんだし、腕で大丈夫だから。目を瞑っててもいいし。」
「わ、分かりました…」
シズノが目を瞑りブツブツ言い出した。
包丁握ってブツブツなんか言ってるのって怖いな…
「シルは食材、シルは食材、シルは食材!いきますよ!えい!」
スパッ!
私の腕は一回転しながら床に落ちた…
「うん、切れたね。骨までスッパリだよ。」
人?の腕を切るにはそれなりに力が必要な筈なのに特に抵抗もなく切れていた。
これは間違いなく食材だと思った者も切れるな…
「シルの腕をき、切って、し、しまいました…」
「大丈夫だってすぐに治…らない?」
あれ?腕が治らないぞ?
それに床に落ちてる腕が動いてる。…うん、手を握ろうとしたら落ちている手がグーになる。きもちわるっ!
「なにこれ!神経繋がってるの!?シズノ!治して!」
「治れ、治れ、治れ、治れ!」
ヒューン、ピタッ!
うわっ!腕が飛んできてくっついた…
動かしてみるが特に異常はない…
「よかったー、治ったよ!」
「な、治ったよ!じゃありません!こ、怖かったぁ」
「まぁまぁ治ったんだしいいじゃん。それにユニークスキルの効果も分かったことだし。」
「そういう問題ではありません!」
「で、でもユニークスキルの効果が分からないともっと酷いことになってたかもしれないんだよ?」
「それはそうですけど…」
「こういう事は今回で終わりにするからさ。」
「むぅ、分かりました。今回だけですからね。ところでちゃんとエントリー出来たんですか?」
「うん、ギリギリだったけど出来たよ。」
「なら良かったです。あの、夜まで何をしますか?」
「武器屋に行かない?結局フェステでは買えなかったし。」
「そうしましょうか。ミルを起こして行きましょう。」
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宿を出たはいいが武器屋の場所を知らなかったため、ギルドの受付で王都で1番武器屋を紹介してもらった。
ただ受付の人が店主が気難しい人だから気を付けた方がいいと言っていた。
「ここが王都で1番の武器屋か。」
「外観は普通ですね。」
2人で話していると店員さんがやってきた。
「いらっしゃいませ。どのような武器をお探しですか?」
あれ?聞いていたのと違くて気難しいそうでは無いけど…
「えっと、私は双剣です。」
「私は弓と短剣ですね。」
「弓と短剣でしたらこっちにあります。ただ双剣は…」
「双剣は無いんですか?」
「いえ、あるにはあるんですが親方が…」
「親方?」
親方って誰のことだろう?
「騒々しいぞ!カール!」
そう怒鳴りながらきたのは背丈は低いが屈強そうな男だった。
店員さんカールって言うんだ。それにこの人が親方かな?
「すいません!親方!この人が双剣が欲しいって言ってたもので!」
「双剣が欲しいだと!?どこのどいつだ!あの剣は俺が認めた奴じゃないと売らねぇって言っただろ!?」
「あ、私です。」
「てめぇか!?また噂を聞きつけて来た輩じゃ無いだろうな!?」
噂?何のことだろう?
「噂ってなんですか?私達はギルドで王都一の武器屋を紹介してもらっただけなんですが…」
「なに?本当か?」
「ええ」
「すまなかった!」
急に親方が深く頭を下げた。特に謝られる事はされていないので慌てて止める。
「ちょっとやめて下さい!私達は気にしていませんから!」
そう言うと頭をあげてくれた。
「すまなかった。」
「いえ、本当に大丈夫ですから。それにしても噂ってなんですか?」
「…俺の最高傑作の剣だ。1年ほど前に珍しい黒龍の爪を2つも手に入れてな、その素材を使って双剣を作った。」
「その剣がどうしたんですか?」
「俺の最高傑作だったからな、その剣に相応しい奴に使って欲しかったから表には出してなかったんだ。それなのに何処から嗅ぎつけたのかその剣が欲しいって奴が現れた。それを断っているうちにその剣を手にしたものは黒龍の力が手に入るとかいう噂が出来ちまってよ…」
なるほど、それから黒龍の力を手に入れようと色んな人が来たわけか…
「勿論そんな力はあの双剣にはねぇ。けどな前に双剣を盗もうとした奴がいたが双剣を掴むことが出来なかった。弾かれたんだよ双剣を掴もうとしたその手が…」
手が弾かれた?そんな事があるのか?
