第9話:金ゲット
冒険者登録をした翌日、将也は昨日のように宿屋でリヴェータと朝食を済ませた後に今日は一人でギルドへと向かう。
最初はリヴェータも決闘についてくると言っていたのだが、多分ナンドユの時よりヒドイことになるよと告げたら即座に手のひらを返した。
今日はてきとーに将也に買わせる欲しいものなどを探しながら街中をぶらついたりしておくとのことだ。
「多分大丈夫なんでしょうけど、気をつけてね。後、色々と程々にね」とだけリヴェータに言われた。
昨日のうちに用意しておいた金貨200枚を、少し大きめの袋に入れてギルドへと向かう。
昨日の朝の時点での将也の所持金は12000ルベルにも満たない程度であったのだが、今はそこに金貨200枚分、200万ルベルが追加されている。
この追加分だが、簡単に言うとパクってきたのだ。昨日ギルドを後にしてからすぐに、リヴェータが言っていた評判の悪い金貸しからパクって用意したのだ。
パクった方法も至極単純で、店舗内にいる人間を『完然神通力』で一気に全員眠らせた後に店舗内を漁って盗ってきたのだ。去り際に[こんな昼間から寝ちゃダメだよ?泥棒に入られることもあるからね。入ったのが僕がじゃなくて泥棒だったらエラいことだったよ。忠告料として金貨200枚だけもらっていくから以後気をつけてね。ジェントルメェンより]と書いた紙を遺しておく気遣いを紳士将也が忘れることはなかった。
一見、昨日リヴェータに禁止された行為を行ったかのように見える将也であるが、実はそんなことは全くない。
リヴェータはちゃんと金を払って物を手にいれて自分に貢げ的なことを言っていただけで、金の入手手段については何も指定などされてはいないので全く問題はない。
問題ない、全く問題などないのだが、一応決闘の話をリヴェータにした時には、決闘の賭け金のことと金の入手方法のことは戦略的省略をして話してある。ただ賭け金のことなど聞かれなかったから話さなかっただけで、なにも嘘をついたわけではないのでこれも問題ない。
そんなわけで、将也は何の気兼ねもなくギルドに向かう。
ギルドに着くと怒り顔のオッサン四人が既に待機していた。
昨日のバカ共に加えて背の低い太った体型の派手な服を着たデブ男もいる。さながら有名な青タヌキの様であった。
このオッサンがここにいて怒っている理由には少し検討のつく将也であった。
どらえオッサンは昨日将也が訪れた金貸し屋の店主である。
ギルドに入ってきた将也を見つけると同時に、ジャ○アンツ四人で何やら会議を始めだした。
1分程の内輪で話しあった結果話がまとまったようで、バカたちが金貸しから金を受け取って、何やらサインなどをしている。
どうやら、3バカたちは、金貸しの男に金を借りようとしていて、金貸しの男が直接俺を見て判断したという状況だろう。
普通ならこんな回収できるかも曖昧な融資は、金融人は絶対しないのだろうが、青タヌキが元から馬鹿だったことと、昨日200万ルベルの損害を出したばっかりなので少しでも利子で取り返したいと考えたことが軽薄な判断を加速させたのだろう。
融資が終わり、将也と3バカが受け付け前に集まる。
受け付けには昨日のセシリーさんと、茶髪にオールバックの40前後のオッサンがいる。
オッサンは体格がよく、゛強くて優しい頼れるオッサン゛といった感じだ。
「初めまして、イワシロ・マサヤ君。私はここの支部長のモーガンだ。よろしく。」
手を差し出してくるモーガンと軽く握手を交わす。
「私とセシリーの二人が君たちの決闘の立会人をする。決闘はギルド内の演習場の1つを利用して行い、勝者がここに差し出された金貨を総取りとする。勝敗は死亡・戦闘不能もしくは一方が降参と言った時につくものとする。双方これで問題ないかな?」
「ああ、俺たちはそれでかまわねーよ」
「問題なくはないです。勝敗の戦闘不能の判断を、立会人と戦闘可能な方が戦闘不能と判断し、戦闘不能と思われる方に問いかけて返答がないときとしてください」
