第15話 ギルドマスター
「ふむ、全盛期より衰えたとはいえワシの拳を躱すか…」
「どういうつもりかな?」
また殴りかかってくることを警戒しながらそう問いただす。
「そう殺気立つな。もしよけられなかったとしても寸止めするつもりだった。」
嘘つけ!目が完全に本気だったじゃないか!
「まぁとりあえず席に着くといい。今、茶を用意しよう。」
ギルマスは席を勧めお茶を入れだした。
もう攻撃はして来ないようなので席につく。
ギルマスがお茶を入れ席につく。
「まずは自己紹介からだな。ワシはここのギルドマスターをしているゲオルグだ。」
「私はFランク冒険者のシルヴァだ。」
「私はFランク冒険者のシズノ・タカシマです。」
「ミルはシルねぇの奴隷です!」
「分かった。ところでお前ら、昨日、水熊を売っただろ
う?あれは誰が狩ったものだ?」
そう聞いてきたが隠すことでもないので素直に話す事にする
「あれは私が狩ったんだけど何か不味いことでもあった?」
品質が駄目だったのだろうか、でも昨日は特にそんな事は言ってなかったけどなぁ
「水熊はBランクの魔物だ。それもBランクでも上位の力がある、Bランクパーティーでも下手をすれば全滅するレベルの魔物だ、決してFランク冒険者が単騎で勝てるものでは無い。」
やばい、あの熊そんなに強かったのか?全然苦戦しなかったからもっと弱いと思ってた…
「まぁ、お前の正体は見当がついている…仮面の英雄だな?」
ビクッ!
な、なんでそれを知っているんだ?今の会話の内容にそう思う根拠は無いはずだけど…
「…やはりそうか。お前が最初に決闘をした時に魔法を使っただろう?その時感じた魔力の性質と仮面の英雄が魔法を使った時に感じた魔力の性質が同じだった。」
ま、魔力の性質?なんだそれ、そんなものからバレるなんて!
「仮面の英雄ってなんです?」
「それはね…」
ちょっと待てシズノ!ミルにその話をするな!
ミルもそんなに輝いた目でこっちを見ないで!
「それを私に教えてどうするつもりですか?」
冷静を装いギルマスにそう聞き返す。
「どうもせんよ。ただあそこまでの力を持つものが何時までもFランクに留まっているのはギルドとしてもよろしくない。そこでお前らのランクをCまで上げようと思ってな。」
「私もですか?」
「ああ、お前もなかなか強そうだからなついでだ。」
ついでって…結構適当だな…
「なんでCランクなんだ?」
「それは指名依頼が出来るのがCランクからだからだ緊急時はお前に依頼をしようと思ってな。それと仮面を被って顔を隠すってことはあまり注目を浴びたくないのだろう?ならワシらこの秘密を隠しておくから時々ワシのお願いも聞いてほしいと思うのだがどうだろう?」
このジジイいい性格してるな…」
「口に出てるぞ。まぁいい、ところで早速お願いがあるんだが…」
「何をさせるつもりだ?」
「そう警戒するな、ただ、2週間後に王都でやる武闘大会に出て優勝してもらいたいんだが…」
武闘大会で優勝?なんで私達がやらなければいけないんだ。
「なんで私達が…」
「シルヴァ、お前は全盛期のワシよりも強いだろう。恐らくSSランクにも引けを取らない強さだ。これは長年冒険者として生きてきたワシの勘がそう言っている…だからこそ優勝が可能なお前に頼んでいる!」
今までとは違う真剣な表情でそう言うギルマス。
「私くらいの強さでないと駄目だと?」
「ああ、そうだ。他のSSランクの奴らはこの大会には出ないことは分かっている、だからお前が出れば優勝出来るんだ!」
「なんでそこまで優勝に拘っている?」
「それはな…」
「それは?」
「今回の大会の優勝時の副景品として最高級の酒が出ているからだ!!!」
「…は?酒?」
「そうだ!100年に1回しか実のできない木がある。その木の実から作られた酒は100年分の旨みが凝縮されているという!1度でいいから呑んでみたかったのだ!」
「はぁ!?そんな事のために私は大会に出なきゃいけないのか!?」
「そんな事ではない!!重要な事なのだぞ!」
「嫌だ!そんな事やりたくない!」
「ふふーん、いいのか?断ればお前が仮面の英雄だと広めてしまうぞ?」
このクソジジイめ!滅茶苦茶イラつく顔してやがる!
