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第12話 奴隷を買いましょう

前半に前回の場面のシルヴァ目線があります。

ゴブリンの件が終わった次の日ギルドへ行くと


「シルヴァさん、シズノさんおはようございます。」


「おはようございます。」


「リリーさんおはようございます。」


「はい。ところで昨日の見ましたか?」


「昨日のですか?」


「はい!仮面の英雄ですよ!」


「ッ!?ゴホッ!ゴホッ!」


「それって昨日ゴブリンの軍勢を倒したっていう人ですよね?」


「はい!ゴブリンの軍勢を前に絶望している冒険者の前に颯爽と現れて一撃で軍勢を消し去り名前も言わずに去っていく…なんてカッコいい方なのかしら!きっと仮面の下もイケメンに違いないわ!」


「きっとそうですよね!」


シズノはニヤニヤしながらこっちを見てくる。

しかもなんか話盛ってないか?だって実際は……


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壁の上に来てみたけど結構高いなぁ。


「お、冒険者が集まってきた。あれはシズノかな?黒髪は1人しかいないし見つけやすいな。」


あとはゴブリンの軍勢が街に近づいて来たところで足止めをしてから攻撃すればいいんだよね。


「お、ゴブリンが来た。うわぁ、うじゃうじゃしてる。気持ち悪いな。」


思ってたより多いけど大丈夫でしょ。


「そろそろ移動するかなー」


転移魔法を発動させて地上に降りる。


ありゃ少し位置ミスったかな?まぁ、いいか。


「おい!てめぇ!死にてぇのか!戻ってこい!」


ん?なんか言われてるけどゴブリンの足音であんまり聞こえないな…

うわっ!結構近くまで来てる。


「氷のアイス・ウォール


よしこれで足止めは成功っと、あとは攻撃だけだ。

なんか冒険者達がざわざわしてるけどなんだろう?

まぁいっか。


「地獄のヘルフレイム


あ、やばい。ちょっと魔力込めすぎたかも…まぁいいか。冒険者側に被害がいかないようにしてっと。


えい!


ドゴォォーーーン!


うわぁ…すっごい威力……まぁやっちゃった事は気にしても仕方ない。皆を守る為だし許してくれるよね?

光が収まってきた。……すんごい地面抉れてるし、所々ガラスみたいになってるんだけど……


「「「「「「「「ウォォォォ!!!」」」」」」」」


なんか叫んでるし、怒ったかな?転移魔法で逃げちゃお。


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こんな感じだったしなぁ……なんか皆が仮面の英雄だ!とか言ってると恥ずかしくて仕方ない。


「どうしたんですか?シルヴァさん、顔が赤いですよ?あ!もしかして…」


やばい、もしかしてバレた?


「仮面の英雄に惚れちゃいました?まぁ、分かりますよ、強いですし、カッコイイですし!シルヴァさんも乙女なんですねぇ。」


「アハハ、ソウカモシレナイデスネ」


なんで自分に惚れなきゃいけないんだ!


「あの、その話は置いといて、今日はクエストが貼ってないみたいなんですが?」


「ええ、昨日、仮面の英雄の攻撃で地面が抉れてしまったのでそこの復旧作業をギルドの方と土魔法の使い手の皆さんでしているんです。なので今日は急ぎのもの以外は取り下げているんです。」