「ん?そうだな、それでも特に問題はないがなぜそこまで限定する必要があるんだ?」
「一見戦闘不能だと見えても思わぬ力が残っていて決着後に気を抜いていたら思わぬ攻撃を受けることや、騙し討ちという立派な技の途中で戦闘不能だと判断され決着するという状況などを防ぐためです」
「なるほど、理由はわかった。君たちの方はそれでかまわないか?」
「ああ、んなこまけーことはどうでもいいから速くこのガキぶっ殺させろよ」
「では、これらの条件で決闘を始めることにする。決闘場所に移動するとしようか」
決闘場所はけっこう広めの体育館のような場所であった。
基本的に決闘に観客などはつかないが、これは観客がいると邪魔が入ったり、観客に被害が出ることなどがことと、他の冒険者たちに手の内を無闇に晒さないようにするためらしい。もちろん今回もノーギャラリーだ。
決闘場の中央で10㍍ほどの距離を取って、将也と3バカたちが対峙する。
「準備はいいか?お互い懸命に闘うことを期待している。ヤバくなったらすぐに降参するように。…では、始め!」
モーガンが決闘の開始を告げると同時に、ナイフと火の玉が飛んでくる。
火の玉は、の○太みたいなやつが始まる直前から詠唱をしていたようだ。
微動駄にしない将也にナイフと火の玉が襲い来るが、将也の手前50㎝程度のところで純白の大盾が出現し、攻撃を全て弾く。『|女神の愛護』の能力だ。火の玉が炸裂したことで、爆風が辺りを覆う。
「やったか?」などと、言う3バカたちであったが、煙が晴れ、無傷の将也を発見する。
「ちぃっ、上手く避けやがったか。くそが!死にさらせ!」と叫びながら今度はナイフだけを投げてくる。
の○太君は詠唱をしているようだ。
飛んでくるナイフを今度は先ほどの半分以下の大きさの白盾が出現し弾く。
(ふむ。アイギスも問題なく発動するな。相手の攻撃範囲に合わせて盾の大きさが変わるみたいだな)
アイギスの能力を確認した将也は、続けて飛んでくる火の玉に対して、意識的にアイギスの発動を止め右手を広げて前に突き出す。
今度は『金剛琿戟神体』を使用する。
将也の右手に火の玉が当たると、少し爆発するが、将也は無傷で当たった衝撃すら感じない。
(よし、これも問題なく使えるな)
ことごとく無傷の将也を見て、相手のバカたちは驚いているようだ。
「な、なんなんだてめーは!?」
答える気はない将也は3バカたちの周りに『完然神通力』を展開し、3人を眠らせる。
くずれ落ちる3人を見て、
「しょ、勝者、イワシ「まだです。先ほど決めたでしょう。あなたの独断では決闘が終わることはない」
先ほどまで唖然にとられていたモーガンが、勝敗を告げようとするが将也に遮られる。
言い放った将也は驚いた顔のモーガンたちを無視して倒れている3バカたちの元へ向かうと、一人ずつ顎を盛大に外していく。眠っていたバカたちは激痛に目を覚まし叫びだす。
顎を外したのはもちろん起こすためではなく、「降参」と言えないようにするためだ。
次に、アガアガと言っている3人の右目と右耳を潰していく。右目はくりぬいて、右耳はナイフで切り落とした。
顔面を血塗れになりがら、のたうち回って言葉にならない声を叫びだすバカたち。
左側を残したのは、これから、自分たちに起きることをきちんと知覚させるためだ。
「お前たちが、勘違いして図に乗るのは自由だし、罪に問われない範囲なら好きなように行動すればいいが、相手を選ばないと痛い目に合うぞ?」
各々の痛い部分をおさえながら倒れている3バカたちは、将也に赦しを乞うような目を向けている。片目で。
やっと少し理解したようだが、もちろん時既に遅しだ。世の中わからなかったからと言って赦されることばかりではない。
将也の後ろに3体の黒い人影が急に出現する。頭から全身を覆うようなマントを被り、白い不気味な仮面をつけた者たちだ。
これらは将也が『真祖』で召喚したシャドウストーカーという魔物たちだ。
将也が召喚したシャドウストーカーはレベル170程で2体いればモーガンをも殺せる程度の強さだ。