「あの、その双剣見せてもらえませんか?」
「なに?」
「いや、別に盗もうって訳じゃ無いんです。ただ仲間が鑑定を使えるので何か分かるんじゃないかと思いまして…」
「鑑定が使えるのか!なら是非見てくれ、俺もあの剣について知りたい。ついて来てくれ。」
奥に入ると工房の様な所に来た。
「ここだ。」
ある部屋に入るとそこには台に置かれた漆黒の刃を持つ双剣があった。
「シズノ」
「はい。…!」
「どうした!?何か分かったのか!」
「見てください。」
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【名前】
龍爪・黒帝
【種類】
魔剣
【説明】
上位の黒龍の爪から出来た双剣。その刃は龍の鱗でさえ切り裂く。自らが認めた主で無ければ掴むことすら出来ない。
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「ま、魔剣だったのか…」
「ねぇちょっと掴んでみていい?」
「今のを見ていなかったのか?認められなければ掴むことさえ出来ないのだぞ?」
確かにそうだ、けど
「なんかいけそうなんだよね」
「何を根拠にいっているんだ?」
「勘、かな?」
黒帝を握る、すると抵抗があったが魔力を込めるとすぐに収まる。
「ほら、出来たよ。」
「な、なに?魔剣にいとも容易く認められただと!?」
「そんなに簡単だったんですか?」
「うん、魔力を込めるたらすぐだったよ。」
「有り得ん…魔剣に認められるには相当な力が必要な筈だ…」
「私が強かったって事だな」
少しドヤ顔でそう言うと親方はため息をついた。
「はぁ…その剣はお前にやろう。金は要らん」
「お、親方!何を言っているんですか!?」
「黙れ!俺がこいつを気に入ったんだ!こいつは今までの強い武器を手に入れて成り上がろうとする奴らとは違う。魔剣は強いだけでは決して認めない、自らを大切にしてくれる奴では無いと駄目だ。そしてこいつは魔剣に認められた、お前なら俺の最高傑作を大切に使ってくれる。どうか貰ってくれ…」
「丁度新しい剣が欲しかったしありがたく貰っておこうかな、私もこの剣が気に入ったし。」
「あの、シルの剣が決まったのなら次は私の武器が欲しいのですけれど。」
「あ、弓と短剣ですよね。」
「はい、そうです。」
「えっと弓は今これしか無くて…」
「アッキヌフォートですか?見る限りではとてもいい弓だと思いますが…」
「はい、この弓は矢が要らないんです。ここの魔石に魔力を注いでもらうと魔力が矢になるんです。」
「それは凄いですね」
「はい、なので値段が30万ゴールドになりまして…」
「さ、30万ゴールドですか!?」
た、高いなけど買えない金額じゃない。
よし、いつもシズノにはお世話になっているし
「その弓買います。」
「し、シル!30万ゴールドなんですよ!?」
「大丈夫だって!また稼げばいいんだしさ」
「では30万ゴールド、確かに受け取りました。」
カールから弓を受け取りシズノへ渡す。
「あ、ありがとうございます。」
シズノは手がぷるぷる震えながらも嬉しそうに受け取った。
「それでは私達は帰りますね。」
「おう!剣のメンテナンスはしっかりしろよ!また来いよな!」
こうして新しい武器を手に入れた私達は宿に戻った。
因みにミルは飽きてしまったのか最初の方で寝てしまっていた。