「そうだったんですか。なら私達は帰りますね。」


「あ、その前に売っときたいものがあるんだけど…」


「売却なら専用のカウンターがありますので、そちらでお願いします。シルヴァさん!私は応援してますよ!」


「アハハ、アリガトウゴザイマス」


「じゃあ行きましょうか。」


専用のカウンターに着いたけどギルド員がいないな。


「すいませーん。売却に来たんですけどー」


「はいはい。今行くからちょっと待ってね!……お待たせ!何を売りたいんだい?」


いかにも優男って感じの人が来た。


「えっと結構大きいのでここに入るかどうか…」


「ん?ああ、魔法鞄マジックバックか。それじゃあ奥に来てね。」


魔法鞄マジックバック?後で調べてみよう。


「さぁ、ここなら大丈夫だろう。出していいよ。」


「分かりました。よっと」


最初の森で出会った熊を出す。


「こ、これは!もしかして水熊ウォーターベアじゃないかい!?しかもこんなに大きい個体初めて見たよ!」


「はい。そうですね。」


「やっぱり!この魔物の肉はとても美味しくて高級なんだ!素材の保存状態もいいし、これなら全部で50万ゴールドはするね!」


50万ゴールド!?500万円じゃないか!水熊ウォーターベア恐るべし…


「どうする?全部売るかい?」


「お肉って高級品なんですよね?」


「そうだとも!臭みもなくて噛む度に溢れる肉汁がたまらないんだ!昔食べた事があるけど美味しかったなぁ……」


「じゃあ!4人分位貰ってそれ以外売ります!」


「本当かい!だったら45万ゴールドだね。」


お肉4人前で50万円だと…確かに高級だ。


「はい。45万ゴールド。じゃあ僕はこれから解体しなきゃいけないから。少し待っててくれるかい?」


「分かりました。」


そして30分が経ち


「終わったよ。」


「解体ってこんなに早いものなんですか?」


「まあ解体スキルを持ってるしね。はい、これが水熊ウォーターベアの肉ね。」


「ありがとうございます。」


鞄にしまう振りをして空間魔法で作った亜空間にしまう。


「それじゃあ帰りましょうか。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


宿に着いて早速お金の利用方法について話し合う。


「やっぱり武器や防具に使った方がいいと思うんです。私達の装備は最低限のものしかありませんし。」


「確かに、でもやっぱり情報を集める為にも使いたいんだよね。」


「情報、ですか?」


「そう。だって私達はこの街がある国の名前やこの世界の常識が分かっていない。これはとても危険な状態だ。」


「た、確かに。でもどうやって情報を集めるんですか?」


「それについてはもう考えてあるんだ!それは……奴隷だ。」


「奴隷……ですか。」


「ん?どうした?」


「いえ、前に盗賊に捕まった時この後奴隷にされて貴族に売られると言われて、それを思い出してしまいました。」


「あ、ごめん。」


「いえ、もう大丈夫ですので。」


「そう?それならいいんだけど。とりあえず奴隷を買ったあとに装備を整えるって事で大丈夫?」


「はい。では今から行きますか?」


「そうだね。行こうか。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ここが奴隷商か。」


「意外と普通の見た目ですね。」


「とにかく入ろうか。」


ガチャ


「いらっしゃいませ。」


「ここは奴隷商で間違いないか?」


「はい。そうです。今日はどのような奴隷をお探しで?」


「奴隷を買うのは初めてでね、どのような奴隷がいるか分からないんだ。」


「それでしたらご説明させていただきます。奴隷の種類は一般奴隷、戦闘奴隷そして違法奴隷がいます。一般奴隷は金に困った人達が身売りをしたり、家族に売られたりしてなります。戦闘奴隷は一般奴隷の者が志願してなります。戦闘奴隷は基本、元冒険者が多いですね。違法奴隷は自分の意思ではなく無理矢理奴隷にさせられた者達です。」