突然現れた魔物たちに臨戦態勢をとるモーガンであったが、シャドウストーカーたちはもがき苦しんでいる3バカたちの元へ向かい、将也に代わり拷問を開始する。
まずは、両手足の指の骨を一本ずつ折っていく、次に、両腕と足の骨を数回に分けて折る。
腕を組みながら涼しい顔でそれを見ていた将也であったが、モーガンから声をかけられる。セシリーさんは完全に目を背けているようだ。
「お、おい将也君、もう勝負はついているだろう、相手はとても戦闘など続けられる状況ではない。あ、あれを速く止めるんだ」
「あれが僕の呼び出したものだと決めつけるのはやめてください。あと決闘の邪魔をするのはやめてもらえますか?」
「な、こんなものは決闘とは言わない!ただの拷問だ!」
「はぁ、あなたがこれを何と思おうがあなたの自由ですが、予め決めていた通り、まだ決闘の最中ですし、この決闘を止める自由はあなたにはありません」
実際、今回の決闘の勝敗のつく条件を何も満たしていないので今は決闘の最中ということになる。
モーガンも理屈ではそれがわかっていたため、何も言い返せなくなる。
そうこうしているうちに腕と足の骨を折り終わったシャドウストーカーたちが、マントの中から糸ノコギリのやうな物を取り出す。
その糸ノコギリで、3バカたちの足先と手先から交互に一センチぐらいずつをギコギコと削り切り落としていく。
3バカたちは最大限に苦しんでいるようだが、腕と足の骨が折れているためろくにもがくこともできない。
「ああそうだ、忘れてた」と呟くと将也は糸ノコでギコギコされている3バカたちの元へ向かい、3バカたちのチンチンの竿部分だけをナイフで切り落とす。
竿だけ切ったのはその方が後々生きていく効果的だと思ったからだ。
竿を切り落とした瞬間に、の○太っぽいやつが顎が外れているとは思えないような大声で断末魔をあげて絶命した。血液はそれほど大量に流してはいなかったので、苦痛によるショック死だろう。
魔法職っぽかっただけあって、直接的な肉体耐久力が低かったのかもしれない。
(あちゃー死んじゃったかー。殺す気はなかったんだがな。この辺がデッドラインてことかな。じゃあそろそろやめとくべきだな。頼むぜモーガン)
将也に頼られていることなど知らないモーガンは一人が絶命したのを見て再び終了を促してくる。
「一人死んでいるではないか!もう、いいだろう!ここまでする必要はないだろう!」
「必要なくはありませんよ。こいつらはね、昨日少し僕を不快にさせたんですよ、少しだけね」
「な、それだけの理由でこんなことまでしていると言うのか」
「ええ、そうですよ。僕からすれば大量虐殺などよりよっぽど重罪ですよ。だって知らない人間を大量に殺すことは僕を不快にさせることではないですからね。それにやってしまったことに取り返しが効くとは限らないでしょう。誤って王族を殺してしまった人間が故意ではないからといって許されますか?そんなことないですよね」
ここまで言ったところでシャドウストーカーがさらに200体ぐらい決闘場に出現する。
シャドウストーカーたちはその場に佇んでいて動かない。
「そして、お気づきですか?先ほどからあなたも少々僕を不快にしているということに」ニッコリとモーガンの近くへ行きながら問いかける。
「な、なんなんだ君は?」
「新人冒険者ですよ」
「そ、そいつらはなんなんだ!?そいつらをどうする気だ!?」
現れたシャドウストーカーのおおよその力量がわかっていたモーガンは、こいつらが200体以上もいるとこの街すら滅ぼすことが可能だろうと言うことをわかっていた。
「いや、だから証拠もないのにこいつらと僕を勝手に結びつけるのはやめた方がいいですよ。勝手な決め付けは緊急時の対処を誤らせることになりかねない。この街を守るギルド支部長がやるべき行為ではない。そういえば、モーガンさん、お子さんはいらっしゃいますか?」
「い、いるが「ええ、いますよね。あなたに似て中々聡明な顔つきなのでしょうね」