「やればいいんだろ!?」
「最初からそう言えばいいんだ。ところでミルちゃん飴はいらんか?」
このジジイ一気に顔がニコニコし始めたぞ。笑ってるつもりだろうが結構怖い。
「え、えっとありがとうございますです?」
「おお!いい子だなぁ…ウチの子にならんか?」
「強面ジジイ!ミルはウチの子だ!お前には絶対やらん!」
「こ、強面…」
ジシイがショックを受けてる間にさっさと退散する
。
「大会の件は了解した、明日にでも王都に向かう。ただ絶対ミルはやらないからな!」
そう言い残し部屋から出た。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーゲオルグside
「ふぅ、行ったか。」
シルヴァ達が部屋から出ていったところで大きく息を吐く。その背中は大量の汗が吹き出ていた。
「なんだあの殺気は…あれなら昔殺りあったドラゴンの方がよっぽどマシだぞ…」
会話をしている最中は隠していたが膝が笑って仕方なかった。
「あれ程の力を持つものが注目を浴びない筈がない、これからどうなるのか…」
ゲオルグは未来の事を考えながらため息をついた。
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ギルマスの部屋から出て、今はギルドが経営している酒場で王都の事で話し合っている。
「王都に行くのに馬車で1週間かかるんだよね?馬車持ってないんだけどどうしよう…」
「馬車を借りるとかはどうですか?」
「馬車運転出来ないんだけど…シズノは?」
「私も出来ません…」
「ミルも出来ないです!」
シズノも出来ないよね。ミルは…うん、知ってた。
2人で頭を悩ませていると
「そこの人達!王都に行きたいのか?」
声がした方に振り返ると同い年くらいの男女3人組がいた。
「はい。そうですけど、そちらは?」
「俺はカイル、剣士をしている。よろしくな!」
「僕はルーク、魔法使いだ。よろしく。」
「私はミリルです〜。治癒士をしています〜。よろしくね〜。」
赤髪の活発そうなのがカイル、水色の髪の落ち着いた雰囲気なのがルーク、金髪でのんびりしてそうなのがミリルらしい。
「私はシルヴァだ。剣士と魔法使いをしている。よろしく。」
「私はシズノです。弓使いをしています。よろしくお願いしますね。」
「ミルはミルです!よろしくです!」
「シルヴァにシズノにミルだな。王都に行きたいんだよな!俺達と依頼を一緒に受けようぜ!」
なぜ王都に行きたいのに依頼を受けるんだ?
「カイル、彼女達が困っているだろ。ちゃんと説明をしろ。」
「そうですよ〜。説明はしっかりしないとダメですよ〜?」
「そうだったな!」
彼等達の説明を聞くとこういう事だ。
彼等が王都までの護衛依頼を受けようとしたが、依頼を受けるには条件があるらしく、その条件がパーティー2組からという事らしい。
「だから王都に行きたがっている私達に声をかけたと…」
「そういう事だ。」
「ちなみにクエストはいつからなんですか?」
「明日からです〜」
明日かそれなら丁度いい
「その話にのらせてもらおう。だが依頼人と顔を合わせなくていいのか?」
「大丈夫らしいぜ!依頼人も急いでるらしいしな!」
「ならいいけど…」
「それじゃあまた明日な!」
「また明日です〜」
「おい!2人共、勝手に行くな!あと、明日は北門に6時に集合だ。それでは失礼する。」
ルーク大変そうだな…
「さて、明日の準備するか。」




