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閑話 高嶋静乃

静乃sideです。


本日3話目です。

その日はたまたま部活が休みで早く帰ろうと思っていたが先生に頼まれ事をされてしまい1時間ほど遅く帰ることになった。


ガラガラガラ


扉を開けて教室に入るとまだ3名ほど残っていた。2人は話していて、1人は眠っている。あまり話したことがない人達なので特にあいさつすることも無く自分の席へ向かう。時計を見ると16時30を示していた。本来ならもう少し早く帰れたのに、と心の中で愚痴を漏らしていると


「高嶋さん」


名前を呼ばれた。

誰だろうと振り返ってみると男女が1人ずついた。

男子の方は神崎颯汰かんざきそうた、サッカー部の主将でクラスでもリーダー的な存在だ。爽やかイケメンって言うらしいクラスの女子がそう言っているのを聞いたことがある。時々視線を感じて振り返ると目が合うことがあるけどどうしてだろう。

女子の方は橘楓たちばなかえで、サッカー部のマネージャーをしているらしい。神崎颯汰とは幼馴染みらしく一緒にいる事が多い。いつもニコニコしていて同い年の筈なのに年上の様な雰囲気がある。そして私には無い胸がある。チッ!


「何でしょうか。」


「いや、今日弓道部休みなんでしょ?これから楓とカラオケ行くんだけど一緒にどうかな?って」


「いえ、遠慮しておきます。それでは」


今日は帰ってから読みたい本があるのだ。余り関わりのない人に邪魔はされたくない。


「え、でもカラオケ楽しいよ?」


「ソウ君無理強いは駄目だよ。」


懲りずに誘ってこようとした神崎君を橘さんが止めている。その隙に帰ろうとしたその時


ピカッ!


急に床が光出して魔法陣の様なものが出現した。


「っ!?」


「なんだこれ!?」


「ソウ君!」


「んあ?なんだこれ?」


視界が光に覆われて私は気を失った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


気づいた時には森にいた。


「確か学校から帰ろうとしたら床が光って…」


駄目だそこからは記憶がない。


「どういうことなんでしょう?」


周りを見渡してみるがやはり木しかない。


「ここにいたら熊などが襲ってくるかも知れませんしまずは安全そうな場所に移動しないと、それから人里に向かいましょう。」


数分したら森から抜けて湖が見えてきた。


「浅いところで助かりました。」


乾いた喉を湖の水で潤していると


「ッ!」


突然後ろから衝撃が来てまた気を失ってしまった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ここは?」


気がつくと牢屋の様な場所にいた


手足は縛られていないが檻からは抜け出せそうはない。

どういうことかわからず混乱していると


「起きたか。」


髪や顔が脂ぎっている男が現れた。


「ここから出してください!」


「それは出来ねぇな。何せお前はこれから売られるんだからよ!!」


売られる?誰が、誰に?


「意味が分からねぇって顔してるな、お前は俺達のアジトの前にいたから捕まえられて奴隷商に売られるんだよ!髪は黒と珍しいが顔は悪くねぇどっかの変態貴族に買われて一生、玩具にされるんだろうな!」


奴隷?貴族?理解が出来ない。頭が真っ白になっていく。


「まぁ、大人しくしとくんだな!」


男は部屋から出ていったがそんな事考えている余裕はない。


それから何時間経っただろう。何も考えられずボーッとしていた。

そしたらいつの間にか眠ってしまっていた。


ゆさゆさ、ゆさゆさ


「大丈夫ですか?」


「んぅ??…っ!だ、誰ですか?」


目を開けると目の前に同い年位の人がいた。


「いや、怪しいものじゃないんだけど。一応、君を助けに来たのかな?」


助けが来た!そう思うと心の底から安心感が溢れてくる。でもあの男達はどうなったのだろう。


「た、助かるんですか!でも…男達は?」


「ああ、彼等はもう居ないよ。それよりも、君もしかして日本人?」


「は、はい。そうですが。そういえば、ここ何処なんですか?」


「ここは多分異世界…かな?」



「い、異世界ですか?」


異世界…突拍子もない話だとは思うが魔法陣や奴隷、貴族等と聞くと完全には否定しきれない。


「うん、説明は後でするから。ところで君はどうやってここ来たのかな?」


「それは…」


それから今まであった事を話た。


「それは大変だったね。」


それからステータスの事を教えて貰ったり、盗賊だったらしい男達が奪ってきただろう物を鑑定してくれと頼まれたりした。

その人は今までの人達とは違かった。今までの人達は家族以外は皆私の目を見て話してくれなかったしこんなにちゃんと話してもくれなかった。なのにこの人はちゃんと目を見て話してくれた。それが嬉しかった。


気づくと盗賊達が奪ったお金の話になっていた。

どうやら半分ずつにしてくれるらしい。もし街に着いたらお別れなのかな…そう考えると胸が苦しい。


「じゃあこのお金は半分ずつにしようか。」


「あ、あの!」


「ん?どうしたの?」


「私、お金はいらないのでその、こ、これからも一緒にいてくれませんか?」


気づくと勝手に口が動いていた。


「え?それはこれから一緒に行動するって事だよね?」


断られたらどうしよう。


「は、はい。あの…駄目でしょうか?」


「いやそんな事ないよ、そもそも最初からそのつもりだったし。」


「本当ですか!ありがとうございます!」


「いえいえ」


「じゃあ改めて、高嶋静乃と言います。よろしくお願いします!」


「えーと、……あ」


「どうしました?」


「そういえば、名前…無いんだった。」


「へ?」


それからこの人は転生者で吸血鬼ということを知った。けれどこの人がこの人な事に変わりはない。


「吸血鬼なんですねぇ。」


「え、驚かないの?」


「まぁ、魔法がある世界らしいので、そういうのも有りかなって思いまして。」



「そういう訳で名前がないんですよ。」


「じゃ、じゃあ私がつけてもいいですか!?」


「え?」


「名前です!」


せっかく友達になったんだもの私から何かを贈りたい。


「え、あ、うん。」


うーん、どうしようかしら。人の名前を考えるのは初めてだから難しいわ……そうだ!


「あの、やっぱり「シルヴァなんてどうでしょうか!」無しで…え?」


「シルヴァです!髪が綺麗な白銀なのでそれに因んで見ました!」


これは自信作です!きっとシルヴァさんも喜んでくれます!


「え、えぇぇぇ!!」


シルヴァさんが急に叫び始めてしまった。


「どうしましたか!?」


「名前、今ので決まっちゃった…」


「よかったですね!」


こうして私はシルヴァさんと一緒に過ごすことになった。



他の人が目を合わせてくれないのもちゃんと話してくれないのも静乃が美人なので男女問わず照れてしまうからです。


今日の地震は皆さん大丈夫でしたか?

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