第10話 地味に危ない状況なんじゃ?
前回より短いです。
「お疲れ様でした。薬草が10束で大銀貨1枚、ゴブリン討伐が10匹ですので銀貨9枚ですね、ご確認ください。」
や、安い。1日やって日本円で約19000円…猫の尻尾亭1日分にしかならない…
「や、安いですね…」
「これでもFランクでは多い方なんですよ?薬草は多くて4束位ありましたし、群生地でも見つけたんですか?」
「そうなんですか…まぁ、そんなところです。」
「運が良かったんですね。それにしてもゴブリンが10匹とはとてもFランクとは思えませんね。」
「そうなんですか?」
「はい。Fランクだと多くて2匹までしか同時に対峙出来ませからね。」
それだったら、他のFランク冒険者があの群れに会ってたら不味かったんじゃ…
「そしたら10匹の群れって大きかったんですか?」
「…!シズノさん、今なんて言いました?」
「?10匹の群れって大きかったんですか?と」
「いくつかの群れを討伐したのではなく1つの群れで10匹だったんですか?」
「は、はい。」
「どうかしましたか?」
「ゴブリンの群れは通常、多くて5匹までです。それが10匹となると統率者となる個体が出て来て村ができているのかも知れません。」
「統率者となる個体、ですか?」
「はい、ゴブリン将軍もしくは、ゴブリン王まで出ているかも知れません。」
「それはどれ位の強さなんですか?」
「ゴブリン将軍はCランク、ゴブリン王はBランクです。」
「今この街にいる最高ランクはいくつなんですか?」
「Bランクの方がお1人です。Aランクのパーティーが他のクエストでこの街を離れていて…」
「でもBランクの方がいるんでしたらゴブリン王は倒せるのでは?」
「違います。Bランクの魔物はBランクの4人パーティーで倒せるものです。とても1人では…」
あれ?これって結構やばい状況じゃ…
「あの、もしかして危ない状況なのでは?」
「はい。ですのでギルドマスターに話をしてきます。もしかしたら他の街から高ランクの冒険者を送ってもらえるかもしれません。それでは失礼します。」
リリーさんは急いで奥に入っていった。
「あの、私達も何かお手伝い出来るのでしょうか?」
「その話は宿に帰ってからにしよう。」
「?分かりました。」
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宿に着き部屋で装備を外し終わると
「さっきの話なんですが…」
「ああ、この件、私1人でも片がつくかもしれないんだよね。」
「え?それって…」
「実はさっきのクエストでも本気出してないだよね。多分、本気を出したらこの街を消し炭にすることも出来る。」
「街を…消し炭に?」
「うん、私は古代の魔王の体に魂が入り込んでいる状況なんだ。だから力の使い方もある程度体が覚えている。この力を全力で使えば最悪大量の人が死ぬ事も分かる。」
こんな話をしたらシズノは私の元から離れるだろう。誰だっていつ爆発するかも分からない爆弾を近くに置いておきたく無いだろう。
「す…凄いじゃないですか!これでゴブリンをやっつける事が出来ますね!」
あれ?
「こ、怖くないの?」
「ん?何がですか?」
何がですかって…
「いや、私の事が怖くないのかなって」
「何でですか?確かにこの大きな街を消し炭に出来る力は怖いですがシルヴァはそんな事をしないでしょう?」
「それは絶対しないけど…」
「だったら怖がる訳ないじゃないですか。シルヴァは私を助けてくれた恩人ですし、初めての友達なんですから。」
…………
「ありがとう。シズノ」
「あれ?泣いてますか?」
「泣いてない!」
これは涙じゃなくて汗だ。
ゴシゴシ
「あ、涙拭きましたね。」
「泣いてない!この話は終わり!今はゴブリンの話でしょ!」
「ふふふ、そうですね。」
「なんで笑うんだよ!とにかく!ゴブリンをどうするか!」
「そうですねぇ。先にゴブリンの村に行って殲滅するとかはどうでしょう。」
「それでもいいんだけど、誰が倒したか分からないとゴブリン王達より強い魔物が出たって勘違いされるかも。」
「でしたら、ゴブリンを討伐する為に来た人達が村に着いた時に最後の1匹を殺すのはどうでしょうか。それでしたら誰が殺したかも分かります。」
「いや、でも顔が分かっちゃうからなぁ。私がしたってバレると面倒くさそう。」
「でしたらお面でも被ればいいのでは?」
「お面ねぇ……あ!ある!確か盗賊から貰った白い仮面がある!」
「それではそれをつけましょう!台詞はどうしましょうか!」
あれ?シズノのテンションが少し上がってないか?
「多分、討伐する為に来た人達は誰だ!?と言うでしょうから、そこでシルヴァは、ただの通りすがりの旅人さ。と言うんです!」
ゴブリンを殲滅しといてただの通りすがりの旅人って無理があるんじゃないか?
「あの、シズノさん?」
「こういうの1回見てみたかったんですよ!夢が叶いそうです!」
あ、これは止めても無駄なやつだ。
「あの、そろそろ夕食行かない?」
「もうそんな時間ですか?では続きは食べ終えてからですね。」
「食べ終えてからも……やるの?」
「当たり前です!ほら、はやく行きますよ!」
「分かった!分かったから、引っ張らないで!」
こうしてシズノの意外な1面を知った代償として深夜まで台詞の練習が待っているのであった。
タイトル考えるのが難しい……