「この店に違法奴隷は?」


「いる訳ございません。私はこの商売に誇りを持っています。」


「そうか。済みません、一応確認したかっただけなんです。」


「いえ、お客様の気持ちも分かりますので。それで、どのような奴隷を?」


「一般奴隷でいいよね?」


「はい、そうですね。あ、ただ男性はちょっと…」


私はどっちでもいいのだけれど、シズノは男は嫌らしい。


「承知しました。それではご案内します。こちらです。」


「ここは女性の一般奴隷の部屋ですね。気になる者がいましたら声をかけてください。」


そう言うとその部屋から出て行った。きっと一個手前の部屋で待っているのだろう。

檻には5人の女性がいる。


「シズノどう?」


「えっと、基準がよく分からないんですが…」


「誰か気になる子はいない?」


「えっと、でしたらあの子はどうでしょうか。」


シズノが指を指している方を見ると獣人の子供がいた。


「あの獣人の子?」


「はい、そうです。」


2人でそっちを見るとビクッとした。


「すいませーん!」


「気になる者が見つかりましたか?」


「はい、あの獣人の子が気になるんですけど…」


「ふむ……あの子、ですか。分かりました。1度別室で奴隷と話してみますか?」


奴隷商は少し思案してからそう言った。


「はい、是非。」


別室に行くとソファが2つと机が置いてあった。


「ではこちらにお掛けになってお待ちください。」


使用人らしき人が紅茶を置いて部屋を出ていく。


紅茶を飲むとふわりといい香りがする。


「うん、美味しい紅茶だ。」


「そうですね。」


「ところでなんであの子が気になったの?」


「…あの子、呪いがかかっているんです。」


「の、呪い?」


一体何の?と聞こうとすると


「すみません、お待たせしました。では後は3人でお話下さい。失礼します。」


商人と共に獣人の女の子が来た。

商人はそう言い出ていくと女の子はどうしていいか分からないようであわあわしている。

改めて見ると、とても可愛い子だ。白い髪は肩にかからないぐらいまであり、目は蒼く綺麗な色をしている。


「座っていいよ?」


そう言うと床に座ろうとしたので慌てて止める。


「ちょっ!ソファ!ソファに座って!」


そう言うと不思議そうな顔をして恐る恐るソファに腰を掛ける。


「それでどんな呪いがかかってるの?」


シズノにそう聞くとまた女の子はビクッとした。


「えっと、声が出なくなる呪いです。どうやらこの呪いはかかる部位によって効果が変わるらしく、この子は喉にかかっていますね。」


ふむ、目に魔力を込めてから見ると喉のところに黒いモヤみたいなものがある。でもこれなら解呪出来そうだ。


「うん、確かに呪いにかかってる。でもこれなら解呪出来るよ。」


「本当ですか!」


「うん。あのね、私には君のかかっている呪いが解ける。でも今この場でその呪いを解くと騒ぎになってしまうかもしれない。だから私達と一緒に来てくれるかな?あ、でも断ってくれても構わない。その場合でもちゃんと呪いは解くから。その代わり少しの間喋らないでいてもらって自然に治ったって演技をしてもらう事になるけど。」


そう女の子に言う。

すると女の子は目を輝かせて頷いてきた。


「それは一緒に来てくれるということかな?」


女の子は頷く


「よし。じゃあ今日から君は私達の仲間だ。」


商人を呼び奴隷の契約を結んでもらう。


「契約は1番自由度の高いものでいいんですね?」


「はい。」


「それではシルヴァ様、血を1滴この子の背中に垂らしてもらえますか?」


「分かりました。」


ナイフで指を切り血を背中に落とす。


商人が呪文をブツブツ唱える


契約コントラクト


血が落ちたところを中心に光り出す。

光が収まるとそこには小さな魔法陣があった。


「これで契約は終了です。主人の命令を無視したらこの首輪が締まりますので注意して下さい。」


「分かりました。」


「首輪に何か不具合が有ったら来てください。新しい物と取り替えますので。それでは、首輪と合わせて金貨8枚です。」


亜空間から金貨8枚を取り出して渡す。


「奴隷ってこんなに安いものなんですか?」


人を買って80万円は安いだろう。


「いえ、実はこの子は呪いのせいで買い手がいなく、もう少ししたら鉱山での強制労働だったのです。私としてもこんなに小さな子が辛い目に合うのは嫌ですから、この子を救ってくれた貴女達へお礼にと少し安くしておきました。」


「そうだったんですか。ありがとうございます。」


「いえ、お礼を言うのは私の方です。今回はありがとうございました。」


「お礼の言葉、受け取ります。それでは、さようなら。」


「またのお越しをお待ちしております。」


そうして奴隷商を後にした。



次回も奴隷の子の話です。


12/1に魔法の表記を変更しました。

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