いると答えたモーガンに食いぎみで将也は続ける。
「な、む、息子をどうするつもりだ!妻と息子は関係ないだろう!」
「僕がどうする気かは答えませんよ。子供じゃないんだから自分の問いに必ず答えてもらえるわけはないでしょう。ただね、あくまでこれは単なる僕の勘でしかないんですが、この黒いやつらが既にご家族の傍にも潜んでいるような気がするんですよね。あくまで僕の勘でしかないんですけどね」
「な、た、頼む!妻と息子は関係ないんだ!二人には手を出さないでくれ!」
もちろんモーガンの家族の傍にシャドウストーカーなど潜んではいないので、将也の勘は外れたことになる。
にもかかわらずモーガンが将也の勘を信じきっている様子なのは、将也への信頼からくるものではない。
将也はモーガンが左手の薬指に指輪をはめていたのに気づいていた。身だしなみもそれなりに小綺麗にしていることわかっていた。
そのため、妻はいると判断していたので、子供の有無を聞いた。
モーガンが子供がいると判別できる答えを聞いた瞬間に言葉を続けたのである。
自分の子供を聡明ではないなどと普段から思っている親などはいないため、食いぎみでさも知っていましたよと聡明などと知った゛風な゛言い方をするだけで、将也が子供のことを知っているとモーガンは勝手に思い込んだのだ。
子供はいないと答えられた時も、「いな」ぐらいで食いぎみに「ええ、そうですよね。お綺麗な奥様なのに残念ですね」と答えれば同様な効果を得られる。
子供がいるかどうかを素直に答えなかった場合は、「嘘や隠し事は良い結果を招きませんよ」などと適当な脅しをかければ吐かせることができるだろうからいずれにしても同様の結果となったはずだ。
「僕はあなたの家族をどうするつもりなどとは言っていないじゃないですか。ただ、あなたが僕を少し不快にさせたということを教えてあげただけですよ?」
「お、お願いします!この通りです!私ならどのような罰も受けます。どうか、家族には何もしないでください!」
とうとう地面にひれ伏し、土下座しながら懇願し出すモーガンだった。
「困ったな、何かするとも言ってないのにやめろと言われてもどうしようもないんですけど。あ、あと今の話と関係あるかわかりませんが、片腕と片目と片耳と陰茎を切り落とし相手に捧げている人がいれば、あ、この人は相手の人に敵対する意思などありませんということなのだろうなと僕は判断しますね」
将也の言葉を聞き、プルプルと震え出すモーガン。何かを決意しようとしているようである。
「僕は温厚で気が長いですが、この黒いやつらがどうかはわかりませんよね」
と踏ん切りがつかなそうにしているモーガンに冷たく語りかける。
それを聞いたモーガンは懐から短剣を取り出し、自分の片耳を切り落とした。
激痛に叫びをあげそうになるモーガンであったが、
将也の「僕は大声にももちろん我慢できますが、この黒いやつらもそうかはわかりませんよね」という言葉を聞き、ハンカチを口に詰め込み必死に声を抑える。
続いて自分の目を切りつけ、陰茎を切り落とした。ハンカチを加えながらフーフーと言っている。
最後に自分の二の腕から先ぐらいを勢いよく切り落とす。
激痛に気を失いそうになるが、将也に
「相手、僕は戦闘不能だと思うんですけど、どう思われますか?」と問われ
「わ、わた、しも、そ、おもう、よ」と辛うじて決闘を終了させることができた。
死体1つと、かなり無惨な男二人と、少しだけましな無惨な男一人と、無傷の男一人と、無傷だがゲロゲロに嘔吐した女一人というのが決闘場にいる人間の最終結果となった。
「では、僕はこれで」と告げて、傍に置いてあった金貨800枚を異空間に放り込んでから決闘場を後にする将也。
続いて、シャドウストーカーたちが、地面や、壁の中に音もなく入って消えていく。
全てのシャドウストーカーたちが、その場からいなくなるよりも前にモーガンは気を失ってしまった。
やっとこさやりたい放題しましたね。
結局3バカたちの名前を書かないという手抜きw